想いと共に花と散る

 チクチクと頬が痛い。
 露出している肌にそよ風が当たって肌寒さを感じる。
 辺りは真っ暗なのに、やけに視界以外の感覚は鋭く働いていた。
 草の匂い、何か鋭いものが肌に当たる感触、風を切る音、口の中に広がる土の味。

「ん、うぅ……」

 闇の先に光が見えた。その光は少しずつ大きくなっていって、やがて辺りを包んでいた闇は晴れる。

「いってて……あれ、なんで外?」

 微かな頭痛を感じながらも身体を起こすと、あろうことか自分は外にいた。
 頬や掌に感じていた痛みは、草の上に寝転んでいたことによるものだったらしい。
 何がどうなって外で寝ていたのだろう。
 口の中には砂利の感触と土の味が広がっていて気持ちが悪いし、未だに頭痛がして気分が悪い。
 
「……いや、てかここ何処?」
 
 草の上に座り込んだまま辺りに視線を配る。
 何処を見ても広がっているのは広大な自然ばかり。遠くに点々と建物が見えるが、どういうわけか長屋ばかりが建っている。
 そう、まるで時代劇の中の町並みのよう……。

「はあ!?」

 勢いよく立ち上がり思わず大声を上げてしまった。
 しかし、それも無理からぬことである。
 何故なら、自分は何処かも分からない見知らぬ土地の真ん中でたった独りで目覚めたのだから。
 どう見ても祖父母の家の庭の中ではない。ましてや蔵の中なはずもなかろう。
 であれば、自分は一体何がどうなってこんな場所に来てしまったのか。

「スリッパ、はない。裸足で外で寝てるって、どういう状況よ……」

 自身の足元に目を落とすと、祖父母の家で庭に出る時に履いていたはずのスリッパを履いていない。
 ましてや、何処で作ったのか分からない擦り傷が膝と脛にできていた。
 服や膝に付いた土を払い、もう一度自身が置かれている状況を確認しようと顔を上げた時。
 何故か、視界が暗くどんよりとした空気が辺りに漂っていた。