想いと共に花と散る

 それを見つけたのは、日が沈んだ暮れ六つ時のことであった。

「おい、雪。……あいつ、何処に行きやがった」

 近頃、巷を騒がせている辻斬りの捜索にてんやわんやで、その違和感に気づけなかったと言ってしまえば言い訳になる。
 今朝方に開いた会議の時も、昨晩の辻斬りとの戦闘の際も、その違和感はあったはずだった。

「あれ、土方さん。そんなに焦ってどうしたんです?」
「……ああ、総司か。いや、別に大したこじゃねぇ……と思うんだが」

 土方の語尾が曖昧に消え入ったのは、感じる懸念が気の所為なのか、それとも現実となりうるのか判断に苦しむからだ。
 現に、今ではすっかり組織に馴染んだ土方の小姓の部屋の前に、土方と沖田は立ち止まっていた。
 障子に手を掛けているのに開けようとしない土方の姿は、沖田にとっては異様以外の何物でもない。
 
「ここって、雪の部屋ですよね。土方さんがわざわざ来るなんて珍しい」
「そう言う総司もだろうが。端から誰も寄せ付けねぇ為に、こんな奥まった場所にしたんだからよ」
「まさかの満場一致でしたもんね。……あ、そうだ。俺、雪のことを探していたんですよ。もしかして、土方さんもですか?」
「あ? お前のとこに行ったんじゃねぇのか?」
「会議の後から一度も見てませんよ。部屋にいるのかなと思って来てみたんですけど、やけに静かだなって……」

 そう言いながら、沖田の中で一つの疑惑が浮かんだようである。
 互いを見ていた視線は誘われるようにやけに静かな部屋へと向かう。暮れ六つ時で辺りは薄暗いと言うのに、部屋の中からは明かりの一つも点いていない。
 それどころか、あるはずの人の気配すら感じられなかった。

「……雪、入るぞ」

 念の為、中にそう声を掛けてから障子を開け放つ。
 部屋の中には案の定誰もおらず、大した物も無く閑散としていた。

「総司。今、手が空いている幹部を呼べるだけ呼んでこい」
「……分かりました」

 沖田が廊下を駆ける足音を聞き流しながら、土方は部屋の中を見渡す。
 視線はある一点に集中していた。
 土方の視線の先にあるのは、半開きになった襖である。その中には布団が二組ほど重なっている。
 迷わず襖を開け布団と布団の間に手を突っ込んだ土方は、何かを掴み引き抜いた。
 
「くそ……」

 一通の真新しい手紙がくしゃくしゃになるほど強く握り締める。
 すぐさま部屋を飛び出した土方は、廊下を足早に進みながら手紙をビリビリに破り捨てた。