根暗な貴方は私の光

 蕗とは親友のような間柄の和加代だが、彼女の年齢は蕗よりも一回りか二回りほど下である。彼女にはまだ未来というものがあるというのに、こんなにも残酷な経験をしなければならない現実が確かにあった。
 そんな彼女は年上のある男の人柄に惹かれてしまった。最後には紬も和加代も彼らのことを愛してしまったのだ。
 ずっと傍にいたいと願ってしまった。蕗のように伝えたいことを伝えられぬまま、最期の時を迎える。それは二人が決めた終焉なのだ。たとえ想いが伝わらぬとも、自分だけが彼らのことを忘れられずにいられるならばそれでいい。

「なんて、愚かなんでしょうね。私達って」

 泣きじゃくる和加代の華奢な身体を抱き寄せて、そっと紬は彼女の頭に手を置いた。もし叶うならば、最後だけでも彼に彼女の頭を撫でてあげてほしかった。これは紬ではなく、彼がするべきことだと思ったからだ。
 けれど肝心な彼はこの場にいない。明日か、明後日か、もしかしたら今すぐにでもこの世からいなくなってしまうかもしれないのだ。

「死なないで、死なないでよぉ……」

 切実な和加代の願いに紬の胸はぎゅっと締め付けられる。まだまだ彼女にはこれからがある。それにもかかわらず、彼女は泣きながらそう縋って願っている現実がある。
 和加代は小瀧に自分の想いを伝えることができたのだろうか。
 いや、伝えられていないからこうして泣いているのだろう。それでも伝えに行こうとしないのは、今伝えてしまえばこれから先、彼のことをずっと引き摺ってしまうからだ。
 紬のように彼のことを好きなままでいられるように気持ちを伝えない選択をした。後悔のない人生など無い。後悔をし続けてその先の答えを見つけ出す。だが彼女達に与えられた選択肢は、神の無慈悲で残酷な選択肢であった。