根暗な貴方は私の光

 紬の隣にまで来ていた江波方は、まさか自分までも巻き込まれると思っていなかったのだろう。驚きに細い目を見開いていた。
 鏡子は二人に向かってそう言い、紬が抱えていた包を指さしながら不敵な笑みを浮かべる。拒否することを許さないと言いたげな圧すら感じる笑みである。
 紬に拒否させないようにする彼女の悪い癖であった。

「これをある人の所に届けてほしいのよ。できれば今日の内に、いいえ、今すぐにでも向かってほしい」
「え、今から? 急すぎるわよ。江波方さんだって今来たばかりなのに」
「ああ、俺は大丈夫ですよ。元々時間が合ってきたので、お手伝いします」

(何を言っているの……!)

 このまま上手く断れないかと理由を探していたところに江波方が来たため、理由をつけるのにうってつけだと思ったのだが。
 あろうことか彼は紬のそんな企みなど全く知らず、いとも簡単に台無しにした。
 一人断る理由を無くし落胆する紬をよそに、鏡子と江波方の間では話が進む。
 江波方の要領を得た返答に鏡子は満足げに笑ってみせた。紬が突き返していた包を強引に押し付け、くるりと紬の身体を玄関口へと向ける。

「ちょ、ちょっと!」
「いいから、黙って行きなさい」

 すっかり鏡子に流された紬は渋々包みを抱え直し、引き戸を開けて外へと一歩踏み出した。一度は振り返って鏡子を見た紬だったが、彼女から発される有無を言わさぬ圧に負け渋々店を出る。
 納得していないらしい様子で出ていく彼女を尻目に、鏡子は江波方へと向き直った。

「それでは、よろしくお願いします」

 この時、江波方は何故彼女が自分に頭を下げるのか知る由もなかった。