想いと共に花と散る

 自分のことのように嬉しくて笑うと、沖田は何かを噛み締めるように小さく笑った。
 その一瞬の違和感に雪ですら気づけない。すぐに意識は周りへと向いてしまい、沖田はたった一人その場に残された。

「楽しんでいる所悪いのだが……皆に一つ、相談したいことがある」

 騒がしい離れに近藤の抑揚のない声が響く。すると一瞬で離れの中は静まり返った。
 全員の意識が近藤へと向けられる。視線を一身に受ける近藤は、静かに茶碗を置いてから顔を上げた。

「改めて会津藩お預かりの組織になったわけなのだが、これから私達はどんどん忙しくなる。きっと人手も足りなくなるだろう。そこでトシと相談し、隊員を新たに募集することにした」
「人数を増やすってことか……?」

 身を乗り出した口にした藤堂の問に近藤は静かに頷く。
 皆は互いに顔を見合わせ、複雑な顔付きをした。雪もまた俯いて近藤の言葉の理解に勤しむ。
 確かに、正式に認められた組織となればこれまで以上に市中の見回りなど、京の治安維持に責任を持たねばならない。
 現状、芹沢達を含め人数は十五人ほど。今までの市中見廻りの頻度であれば十分ではあるが、これからはより多くの人手を要することになるだろう。
 近藤と土方はそういった面に懸念を感じたらしい。
 しかし、皆が不安がるのにも理由がある。何よりも、人数が増えればそれだけ金も掛かるのだ。ようやく安定した活動資金が降りるようになったとは言え、贅沢はできないのが現状。
 皆が不安がるのも無理はなかった。

「何も、一気に増やすわけじゃねぇ。少しずつ、今は必要な人数だけを集める。数を求めるのは、もっと組織として安定してからだ」

 土方の言葉を聞いた一同は、ほんの少し納得した様子だった。
 一気に増やさず、折を見て調節するのであれば人数確保と組織の安定は両立できる。
 
「いいんじゃないですか。京の治安を守る上で、人数を増やすのは得策だと思います」
「人が増えるのかぁ。やっぱし、剣の腕が立つ奴は欲しいよな!」
「平助の暴れっぷりを止められるような奴を希望するぜ」
「ああ!? んだと? どういう意味だ! 左之さんよぉ!」

 藤堂と原田の取っ組み合いが始まると、離れの中には再び賑やかな雰囲気が戻ってきた。
 近藤は何処か安心した様子になり、土方は溜息混じりに取っ組み合いを見ている。

(これから、どんどん組織として大きくなっていくんだ……)

 持っていた茶碗に目を落とし、味噌汁に映る自分自身と目を合わせる。
 この場で不安がっているのは雪ただ一人。皆は決意に満ちた真っ直ぐな目をしていた。