想いと共に花と散る

 そんな二人と、山南達の様子から薄っすらと雪は感じるものがあった。

「そ、それって……」
「ええ。恐らく、先日の御所の警護での働きぶりに評価が下される、と言ったところでしょう」

 御所の警護により倒幕派の浪士を捕まえた。にも関わらず、今日まで動きを見せなかった会津藩。
 それは、御所の警護だけでは仕えるかどうか完全には判断ができないため、数日開けて市中の見回りなどの出来を見ていたということだろう。
 そして本格的に評価を下せると判断されたため、今日になって近藤達が会津藩邸に呼ばれたのだ。

「だから山南さん、今朝からずっと上の空だったんですねぇ……」

 沖田の笑い混じりの言葉に山南は苦笑を零す。
 食事中も書物を読んでいたのは、不安な気持ちを好きなことで紛らわせようと思ってのこと。
 けれど、それでも不安な気持ちには抗えず、食事すらまともに手をつけられなくなっていたらしい。
 何だか呑気に皆と笑い合っていたのが馬鹿馬鹿しく感じた。きっと共に笑っていた沖田と藤堂も何処かで気づいていたはずだ。

「まあ、私が気にしすぎただけでしょう。今朝の芹沢さんは酔っていなかったですし、局長も土方君もいますから大丈夫だと信じましょう」

 大丈夫だと断言しないのは、何処かで不安に思っているからなのか。
 この数日間、大きな事件など起こしていないし、どちらかと言えば真面目に地中の見回りも行っていたのだ。
 屯所に残された面々ができることと言えば、彼らが働きに見合った評価を下され無事に帰ってくると信じることくらいである。

「そうだよな。あの三人が揃ってるんだし、大丈夫だよな」

 一際明るく取り繕って言った藤堂は、何枚もの食器を重ねて抱える。そのまま軽やかな足取りで離れを出ていった。
 そんな彼の反面、完全に片付けの手を止めていた雪に見せつけるように沖田も立ち上がる。
 山南が自室へと戻っていってようやく雪は動き出せた。
 こういう時、仲間であるなら信じてやるべきだと理解している。しかし、今日がのちの歴史を大きく変える日であると考えるとどうにも安心できなかった。
 
 未来を知っているから、歴史が正しく進んでいるのか分からない。

 本来この時代の人間ではない雪がいるということは、それすなわち歴史を変えてしまうかもしれないのだ。
 そんなことをしてしまえばただでは済まないと考えずとも分かる。
 
「雪、大丈夫?」
「……うん、大丈夫。なんでもないよ」

 沖田に心配されるくらい、雪の不安は顔に出ていた。
 それでも不安がっている場合ではない。きっと、誰よりも不安なのは今頃会津藩邸に入るあの三人なのだから。
 不安を誤魔化すために無理に笑った雪は、縁側の真ん中で立ち止まった沖田を追い抜かして厨へと向かった。