想いと共に花と散る

 近藤がそんなことを気にするのは、仲間であると思っているからのことだろうか。
 それならばどれほど良いかと、雪は夜空に浮かぶ月に負けないように明るく笑った。

「……君がそう言ってくれるのなら、我々も救われる。思えば、君のことを何も知らないのだな、私達は」

 それは私も同じ。私も近藤さん達のこと、何も知らないよ。

「もし良かったら、眠くなるまで近藤さん達のこと教えてくださいよ」
「私達のことかい? 聞いてもいい話はできないが……」
「それでも、知りたいです。────……仲間の、ことだから」

 そうして、恩人達の昔話が始まる────。
 
 まずは、近藤さんの昔話。武蔵国多摩郡(東京都・調布辺り)出身の農家の生まれで、幼い頃から剣術に励んでいたんだって。
 やっぱり昔からお人好しで優しいから周りには人が集まったみたい。その優しさが、私を助けてくれたの。
 
 「私はね、雪君。最初から強かったわけじゃないんだ。家の田んぼ手伝い、泥だらけで道場に通ったものだ。しかし、どうにも剣は下手くそでなぁ。何度も周りの奴らには笑われたものだ。それでも、剣を振るのが好きだったんだよ」

 この人は人一倍努力して、自分というものを曲げなかったからここにいるんだ。
 優しさを失わず、誠実な心を持ち続けたから、ここまで背中を追ってくる人がいる。
 私、すっごく素敵な人に助けてもらえたみたいだなぁ。これって、幸せなことだよね。

 そして次は、総司君の昔話。彼は近藤さんと違って、江戸の出身。武士階級だったけど、両親を早くに亡くして剣の道に進んだ。
 「試衛館」という天然理心流の道場に入門して、そこで近藤さんと出会ったらしい。
 天才肌だってみたいで、総司君と手合わせすれば誰も手も足も出せなかったんだって。流石だよね。
 でも、その強さを使って暴れたりなんかはしなかった優しい子なんだって近藤さんは言う。
 そうだよ、もし剣術の天才で乱暴だったら、きっと初めて出会った時に首の傷の手当なんてしてくれなかっただろうから。
 総司君の優しさは私も知ってる。困ったことがあれば助け舟を出してくれて、隣でいつも笑ってくれる人。
 もしも、私にお兄ちゃんがいれば総司くんみたいな人がいいなって思える、そんな人。

 そして残るは土方さんの昔話。

「……別に、誇って語れるような過去なんざ持ち合わせてねぇよ」

 そうは言いつつも、私が期待を宿した目を向ければ語って聞かせてくれる。
 土方さんは誰よりも私に甘いから。今でも怒鳴ったりぶっきらぼうな態度は変わらないけど、それでもずっと丸くなったのを私は知っている。