根暗な貴方は私の光

 好きな人に好きだと言う。触れたいと思う人に触れたいと言う。傍にいたいと思う人に傍にいさせてほしいと言う。
 どの想いも当たり前に伝え合えるべきであった。けれど、この世界は嫌になるほど残酷で。

「想いは伝えられても、一緒にいることは叶わないのよ」

 今の自分がどのような表情をしているのかなど紬に分かるはずもない。ただ、目の前にいる和加代がぎゅっと制服の裾を掴み、毒虫を奥歯で噛み潰したような苦々しい表情を浮かべたのを見るに、ロクな顔をしていなかったのだろう。
 自分で言っていて馬鹿馬鹿しい。隣りにいる少女を元気づけようと思っての発言が返ってこの暗い雰囲気を作り出していた。

「五十鈴さん、やっぱり追いかけましょう」

 沈んだ気持ちを抱えたまま足元に視線を落としていると、不意に頭上から江波方の声が聞こえていた。
 小瀧を探しに行くと言って教室を出ていた彼は、小瀧と共に並んで紬を見ている。
 隣で和加代が頬を赤らめながら小瀧の差し伸べた手を握っていた。左手を庇うように胸の前で握っている。
 紬はそんな彼らを横目で見ながら自力で立ち上がった。教室を出ていく江波方の背を追って皆は教室を出る。

「足元、気をつけて」
「……ありがとう」

 江波方に手を引かれながら学校を出ると、辺りは見るも無惨な焼け野原と化していた。
 辺り一面が崩れ落ちた建物の瓦礫と灰で埋まっている。少しでも気を抜けば散らばる瓦礫に足を取られそうであった。
 焼け野原は気が遠くなるほど先まで見渡せる。ちらほらと瓦礫の撤去作業をする人々が見えるほどに辺りには何もない。
 少し焼け野原の中を歩くと彼らの視線の先に小さな集落があった。空襲の影響をほとんど受けていないのか建物の形がしっかりと残っている。
 
「あそこかもしれないわ」

 紬が呟くと江波方は一度頷き止めていた足を再び動かす。一晩眠ったからか不思議と身体は軽かった。
 建物と瓦礫の間を縫って進んでいると、ほとんど瓦礫になってしまって原型を留めていない家屋の前に立つ蕗と仁武がいた。
 二人にいち早く気が付いた紬は江波方の手を離して駆け出す。

「いたわよ!」

 そう声を上げれば豆鉄砲を食らったような顔をした蕗と仁武が振り返った。
 紬は二人の目の前で立ち止まり肩で息をしながら睨みつけるような責めるような視線を蕗に向けた。

「何をしていたの? そんなに泥だらけになって……。本当、心配したんだから」
「ご、ごめんなさい。どうしても確認したいことがあった……んだけど………」

 目を泳がせながら答える蕗にこれと言って目立つ怪我はない。隣りに立ってバツが悪そうに苦笑いを浮かべる仁武も同じであった。
 不安と緊張が一気に解れ、押し寄せてきた安心に足を掬われそうになる。なんとか倒れないよう踏ん張り、真っ直ぐと背筋を伸ばした。