そう一人で考え込んでいると、不意に鬼が先程の浪士と同じように首筋に刀を当てた。
浪士の刀によってできた傷から溢れる鮮血と、鬼の刀に付いている血が混ざって首元を濡らす。
「ちっ……聞こえてんのか聞こえてねぇのか、どっちなんだ」
「……聞こえ、ています」
ようやく声が出せた。鬼が一瞬警戒心を緩めたことにより、重く伸し掛かっていた空気感が薄らいだからだろう。
しかし、声を発したことにより再び鬼の意識はこちらへと向けられる。
今までのものとは比にならないほどに鋭く光らせた瞳で睨みつけてきた。
「てめぇ、どういうつもりだ」
「え? ど、どういうつもりって……」
「さっき一瞬聞こえたが。てめぇ、こいつに“殺して”なんて言ってやがったな」
鬼は持っている刀の切っ先を首筋から離し、地面に転がっている浪士に向ける。
決して視線は逸らさず、その鋭い瞳で睨みつけたまま。
「そんなに死にてぇのか」
他人から言葉にして問われると、一瞬迷ってしまう自分がいた。
名前も知らない浪士に殺されそうになって初めて表に出した本心。いつから抱いていたのかもう分からない程長らく閉ざしていた本心を自分は言葉にした。
けれど、改めて問われると何故か頷くことができなかった。
どうしてなのかは分からない。この鬼が相手だからなのかもしれないし、もしかしたら本心などではなかったのかもしれない。
「言ってみろ、てめぇの口で。今ならこいつ等のついでだ、手間にはならねぇ」
試していることくらいわざわざ問わなくても瞬時に理解できた。
この鬼は、どう答えても持っている血塗れの刀で簡単に切り殺してくる。
痛みを感じる暇もなく一発。少し視線を逸らすと、右腕を切り落とされた浪士の亡骸が目に入る。この浪士のように、簡単に首を刎ねることくらい容易いに違いない。
「……楽になりたい」
自分でも思わず驚いてしまった。浪士には“殺して”と言ったのに、今は“楽になりたい”と本心が変わっている。
けれど、これでようやくつまらない人生から解放される。先程はこの鬼によって叶わなかったが、鬼から殺してやると言われているのだから縋らない理由などない。
これでようやく楽になれる。
「意味が分からねぇ」
しかし、答えを聞いた鬼は先程まで包み隠さず溢れさせていた殺気を一瞬の内に消し去った。そして刀に付いた血を拭うと鞘に納めてしまう。
浪士の刀によってできた傷から溢れる鮮血と、鬼の刀に付いている血が混ざって首元を濡らす。
「ちっ……聞こえてんのか聞こえてねぇのか、どっちなんだ」
「……聞こえ、ています」
ようやく声が出せた。鬼が一瞬警戒心を緩めたことにより、重く伸し掛かっていた空気感が薄らいだからだろう。
しかし、声を発したことにより再び鬼の意識はこちらへと向けられる。
今までのものとは比にならないほどに鋭く光らせた瞳で睨みつけてきた。
「てめぇ、どういうつもりだ」
「え? ど、どういうつもりって……」
「さっき一瞬聞こえたが。てめぇ、こいつに“殺して”なんて言ってやがったな」
鬼は持っている刀の切っ先を首筋から離し、地面に転がっている浪士に向ける。
決して視線は逸らさず、その鋭い瞳で睨みつけたまま。
「そんなに死にてぇのか」
他人から言葉にして問われると、一瞬迷ってしまう自分がいた。
名前も知らない浪士に殺されそうになって初めて表に出した本心。いつから抱いていたのかもう分からない程長らく閉ざしていた本心を自分は言葉にした。
けれど、改めて問われると何故か頷くことができなかった。
どうしてなのかは分からない。この鬼が相手だからなのかもしれないし、もしかしたら本心などではなかったのかもしれない。
「言ってみろ、てめぇの口で。今ならこいつ等のついでだ、手間にはならねぇ」
試していることくらいわざわざ問わなくても瞬時に理解できた。
この鬼は、どう答えても持っている血塗れの刀で簡単に切り殺してくる。
痛みを感じる暇もなく一発。少し視線を逸らすと、右腕を切り落とされた浪士の亡骸が目に入る。この浪士のように、簡単に首を刎ねることくらい容易いに違いない。
「……楽になりたい」
自分でも思わず驚いてしまった。浪士には“殺して”と言ったのに、今は“楽になりたい”と本心が変わっている。
けれど、これでようやくつまらない人生から解放される。先程はこの鬼によって叶わなかったが、鬼から殺してやると言われているのだから縋らない理由などない。
これでようやく楽になれる。
「意味が分からねぇ」
しかし、答えを聞いた鬼は先程まで包み隠さず溢れさせていた殺気を一瞬の内に消し去った。そして刀に付いた血を拭うと鞘に納めてしまう。



