想いと共に花と散る


「お前のこと───……好きだってさ」

 伝えるなら今しかないと思った。だからあの時、勢いに任せて言った。

「伝わんなかったけど。花火に消えるくらい、小っせぇ声しか出なかった」

 花火に掻き消された言葉は本人に届かないまま、何処か遠くに消えてしまった。
 何も知らない偽りだらけのあの子は、何も知らないから残酷にも藤堂に笑い掛けた。
 その笑顔が、声が、優しさが、無邪気さが、強さが、頑固さが、好きだと知らずに。

「振られちまったよ!」

 夜空を仰ぎ見て、藤堂は叫んだ。これまでの我慢を、鬱憤を、現実を全て吐き出すように。
 肩を上下させながら俯く藤堂の口から溢れる息は、ただ息が上がっているとは思えないほど震えていた。

「初めてだよ……初めてだったんだよ………本気で好きになったのはさぁ」

 年甲斐もなく涙を流すのは武士として恥だと思っていた。
 けれど、弱音を吐くことも涙を流すことも、全部恥ではないと教えてくれた人がいた。
 伸ばした手を握ってくれた。手を引いたら付いて来てくれた。
 笑ってくれた。褒めてくれた。叱ってくれた。認めてくれた。
 藤堂によって初めてを知ったあの子のように、藤堂もまたあの子によって初めてを知ったのだ。

「……平助」
「んだよ」
「俺も振られた」

 こんなにも好きだと思うところが一致するとは思わなかった。
 いつから、何処でなんてどうでもいい。
 ただ、藤堂も同じ様に雪を仲間として見ていた事実が沖田の全てだった。

「雪は、俺の名前を呼んでくれなかった」

 武士だから、男だから、弱音を吐くな。涙を流すな。
 そう言って自分自身を律してきた。
 けれど、それにも限界はある。特に、誰かへ向けた好意の上では。

「平助だけじゃない。俺も負けたんだ」

 好きだという気持ちに素直になれて、本人に伝えようとした藤堂の方がよっぽど強い。
 眠る姿を見て呟くことしかできなかった沖田よりも、ずっと強かった。

「俺達は負けたんだよ」

 刀の切っ先を向けて、藤堂にも自分自身にも言い聞かせるように言う。
 高々と宣言すれば、藤堂もまた刀を構えた。細められた目には、迷いなど無い。
 目の前に鳥の羽が舞い落ちる。それが地面に触れた時、二人は同時に飛び出した。