それからは何気ない話で盛り上がった。数日前の御所の警護のことや、日々の鍛錬の話、市中見廻り中の小話など。
皆の話を聞きながら食べていたせいで、気が付いた時には、雪以外の皆は朝餉を食べ終わっていた。
今日は朝から予定があるらしく、近藤と土方は離れを出ていく。原田と永倉は変わらず鍛錬をしに庭へ、斎藤は変わらずの一匹狼と言った様子ですでに姿は見当たらなくなっている。藤堂と沖田は未だ食べ続けている雪を待っていた。
「……ごちそうさまでした」
ようやく食べ終えた頃には、すっかり外の霧が晴れていた。鍛錬中の原田と永倉の声が離れまで届く。
「雪ってホント一口小せぇよなー」
「えっ、そうかな……」
「平助が早食いなだけでしょ。食べているところをガン見されて落ち着いてなんて食べられないって」
二人は自分達が食べ終わってからというもの、今までずっと待っていてくれたらしい。
雪は食べることに必死で周りなど見えていなかったが、あれだけ騒がしかった離れは今やしんと静まり返っている。
朝餉当番の雪と藤堂は皆の食べ終わった食器を片付けるために立ち上がる。沖田も今日は手控えの日らしく、片付けを手伝うとのことであった。
「ん、あれ? 山南さんってばまだ食い終わってねぇじゃん」
藤堂の声が聞こえて雪は食器を片手に振り返る。見れば、藤堂の向かいには書物を片手に箸を握った山南がいた。
てっきり離れに残っているのは三人だけだと思っていてため、雪は必要以上に驚く。
名を呼ばれた山南は、ようやく我に返ったという様子で読みかけの書物を閉じた。
「おや、皆さんは食べ終わっていたのですか。すみませんね、これは後で自分で片付けておきますよ」
「お、おう……。いや、山南さんにしては珍しくボーっとしてるな。何かあったのか?」
「いえ、別に何もありませんよ。ただ、少しばかり気がかりでして」
「山南さんが気になることって……ちょっと怖いなぁ」
口先ではそういいつつも、別段怖がる素振りを見せない沖田を横目に雪は山南を見る。
彼は残りの沢庵を口に放り込み、手を合わせた後にズレてもいない眼鏡を直した。
「局長達の今日の行き先をご存知で?」
「近藤さんらの行き先ぃ? いや、知らねぇけど」
「今日、彼らが向かうは会津藩邸です」
ピンと張り詰めた空気が離れに漂い始める。山南の言葉の意味が理解できていない雪を残し、沖田と藤堂の表情には壁が落ちた。
山南は離から縁側を挟んで見える庭へと視線を向ける。
庭では上裸で木刀を振るう腹だと永倉が見えた。普段は楽しげに木刀を交える二人であるが、今の彼らは何処か苦しげな表情を浮かべている。
皆の話を聞きながら食べていたせいで、気が付いた時には、雪以外の皆は朝餉を食べ終わっていた。
今日は朝から予定があるらしく、近藤と土方は離れを出ていく。原田と永倉は変わらず鍛錬をしに庭へ、斎藤は変わらずの一匹狼と言った様子ですでに姿は見当たらなくなっている。藤堂と沖田は未だ食べ続けている雪を待っていた。
「……ごちそうさまでした」
ようやく食べ終えた頃には、すっかり外の霧が晴れていた。鍛錬中の原田と永倉の声が離れまで届く。
「雪ってホント一口小せぇよなー」
「えっ、そうかな……」
「平助が早食いなだけでしょ。食べているところをガン見されて落ち着いてなんて食べられないって」
二人は自分達が食べ終わってからというもの、今までずっと待っていてくれたらしい。
雪は食べることに必死で周りなど見えていなかったが、あれだけ騒がしかった離れは今やしんと静まり返っている。
朝餉当番の雪と藤堂は皆の食べ終わった食器を片付けるために立ち上がる。沖田も今日は手控えの日らしく、片付けを手伝うとのことであった。
「ん、あれ? 山南さんってばまだ食い終わってねぇじゃん」
藤堂の声が聞こえて雪は食器を片手に振り返る。見れば、藤堂の向かいには書物を片手に箸を握った山南がいた。
てっきり離れに残っているのは三人だけだと思っていてため、雪は必要以上に驚く。
名を呼ばれた山南は、ようやく我に返ったという様子で読みかけの書物を閉じた。
「おや、皆さんは食べ終わっていたのですか。すみませんね、これは後で自分で片付けておきますよ」
「お、おう……。いや、山南さんにしては珍しくボーっとしてるな。何かあったのか?」
「いえ、別に何もありませんよ。ただ、少しばかり気がかりでして」
「山南さんが気になることって……ちょっと怖いなぁ」
口先ではそういいつつも、別段怖がる素振りを見せない沖田を横目に雪は山南を見る。
彼は残りの沢庵を口に放り込み、手を合わせた後にズレてもいない眼鏡を直した。
「局長達の今日の行き先をご存知で?」
「近藤さんらの行き先ぃ? いや、知らねぇけど」
「今日、彼らが向かうは会津藩邸です」
ピンと張り詰めた空気が離れに漂い始める。山南の言葉の意味が理解できていない雪を残し、沖田と藤堂の表情には壁が落ちた。
山南は離から縁側を挟んで見える庭へと視線を向ける。
庭では上裸で木刀を振るう腹だと永倉が見えた。普段は楽しげに木刀を交える二人であるが、今の彼らは何処か苦しげな表情を浮かべている。



