想いと共に花と散る


「あいつの作る飯は家畜の餌よりもやばい……」

 ゾクッと背筋に冷たいものが走ったのは雪も同じである。
 過去に雪が仕出かした過ちは、壊滅的に料理が下手な沖田に教えを請うたこと。
 米を炊くことや味噌汁を作るくらいは自力でできたのだが、漬物は一度も漬けたことがなかった。沢庵の元が大根であることを知ったのが、壬生浪士組と暮らし始めてようやく知ったという有り様である。
 そのため、雪は誰かに漬け方を教えてもらうという任務が増えたのだ。
 初めは藤堂に教えてもらおうとしたが、運悪く彼は市中の見回りに出てしまっていた。
 近藤は部屋に籠もって書類の整理に追われていたし、土方はどういうわけか屯所の中で姿を見なかったし、永倉や原田は稽古中で話し掛けられるような状態ではない。山南ならば教えてくれるかもしれないと訪ねたはいいものの、書物を読むのに集中をしているのか三度呼びかけても返事しなかったため、断念。
 芹沢たちには話し掛けることなどできるはずがないため、始めから候補から外れていた。
 そうして雪が話し掛けられる人物で残ったのが、沖田総司であったというわけである。

「今でこそ慣れたから腹下す程度で済んでるけど、前は三日寝込むやつも出たくらいでよ」
「一回だけ総司君が作ったご飯を見たけど……あれは………うん、すごい迫力だった」

 それなりに親しい間柄になったとは言え、藤堂ほど直接無物言いをするのは憚られる。
 やんわりと濁してそう言えば、膳を運ぶ藤堂は過去を思い出し顔を青ざめた。
 水の入れ過ぎでベチャベチャの米、味噌の入れ過ぎで塩辛いか入れなさすぎで薄すぎる味噌汁、まばらに糠床へ入れたせいで味の濃い部分と薄い部分に別れた漬物。
 兎に角、何もかもがやりすぎなくらい酷い腕前だったのだ。

「つか、あいつだけじゃなくて、ここにいる奴皆料理下手なんだよな。山南さんと新ぱっつぁんはまだマシな部類だけど、俺と左之さんと近藤さんは下手だって自認してるし、土方さんなんかはまず厨に立とうとしねぇ。まあ、それはいいんだよ。問題は……」

 沖田総司が、自身が料理下手であることを自覚していないこと。

「せめて、俺みたいに下手なことを自覚してくれてたらちゃんと残さず食うよ? けどさ、あいつ、自信満々にあんな飯を出してくるんだぜ!? 救いようねぇよ!」
「それは……本人の問題だからどうしようもないね……」

 離れに入って朝餉が載った膳を並べていると、次第に他の面々が匂いにつられて集まってくる。