部屋の中に入るやいなや青年は障子を勢いよく閉めてしまった。足早に部屋の前を去る足音が徐々に遠のいていく。
「君がトシの言っていた娘か。そんなところで立ち止まっていないで、こちらに来なさい」
部屋の中には屈強な体つきをした大男が堂々と部屋の真ん中に鎮座していた。
そんな大男が柔らかな笑みを浮かべてそう促してくる。大男は雰囲気でこそ優しく諭しているが、あの鬼や青年のように断ればすぐに脇に置いている刀で斬り掛かってくるのだろう。
纏う雰囲気だけでも彼が只者ではないことが伺える。あの鬼や青年とは違い、格があるような気がするのだ。
断る気にもなれず、促されるままに彼の前に正座で座った。
「すまねぇ、遅くなった」
大男の方に向いて座ると同時に障子が開き、ここまで連れてきたあの鬼が顔を出す。
鬼は一瞬こちらに視線を向けた後、大男の隣に胡座をかいて座った。
一気に部屋の中に得体の知れない緊張感が満ちる。こうして座っているだけでその緊張感に押し潰されそうだ。
「さて、ではトシも来たことだし詳しい話を聞かせてくれ」
そんな沈黙を打ち破ったのは、向かいに座っているお偉い様だ。
警戒心を剥き出しにする鬼とは違って大男は一言一言に優しさを含ませている。だからだろうか、鬼の表情が少しばかり和らいだ気がした。
「半刻ほど前、巡察中にこいつが浪士に襲われている場面を目撃した。浪士どもは反抗の色が見えたから即刻斬り捨てたさ。まあ、生かしていても大した影響もねぇ雑魚だったが、少し気になることがあってな」
何だか真面目な話をしているようなのだが、どうにも気になることがある。
先程から彼らが何処かで聞いたことのある名前で呼び合っているのだ。
例えば、今目の前に座っているあの二人の男。変わらずヘラヘラとした微笑みを浮かべている男は、鬼や青年から『近藤さん』と呼ばれていて、屋敷の入口では青年が鬼のことを『土方さん』と呼んでいた。
全く知らないはずの彼らだが、その名前を何処かで聞いたことがあるような気がする。あれは一体何処だっただろうか。
「君がトシの言っていた娘か。そんなところで立ち止まっていないで、こちらに来なさい」
部屋の中には屈強な体つきをした大男が堂々と部屋の真ん中に鎮座していた。
そんな大男が柔らかな笑みを浮かべてそう促してくる。大男は雰囲気でこそ優しく諭しているが、あの鬼や青年のように断ればすぐに脇に置いている刀で斬り掛かってくるのだろう。
纏う雰囲気だけでも彼が只者ではないことが伺える。あの鬼や青年とは違い、格があるような気がするのだ。
断る気にもなれず、促されるままに彼の前に正座で座った。
「すまねぇ、遅くなった」
大男の方に向いて座ると同時に障子が開き、ここまで連れてきたあの鬼が顔を出す。
鬼は一瞬こちらに視線を向けた後、大男の隣に胡座をかいて座った。
一気に部屋の中に得体の知れない緊張感が満ちる。こうして座っているだけでその緊張感に押し潰されそうだ。
「さて、ではトシも来たことだし詳しい話を聞かせてくれ」
そんな沈黙を打ち破ったのは、向かいに座っているお偉い様だ。
警戒心を剥き出しにする鬼とは違って大男は一言一言に優しさを含ませている。だからだろうか、鬼の表情が少しばかり和らいだ気がした。
「半刻ほど前、巡察中にこいつが浪士に襲われている場面を目撃した。浪士どもは反抗の色が見えたから即刻斬り捨てたさ。まあ、生かしていても大した影響もねぇ雑魚だったが、少し気になることがあってな」
何だか真面目な話をしているようなのだが、どうにも気になることがある。
先程から彼らが何処かで聞いたことのある名前で呼び合っているのだ。
例えば、今目の前に座っているあの二人の男。変わらずヘラヘラとした微笑みを浮かべている男は、鬼や青年から『近藤さん』と呼ばれていて、屋敷の入口では青年が鬼のことを『土方さん』と呼んでいた。
全く知らないはずの彼らだが、その名前を何処かで聞いたことがあるような気がする。あれは一体何処だっただろうか。



