この鬼は、隣りに座っている大男のことなど眼中にもないのだろう。目の前の何処の馬の骨とも分からない一人の少女だけを見つめている。
「なあ、どうして死に急ぐ。どうして命乞いをしない」
「……そ、れは………」
「何がお前をそんなにつまらない人間にしたんだ。言ってみろよ、何がそんなに不満だってんだ。この世に何の恨みがある」
恨みがあるのはこの過去じゃない。
誰も自分のことを見てくれない、誰も自分のことを愛してくれないあの苦しい現代だ。
何がどうなってこの時代に迷い込んだのかは分からないけれど、今いる世界が現実であることはこの首の刀傷が証明している。
そして、目の前で怒りに歪んだ表情を浮かべて脅迫してくるこの鬼も、包帯を巻いてくれたあの青年も皆は過去の人間だ。
迷い込んだばかりで右も左も分からないこの世界に恨みなんてあるはずもない。
じゃあ、私は何が不満なの? どうして楽になりたいの?
またあの時の感覚だ。鬼に図星を指されて、問われても上手く言葉にできなくて答えられなくなる。
「また黙りか」
「…………ないから」
「あ? よく聞こえねぇ」
「だって、誰も私のことを見てくれないから!」
張り詰めた空気を震わせるくらい、人生で初めて出したのではないかと思うくらいの大声で叫んでいた。
「皆、普段は私のことを空気みたいに扱うくせに都合の良い時だけ利用するの! 名前なんて親にすらほとんど呼ばれないんだよ。だからいっつも考えるの、なんで生きてるんだろうって」
「それで死にたがってたのか」
「別に死にたいってわけじゃない。ただ、何処でもいいからあいつ等がいない所で楽になりたかっただけ!」
言いたいことを言い切って肩で息をしていると、やけに辺りが静まり返っていることに気が付く。
膝の上に落としていた視線をゆっくりと上げてみれば、挑発してきた鬼は呆気に取られた様子で固まっていた。
「うあ、えっと……その………これ、は………」
しまった、思わず鬼の挑発に乗って普段の悪い癖が出てしまった。
いつもこうして誰かに舐めた態度を取られると意思に反して反発してしまうのである。相手など関係なく反発してしまうものだからよく問題にもなった。
だからできるだけ他人の話は聞かないようにして自制してきたのに。
どういうわけか、この鬼は的確に図星を指してわざと反発するように仕向けてきたようにすら感じた。
「なあ、どうして死に急ぐ。どうして命乞いをしない」
「……そ、れは………」
「何がお前をそんなにつまらない人間にしたんだ。言ってみろよ、何がそんなに不満だってんだ。この世に何の恨みがある」
恨みがあるのはこの過去じゃない。
誰も自分のことを見てくれない、誰も自分のことを愛してくれないあの苦しい現代だ。
何がどうなってこの時代に迷い込んだのかは分からないけれど、今いる世界が現実であることはこの首の刀傷が証明している。
そして、目の前で怒りに歪んだ表情を浮かべて脅迫してくるこの鬼も、包帯を巻いてくれたあの青年も皆は過去の人間だ。
迷い込んだばかりで右も左も分からないこの世界に恨みなんてあるはずもない。
じゃあ、私は何が不満なの? どうして楽になりたいの?
またあの時の感覚だ。鬼に図星を指されて、問われても上手く言葉にできなくて答えられなくなる。
「また黙りか」
「…………ないから」
「あ? よく聞こえねぇ」
「だって、誰も私のことを見てくれないから!」
張り詰めた空気を震わせるくらい、人生で初めて出したのではないかと思うくらいの大声で叫んでいた。
「皆、普段は私のことを空気みたいに扱うくせに都合の良い時だけ利用するの! 名前なんて親にすらほとんど呼ばれないんだよ。だからいっつも考えるの、なんで生きてるんだろうって」
「それで死にたがってたのか」
「別に死にたいってわけじゃない。ただ、何処でもいいからあいつ等がいない所で楽になりたかっただけ!」
言いたいことを言い切って肩で息をしていると、やけに辺りが静まり返っていることに気が付く。
膝の上に落としていた視線をゆっくりと上げてみれば、挑発してきた鬼は呆気に取られた様子で固まっていた。
「うあ、えっと……その………これ、は………」
しまった、思わず鬼の挑発に乗って普段の悪い癖が出てしまった。
いつもこうして誰かに舐めた態度を取られると意思に反して反発してしまうのである。相手など関係なく反発してしまうものだからよく問題にもなった。
だからできるだけ他人の話は聞かないようにして自制してきたのに。
どういうわけか、この鬼は的確に図星を指してわざと反発するように仕向けてきたようにすら感じた。



