想いと共に花と散る

 今日も皆が離れに揃って朝を迎える。
 時間が掛かることを見越して朝早くから朝餉の準備を始めたのだが、教えながらであったため食事を運ぶ頃には皆が揃っていた。
 沖田と共に出来上がった朝餉を離れに運ぶ。
 順番に並べていき、最後に置いたのは土方の前だった。

「……総司と作ったのか」

 いつも通りに沖田と藤堂の間にある席に向かおうと立ち上がった時、不意に呼び止められた。
 振り返れば、目の前に置かれた膳を見つめる土方がいる。
 一瞬自分に聞かれたのかすら分からなくなるほど、小さな力ない声だった。

「いや、何でもない」

 何だったのか、答える前に撤回されてしまう。
 視線で「さっさと行け」と訴えられ、雪は渋々定位置へと向かった。
 そして、雪が席に着いたことを確認した近藤が声を上げる。

「さあ、今日は総司も一緒に作ったらしい。有り難くいただこう」

 一斉に手を合わせ、今日も騒がしい朝餉の時間が始まった。
 隠しきれない緊張感が離れに漂っている。大方、沖田が作ったと聞かされて皆が恐る恐る箸を着けるからだろう。
 雪と沖田は茶碗を片手に、皆の反応を静かに待つ。互いに見つめ合った二人は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「……うまい」
「えっ! うま! ほ、本当に総司が作ったのかこれ!」
「米が潰れてねぇ……。味噌汁も辛くねぇ!」
「くぅ……。こんなに成長するとは、私は嬉しいぞ!」

 皆の口から溢れたのは、称賛の言葉ばかりであった。
 雪は思わず沖田の顔を見上げる。隣りに座っている彼は、目を見開いて固まっていた。

「総司君、良かったね!」
「……ああ。良かった………」

 いつからだろう。
 最近の俺、何だかおかしくなっちゃったみたいなんだ。
 雪、君の笑顔を見るたびにさ。……左胸が、いや、もっとその深いところがズキズキと痛むんだよ。
 さっき、厨で君が言った独り言があまりにも悲しげに聞こえたから。
 無理矢理冗談を言ってみたんだけど、返って君を悲しませたんだね。
 でも、君はそんな事忘れてそうやって笑う。周りに誰が、どんな奴らがいるのか分かっているのかどうなのか。
 隠すつもりあるのかなぁ……。君が、本当は────。

 笑顔が素敵な、────……女の子だってこと。