まるで昔話を語るように話す近藤の横で、雪は暗い足元に視線を落として押し黙った。
完全に皆に馴染んだとは今も思えない。きっと皆は何処かで雪のことを警戒している、そう思わずにはいられないのである。
何も言わないが、雪の何かを感じ取った近藤は小さな方にそっと手を置いた。
この時代の元服とやらは十五歳であるらしい。十六歳の雪は元復していることになり、もう子供ではない。
それでも雪の方は近藤の手よりも小さく、簡単に収められてしまった。
「しかし、それと同時にこれで良かったのかとも思ってしまう」
「何が、ですか……?」
問いかけても、近藤は雪の方に手を置いたまま顔を伏せて黙ってしまう。何かに懺悔するような、何かに謝るような、そんな姿に見えたのは雪の勘違いでない。
それでもいいかけたのなら、最後まで言ってほしかった。
だって、ここまで一緒に来た仲間なんだから。
たとえ生まれた時代は違っても、共にここまで駆け抜けてきた仲間なのだから。
「……男のフリをさせてることだろ」
「っ…………!」
頑なに顔を上げようとしない近藤に変わって、土方の声が宵闇に溶けて消えた。
なんで、なんでそんなことを近藤さんが気にするの?
男のフリをしているのは、私が決めたことだよ。この袴だって私が選んだんだよ。
近藤さんが気にするようなことじゃないのに……。
「君には、素敵な名前があるだろう。親御さんが付けてくれた、君の、君だけの名前が」
それを奪ってしまったことが、申し訳ないんだよ。
近藤はやけにな悲しげな目を雪に向けて言った。背後にいる土方は何を言うでもなく、ぼんやりと夜空を見上げている。
「……わ、私、は………近藤さん達と一緒にいて大変なことも多いけど、それと同じくらい楽しいこともあります。男のフリをするのだって全然嫌じゃなくて、土方さんが付けてくれた“雪”っていう名前、気に入ってるんです」
始めの頃は目を見ることすら恐ろしくてまともにできなかった。今でも事あるごとに頼るのは、笑って答えてくれることを知っている沖田や藤堂ばかり。
それでも、今は少し変わった。
こうして自分の身の上を真っ直ぐと彼らの目を見て話せるくらい心を許せるから。
完全に皆に馴染んだとは今も思えない。きっと皆は何処かで雪のことを警戒している、そう思わずにはいられないのである。
何も言わないが、雪の何かを感じ取った近藤は小さな方にそっと手を置いた。
この時代の元服とやらは十五歳であるらしい。十六歳の雪は元復していることになり、もう子供ではない。
それでも雪の方は近藤の手よりも小さく、簡単に収められてしまった。
「しかし、それと同時にこれで良かったのかとも思ってしまう」
「何が、ですか……?」
問いかけても、近藤は雪の方に手を置いたまま顔を伏せて黙ってしまう。何かに懺悔するような、何かに謝るような、そんな姿に見えたのは雪の勘違いでない。
それでもいいかけたのなら、最後まで言ってほしかった。
だって、ここまで一緒に来た仲間なんだから。
たとえ生まれた時代は違っても、共にここまで駆け抜けてきた仲間なのだから。
「……男のフリをさせてることだろ」
「っ…………!」
頑なに顔を上げようとしない近藤に変わって、土方の声が宵闇に溶けて消えた。
なんで、なんでそんなことを近藤さんが気にするの?
男のフリをしているのは、私が決めたことだよ。この袴だって私が選んだんだよ。
近藤さんが気にするようなことじゃないのに……。
「君には、素敵な名前があるだろう。親御さんが付けてくれた、君の、君だけの名前が」
それを奪ってしまったことが、申し訳ないんだよ。
近藤はやけにな悲しげな目を雪に向けて言った。背後にいる土方は何を言うでもなく、ぼんやりと夜空を見上げている。
「……わ、私、は………近藤さん達と一緒にいて大変なことも多いけど、それと同じくらい楽しいこともあります。男のフリをするのだって全然嫌じゃなくて、土方さんが付けてくれた“雪”っていう名前、気に入ってるんです」
始めの頃は目を見ることすら恐ろしくてまともにできなかった。今でも事あるごとに頼るのは、笑って答えてくれることを知っている沖田や藤堂ばかり。
それでも、今は少し変わった。
こうして自分の身の上を真っ直ぐと彼らの目を見て話せるくらい心を許せるから。



