想いと共に花と散る

 しばしの間、雪を見つめていた二人の隊士は、やがて何かを決心したように顔を見合わせた。
 もう一度雪の方に向き直った頃には、先程の張り詰めた空気感はなくなっている。

「それで、君は一体誰なのかな? 何があって土方さんと一緒にここへ来たんだい?」
「えーっと、かくかくしかじかありまして……」

 未来からこの時代にタイムスリップしてきた、という話は到底信じてはもらえないだろう。だから彼らには話さず、大まかに事の経緯を説明する。
 浪士達に襲われているところを土方に助けられたこと。その後、ここへ連れてこられたこと。
 帰る家がないことを案じて近藤がここで暮らすように提案してくれたこと。その上で周りに正体を隠すために土方の小姓になったこと。
 一通り説明し終えると、二人は信じたのか信じていないのか分からない微妙な反応を見せた。

「帰る家がないって、随分と複雑だな」

 嘘は吐いていないが、どうしても彼らを騙しているような気がする。
 雪がそう懸念するのを感じ取ったの否か、二人は不信感を綯い交ぜにした目で雪を見下ろした。
 それでも帰る家がないことを心配してくれる辺り、悪い人達ではないように思う。

「事情があるわけか。まあ、俺達が何かを言ったところで近藤さんが決めたことなら逆らえないね」
「大人しく土方さんの言う事聞くしかないよなぁ。とりあえず、町に行くか」
「そうだね。ほら、勝手なことせずちゃんと付いて来るんだよ」
「は、はい」

 促されるままに屋敷から通りへと出て、並んで歩く二人の後を追う。
 先を歩く二人は、時折振り返ってちゃんと付いて来ているか確認して来た。流石に信頼はされていないようである。雪自身も彼らを信用しているわけではないからお互い様だ。

「あ、そういえばまだ名前を聞いていなかったね。俺は沖田総司、君は?」
 
 この時、どちらの名前を彼らに教えるべきなのだろう。
 土方の小姓として結城雪と名乗るか、まだこの時代らしい格好をしていないからそのまま雪華と名乗るか。

『今日からてめぇの名は雪だ』
 
 脳内で昨晩の土方の言葉が蘇る。
 本名は女々しくて、男のフリをして彼の小姓になっても不自然さが目に見えてしまう。そう思い立った土方が名付けたもう一つの名前を口にした。

「結城雪です」