想いと共に花と散る

 隊士はもう一度手合わせを願い出るが、結果は分かりきっている。
 すぐに勝敗は着き、隊士はとぼとぼと悔しげな様子で観戦していた隊士達の中に混ざった。

「次は、俺だな!」

 大声を張り上げ、次に前に出たのは藤堂だった。
 右手で竹刀を握り、肩を大きく回しながら境内の真ん中に立つ。
 仕方無しに稽古に付き合っていた沖田とは打って変わって、藤堂は高ぶる感情を抑えきれずにいる。
 今すぐにでも手合わせしたいと飛びつかんばかりだ。

「お、平助か。気合入ってるね」
「当たり前だろ!」

 沖田の言葉に返事をするなり、竹刀を構えてにやりと口角を上げる。
 勢いよく踏み込み、藤堂は正面から沖田に打ち掛かった。
 素早い動作で竹刀を振るう。だが、動きが大きく沖田はいとも簡単に躱した。

「隙だらけだよ!」
「くそっ……!」

 藤堂が繰り出す斬撃は、沖田に何度も弾かれ打たれる。
 それでも藤堂は歯を食いしばり、地に膝を付ける度に立ち上がった。

「もう一回!」
「無茶しないほうがいいよ。まずは、息整えなきゃ」
「まだいけるっての!」

 敵わない相手と分かっていてもなお立ち上がるその姿に、雪は思わず拳を握った。
 負け戦でも、立ち向かう根性さえあれば勝機はある。
 藤堂の我武者羅でありながらも芯のある態度は、雪に別の戦い方を与えた。
 一通り稽古が終わり、隊士達は各々水を飲み始める。
 愉快な笑い声も混じり始め、張り詰めていた空気が少し緩んだ。

「はー、疲れた!」
「当たり前でしょ。どんだれけ動いたと思ってるのさ」

 竹刀を両手で握り高々と上げる藤堂と、汗一つかいていない沖田が雪の傍を通り過ぎる。
 
「────……」

 一瞬、沖田と目が合った気がした。
 思わず目を逸らすが、特にこれと言って事が起きることもなく。
 稽古を終えた隊士達が続々と屯所へ戻っていく様子をしばらく眺め、やがて雪も壬生寺を後にした。
 
(……わざわざ隠れて見てる必要はなかった、かな?)

 今更そんなことを考えるが、実際、表立って自分が稽古に参加するわけではないため、隠れていようが同じ事。
 とうに姿が見えなくなった沖田達が通った道を雪も辿り、遅れて屯所へ帰ったのは空が焼け始めた頃だった。