想いと共に花と散る

 死に急いでいた私を助けてくれたのは、月を味方につけた鬼だった。

 生きる意味を与えてくれたのは、若くして天才と謳われた剣士だった。

 行く宛のない私に居場所を与えてくれたのは、皆に慕われる剣術家だった。

 皆、何処の馬の骨とも分からない私に多くの物を与えてくれた。
 生きる意味、生きる楽しみ、生の価値。

 命とは何なのか、何故人として生まれたのか。
 
 それらを貴方達が言葉ではなく時間で教えてくれた。

「似合ってるぜ! ────」
「お前らしいじゃねぇか、────」

 貴方達は何度私の名前を呼んでくれたのだろう。
 名前なんて自己の存在を証明するためだけの手段だと思っていた。

 けれど、貴方達に呼んでもらえるその名前は、私にとって何よりも大切な宝物。