想いと共に花と散る

 何だか想像していた反応とは違うが、普段では想像もつかない土方の一面が見られたから、これはこれでアリかもしれない。
 
(土方さんって、意外と初なのかな?)

 想像する分には個人の勝手だと解釈し、雪は不敵の笑みを浮かべながら彼に近づいた。
 近づけば遠のかれ、近づけば遠のかれる。
 そんな二人を見ていた周りの面々は、何故かつまらなさそうに睨め付けてきていた。

「雪君も揃ったのかい?」
「井上さん、山南さん」
「おや、そこにいるのは雪君なのかい? 随分と綺麗になったね」

 年長者としての余裕からか、井上は特に隠すこともなくさらりと言ってのけた。
 皆の反応を見るのが楽しみだったが、雪は井上の言葉に赤面してしまう。

「……あれ、ちょっと待ってください。私が女ってこと、知っていたんですか?」

 少し冷静になった頭で遅ればせながら気が付いた。
 近藤、土方、沖田、藤堂には男装をする前の姿を見られているから、知っていて当然だ。
 しかし、それ以外の面々には一度も女としての姿を見られていないし、口外だってしていないはずだ。
 にも関わらず、皆はすぐに着物姿の娘は雪であると気が付いた。

「俺等でも、流石に気づくわ」
「舐められては困る」
「まあ、そんなことだろうとは思っていた」
「すみません。以前、怪我の手当をする際に……」

 皆にサプライズを仕掛けたつもりが、逆に思わぬ形のサプライズをされてしまった。 
 これには、雪はただ唖然とする他無い。
 特に最後の山崎のセリフは、雪には大きな打撃となった。

「いつかは気づかれるかと思っていたが、まさかここまで早いとは思わなくてな。わざわざ話さずとも気づいていたようだから、あえて話していなかったのだよ」
「こ、近藤さん……それ、もっと早く言ってくださいよ」

 自分だけが浮かれていたと知り、違う恥ずかしさが襲い掛かる。
 そんな雪を囲む皆は、前々から知っていたという部分は追求せず、着物姿の雪について好き勝手に話し始めた。

「ま、まあ、良いじゃないか。こうして見目に気を使えるのは、今日くらいのものだろうしな」

 近藤のその一言で、怒涛の花見が始まる。
 事前に用意していたらしい会場に行くと、雪は会場の中心の桜の下に座らせられた。