想いと共に花と散る

 男達からしてみれば異様な光景だったに違いない。
 弱い女子だと思って近づき、あられもないことをしてやろうと意気込んでいたところに突拍子もない事を言われたのだから。
 現に、刀を向けていた男は目を瞬いて微かに冷や汗を浮かべている。
 刀を向けられているというのに動じず、あろうことか自ら殺してくれと願うなど正気の沙汰ではない。

「な、なんじゃあこの娘……気色が悪い!」

 男は首筋に当てていた刀を振り上げ、恐怖に歪んだ表情を浮かべる。
 背後に立っていた二人の男達も同じく刀を構え、今にも斬り掛かろうとしてきた。
 それでも視線は逸らさない。

「ええい! 興ざめじゃ!」

 これで終わるのか。
 大して何かを成し遂げたわけでも何かに本気になったわけでもないつまらない人生が。
 
(まあ、いっか。誰も私のことなんか見てくれなかったし)

 嗚呼、でもせめて最後に祖母の笑顔を見たかったかもしれない。
 唯一自分の存在を認めてくれて、名前を呼んでくれた人だから。

「でも、もう疲れたよ……」

 疲れてしまったのだ、生きることに。
 疲れてしまったのだ、自分自身に。

 死ねるのなら何処でもいいし、どんな死に方でもいい。
 一瞬でも興味を持った刀によって斬り殺されるなら悪い気はしなかった。
 ただ一つ気になることとすれば、こんなブサイクな中年男性ではなくイケメンに殺されたかったかも。

「やってまええええ!」

 この男は自分に一体何の恨みがあると言うのだろう。
 そんなことどうだっていいが。
 振り上げられた刀をぼんやりと眺め、そして静かに目を閉じる。
 
 来世は何をしよう。
 もう少し素直になれば、周りからも両親からも愛されるのだろうか。
 来世はたくさん友達を作りたい。それで夏休みには一緒に海にでも行って遊ぶんだ。
 そしてまた祖母の孫に生まれて、春になれば二人で縁側に座って満開の桜を見る。
 
(嗚呼、楽しそう。いいな、そんな未来)

 さあ、これで終わろう。
 こんなつまらない人生なんてさっさと終わらせて、新しく楽しい人生を歩もう。
 何も怖くはない。死ぬことも殺されることも。
 だから、早く殺して。何をしているの。ほら、早く。