想いと共に花と散る

 藤堂であれば、心配することも嘲ることもしないだろう。
 むしろ、言ったことがないという言葉で調子に乗る方が彼らしい。

「よ、よかったらだけどさ」
「ん?」

 項に手を当て、何処か気恥ずかしそうに目を逸らした藤堂は口を開く。
 普段の彼の様子からは想像もつかないほど、その声は小さく消え入った。
 よく聞き取ることができなかった雪は、藤堂の気持ちなど知らずに聞き返す。
 その仕草が、返って藤堂を焦らせた。

「一緒に行かね? 祭り」

 ぽかんと口を開けたまま、雪は固まった。
 その反面、藤堂は微かに頬を赤らめて貼り付けた笑みを浮かべる。
 
「いや。忙しかったり、嫌だってんなら無理にとは言わねぇんだけど」
 
 最早、ほとんど藤堂の言葉は耳に入ってこなかった。
 雪の脳内を「祭り」という言葉が埋め尽くし、正常な判断力を奪い去っていく。
 思わず箒を取り落としそうになるほど、雪にはある意味衝撃的だった。

(平助君と……祭り?)

 辺りを見渡してみるが、藤堂意外は誰もいない。
 つまり、彼は二人で行こうと言いたがっているのだ。
 もし、他にも同行する人がいるのならこの場にいるはず。永倉や原田、もしかすると沖田などが寄って来そうなものだが。

「……二人?」
「えっ……ああ、うん。い、嫌だったか? そうだよな、俺と二人は嫌───」
「行きたい」

 誰かと祭りに行くのなんて人生で初めてだ。
 親と行くよりも友達と行くほうが楽しい。いつかのクラスメイトがそう話していた気がする。
 
「ま、まじで?」
「うん。楽しそうだし、お祭り行ってみたい」

 祭りに行くのなら、やはり浴衣は着てみたい。色々な屋台を回って、金魚すくいなどでも遊んでみたい。
 なにより、藤堂と行く祭りは楽しそうだ。近藤や土方と行くとなると気を遣ってしまうが、藤堂であればその必要もない。
 新撰組の中でも貴重な、砕けた距離感で関われる人物だったから。

「……やった。俺、雪とどっか行ってみたかったんだよ」
「私も、一回平助君とゆっくり話したかったから、誘ってくれて嬉しい」
「じゃあ、日が暮れてきたくらいにまたここに集まろうぜ」
「了解です。八番隊組長!」

 藤堂だから、くだらないお巫山戯をしても許される。
 否、相手が藤堂だから気兼ね無く巫山戯られるのかもしれない。彼もまた、一緒に巫山戯て笑うから。