結局、山崎ですらも雪を戦地から遠ざけようとする。雪にはそれがどうしても耐えられなかった。
恐らく、山崎の中には辻斬りの一件で雪が大怪我を負ったことに対し、引け目を感じているのだろう。
だからと言って、戦地から遠ざけられて守られるだけの存在にはなりたくない。
雪は顔を上げ、山崎に言い返そうとしたその時だった。
廊下を忙しなく走るの足音が近づき、曲がり角から随分と大きな図体が飛び出してくる。
「山崎!」
現れたのは、浅黒い肌をした大柄の男。山崎と同じ監察方の島田魁である。
肩を上下に動かして息を切らし、顔色が青白く変わっていた。
「島田!? 池田屋に行っていたんじゃなかったのか。そんなに焦ってどうした?」
縁側に座っていた山崎は立ち上がって島田の元へと駆け寄る。
雪も思わず立ち上がり、不安が募る胸を押さえ付けた。
山崎が問い返すと、島田は拳を握り締めて低く声を落とす。
「本命は……池田屋だ」
たった一言で、山崎の表情が一変した。
それまで見せていた穏やかさなど消え去り、みるみる内にその顔には影が落ちる。
「外したか……。島田、間違いないのか」
「ああ。外で聞いた。副長達は四国屋を本命に動いているんだっただろう。今すぐ伝えに行かなければ、池田屋に向かった局長達が危険だ!」
彼らが一体何の話をしているのか、何も聞かされていない雪には理解ができなかった。
それでも、雪の胸は大きく脈打つ。不安による鼓動の動きは、ただ不快でしかない。
「や、山崎さん! どういうことですか!?」
「………っ…………副長から、止められているんだが」
ここまで来れば、隠し通すこともできない。
雪はこのまま押し通すことを貫く。ここで引き下がってしまえば、自分は絶対に彼らと戦えずして終わってしまう。
山崎はそんな雪の勢いに圧倒され、迷いに苛まれながらも渋々語った。
「近頃、長州の動きが活発化していることは知っているな」
「もしかして、この前の夜に土方さんと近藤さんが話していたのって……?」
「そのもしかしてだ。先日、長州と関わっているとして、桝屋、古高俊太郎という男を我々は捕縛した。副長を筆頭に拷問したのが数日前の夜中のことだった」
あの時の不自然な近藤と土方の様子は、古高という男を拷問した後だったのだ。
拷問、その言葉が頭の中で駆け巡り、何か不快なものが込み上げてくる。
「長州の連中は、今夜にも会合を開くつもりだ。その会場として名が上がったのが現在副長達が向かう四国屋と、局長達が向かう池田屋の二箇所。副長は四国屋が本命だと判断し、隊士のほとんどを引き連れたわけなんだが……」
つまり、長州の連中が会合を開くという情報を受け、会場が池田屋か四国やどちらかで開かれると言う情報を得たが、本命がどちらであるのかまでは分からない。
そこで一か八か賭けに出たということらしい。
土方は四国屋が本命であると判断し、多くの隊士を引き連れて現在向かっている。
しかし、実際は池田屋が本命で、近藤や沖田といった少数が向かった池田屋に長州の連中は集まっていた。
恐らく、山崎の中には辻斬りの一件で雪が大怪我を負ったことに対し、引け目を感じているのだろう。
だからと言って、戦地から遠ざけられて守られるだけの存在にはなりたくない。
雪は顔を上げ、山崎に言い返そうとしたその時だった。
廊下を忙しなく走るの足音が近づき、曲がり角から随分と大きな図体が飛び出してくる。
「山崎!」
現れたのは、浅黒い肌をした大柄の男。山崎と同じ監察方の島田魁である。
肩を上下に動かして息を切らし、顔色が青白く変わっていた。
「島田!? 池田屋に行っていたんじゃなかったのか。そんなに焦ってどうした?」
縁側に座っていた山崎は立ち上がって島田の元へと駆け寄る。
雪も思わず立ち上がり、不安が募る胸を押さえ付けた。
山崎が問い返すと、島田は拳を握り締めて低く声を落とす。
「本命は……池田屋だ」
たった一言で、山崎の表情が一変した。
それまで見せていた穏やかさなど消え去り、みるみる内にその顔には影が落ちる。
「外したか……。島田、間違いないのか」
「ああ。外で聞いた。副長達は四国屋を本命に動いているんだっただろう。今すぐ伝えに行かなければ、池田屋に向かった局長達が危険だ!」
彼らが一体何の話をしているのか、何も聞かされていない雪には理解ができなかった。
それでも、雪の胸は大きく脈打つ。不安による鼓動の動きは、ただ不快でしかない。
「や、山崎さん! どういうことですか!?」
「………っ…………副長から、止められているんだが」
ここまで来れば、隠し通すこともできない。
雪はこのまま押し通すことを貫く。ここで引き下がってしまえば、自分は絶対に彼らと戦えずして終わってしまう。
山崎はそんな雪の勢いに圧倒され、迷いに苛まれながらも渋々語った。
「近頃、長州の動きが活発化していることは知っているな」
「もしかして、この前の夜に土方さんと近藤さんが話していたのって……?」
「そのもしかしてだ。先日、長州と関わっているとして、桝屋、古高俊太郎という男を我々は捕縛した。副長を筆頭に拷問したのが数日前の夜中のことだった」
あの時の不自然な近藤と土方の様子は、古高という男を拷問した後だったのだ。
拷問、その言葉が頭の中で駆け巡り、何か不快なものが込み上げてくる。
「長州の連中は、今夜にも会合を開くつもりだ。その会場として名が上がったのが現在副長達が向かう四国屋と、局長達が向かう池田屋の二箇所。副長は四国屋が本命だと判断し、隊士のほとんどを引き連れたわけなんだが……」
つまり、長州の連中が会合を開くという情報を受け、会場が池田屋か四国やどちらかで開かれると言う情報を得たが、本命がどちらであるのかまでは分からない。
そこで一か八か賭けに出たということらしい。
土方は四国屋が本命であると判断し、多くの隊士を引き連れて現在向かっている。
しかし、実際は池田屋が本命で、近藤や沖田といった少数が向かった池田屋に長州の連中は集まっていた。



