想いと共に花と散る

 今朝方の会議で話がまとまり、辻斬りの捜索に出たのは同日の日が完全に沈んだ暮れ六つ時であった。
 人気がなくなり、閑散とした京の町を四人は重々しい足取りで進む。
 ほんの些細な物音が聞こえれば刀の鯉口に手を掛けるほど、一同の警戒心は頂点に達している。

「静かだなぁ……」

 気の抜けた藤堂の声で少しばかり緊張が和らぐ。
 それでも、いつ何処から辻斬りが現れるか分からない不安と恐怖は背後を付き纏っている。
 隊列は自然と、土方を先頭に雪、藤堂、そして最後尾に沖田という形になった。雪が刀を持たない以上、これが最も安全な配置だったのだ。

「静かな夜ほど、嫌な予感がするものだよ」
 
 沖田は軽く笑いながらも、視線は周囲から一切逸らさない。
 足運びは音もなく、まるで影のようだった。
 そんな彼らに挟まれて進む雪は、足元に視線を落とし恐る恐る一歩を踏み出す。

「無駄口を叩くな」

 鋭い土方の声が鼓膜を刺す。沖田と藤堂はとくに表情を変えることもなく、口を閉ざした。
 それから会話は途切れ、無言のまま四人は歩みを進める。
 雪は、ぎゅっと袖の中で指を握り締めた。耳を澄ませば、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえた。

(……ここで、出るかもしれないんだ)

 噂だけの存在だった“辻斬り”。
 けれど今は、その気配がすぐそこにある気がしてならなかった。
 通りを一つ曲がり、人気のない裏道へ差し掛かる。土方を筆頭に進んだその時。
 ――かすり、と。
 何処かで、布が擦れるような音がした。次の瞬間には、どんよりとした重苦しい空気が辺りに漂い始める。
 土方が、即座に片手を上げた。それは停止の合図であり、その背を追っていた三人は足を止める。

「……いたな」

 低く呟いた土方が向けるの視線の先。間に挟まれるようにして並んでいた雪は、土方の背後から顔を覗かせてその先を見た。
 提灯の光が届かない路地の奥に、人影が一つ背を向けて立っている。

「……あの羽織………」

 雪の呟きは疑念を確信へと変える一手となった。
 一同の視線の先にある浅葱色の羽織が、闇の中でもはっきりと分かる。
 雪の喉がひくりと鳴る。それは恐怖なのか、あるいは悄然とした落胆か。