しばらく沈黙が流れる。時計の秒針が進む音だけが聞こえる室内で口を開く者は誰もいない。
そんな時間がずっと続くのかと思われていた時、ガラガラと重い引き戸を何者かが開く音が聞こえた。紬は驚きに身体を震わせ鏡子から視線を外し振り返る。
「あっ、お二人だけですかぁ?」
「江波方さん……」
店に現れたのは意外にも江波方一人であった。普段ならば仁武や芝と共に顔を出すのだが、この時は彼らの気配は感じられなかった。
今にも泣き出しそうな目を向ける紬とバツが悪そうに目を逸らす鏡子。普段の彼女達では想像もできないほど暗い雰囲気が室内に漂っていた。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったらしい江波方は、一瞬店に入ることを躊躇する。しかし鏡子が中に入るよう促し、江波方は素直に従った。
「お邪魔してしまいましたかね」
「いいえ、来ていただけて嬉しいわ。それにしても、今日は江波方さんお一人?」
「個人的な用で来たんです。用って言っても顔を出しに来ただけなんですけど」
そう言って乾いた笑みを落とす彼は、直接は語らずとも軍事基地から逃げ出してきたのだろう。店に入ってくる時も何処か警戒している様子で、普段よりも一層猫背になっていたのだ。
江波方が軍事基地から逃げ出してきたのは、むさ苦しい漢が集まっている場では息が詰まるかららしい。時折、そう他の皆に聞かれないよう小声で語っているところを紬は耳にしていた。最も、彼女だけにそういった弱音を吐いているからなのだが。
芝達を嫌っているわけでも避けているわけでもないようだが、普段から彼は何処か居心地の悪さを表情に浮かべていた。
彼のその様子に気がついている者は数少ないことだろう。それこそ、紬と勘のいい鏡子くらいのものである。
こうして一人で基地を抜け出し柳凪へとやって来たのは、紬と鏡子にはすでに勘づかれていると悟ったからである。
「それなら、今お時間あるかしら」
「え? ああ、まあ、あるにはありますが」
鏡子の突然の問に、江波方は不意を突かれた様子で彼女を見た。問うた本人は微かに笑みを浮かべている。
何か良からぬことを考えていると、この場では紬だけでなく江波方もすぐに察せた。
「二人にお願いがあるの」
そんな時間がずっと続くのかと思われていた時、ガラガラと重い引き戸を何者かが開く音が聞こえた。紬は驚きに身体を震わせ鏡子から視線を外し振り返る。
「あっ、お二人だけですかぁ?」
「江波方さん……」
店に現れたのは意外にも江波方一人であった。普段ならば仁武や芝と共に顔を出すのだが、この時は彼らの気配は感じられなかった。
今にも泣き出しそうな目を向ける紬とバツが悪そうに目を逸らす鏡子。普段の彼女達では想像もできないほど暗い雰囲気が室内に漂っていた。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったらしい江波方は、一瞬店に入ることを躊躇する。しかし鏡子が中に入るよう促し、江波方は素直に従った。
「お邪魔してしまいましたかね」
「いいえ、来ていただけて嬉しいわ。それにしても、今日は江波方さんお一人?」
「個人的な用で来たんです。用って言っても顔を出しに来ただけなんですけど」
そう言って乾いた笑みを落とす彼は、直接は語らずとも軍事基地から逃げ出してきたのだろう。店に入ってくる時も何処か警戒している様子で、普段よりも一層猫背になっていたのだ。
江波方が軍事基地から逃げ出してきたのは、むさ苦しい漢が集まっている場では息が詰まるかららしい。時折、そう他の皆に聞かれないよう小声で語っているところを紬は耳にしていた。最も、彼女だけにそういった弱音を吐いているからなのだが。
芝達を嫌っているわけでも避けているわけでもないようだが、普段から彼は何処か居心地の悪さを表情に浮かべていた。
彼のその様子に気がついている者は数少ないことだろう。それこそ、紬と勘のいい鏡子くらいのものである。
こうして一人で基地を抜け出し柳凪へとやって来たのは、紬と鏡子にはすでに勘づかれていると悟ったからである。
「それなら、今お時間あるかしら」
「え? ああ、まあ、あるにはありますが」
鏡子の突然の問に、江波方は不意を突かれた様子で彼女を見た。問うた本人は微かに笑みを浮かべている。
何か良からぬことを考えていると、この場では紬だけでなく江波方もすぐに察せた。
「二人にお願いがあるの」



