親友との別れから長い時間が過ぎた。まだまだ明るく鮮やかな青空だと思っていた空は橙色に染まり、そんな空を無数の烏が横切っていく。
いつまでも仲良くできるとは思っていなかったから、いつかは別れの時が来るだろうとは思っていた。
けれど、こんなにもあっけないものだとは思わなかったのである。
「これから、どうしようかな……」
ぽつりと言葉にしてみると途端に不安が募った。何の宛もなく彷徨っていてまともに生きられるはずがないと気がついたのだ。
もっと考えて家を出てくるべきだった。考えなしにした自分の行動が今になって憎らしい。
徐々に藍色へと染まり始めている空を見上げてどうしようもない焦燥感に駆られた。建物の影に回り込むと、その場に座り込んで蹲る。
喉が渇いた。水筒の中の水はあの時に子供に全て与えてしまったから一滴も残っていない。
腹が減った。飲み水は用意したというのに食べ物は全くもって用意していなかった。完全に食べ物のことが頭から抜け落ちていたのである。
これからどうすればよいのだろう。母を捨て、家を捨て、未来を捨てたことである今に何の意味があるのだろう。
「幸せになんて、なれるのかしら……」
建物の屋根の間から見える空を見上げて呟く。藍色に染まった空にはちらほらと星が浮かんでいた。
星を見るのは一体いつぶりだろう。もうずっと落ち着いてみたことがなかった気がする。
独りになってようやく落ち着けるなど皮肉だった。
「貴方、こんな所で何をしているの?」
若い女の声がすぐ傍から聞こえた。鮮やかな着物を身に纏った華やかな見た目をした女性が紬の目の前にいた。
綺麗な人だ。この時代に似つかわしくない、美しい人。
当然だが、こんな綺麗な女性など知り合いにいるはずもない。年は近いように見えるがこの女性の方がよっぽど大人びて見える。
そして何より、地面に蹲って見窄らしい見た目をした紬に話し掛けてくる意味が分からなかった。
今の紬の姿と名前も知らないこの女性では天と地の差がある。正直、見ているだけで自分が惨めになっていくようで居た堪れなかった。
それでも、紬はこの女性を見て静かに思う。
嗚呼、女神が舞い降りてきた。
いつまでも仲良くできるとは思っていなかったから、いつかは別れの時が来るだろうとは思っていた。
けれど、こんなにもあっけないものだとは思わなかったのである。
「これから、どうしようかな……」
ぽつりと言葉にしてみると途端に不安が募った。何の宛もなく彷徨っていてまともに生きられるはずがないと気がついたのだ。
もっと考えて家を出てくるべきだった。考えなしにした自分の行動が今になって憎らしい。
徐々に藍色へと染まり始めている空を見上げてどうしようもない焦燥感に駆られた。建物の影に回り込むと、その場に座り込んで蹲る。
喉が渇いた。水筒の中の水はあの時に子供に全て与えてしまったから一滴も残っていない。
腹が減った。飲み水は用意したというのに食べ物は全くもって用意していなかった。完全に食べ物のことが頭から抜け落ちていたのである。
これからどうすればよいのだろう。母を捨て、家を捨て、未来を捨てたことである今に何の意味があるのだろう。
「幸せになんて、なれるのかしら……」
建物の屋根の間から見える空を見上げて呟く。藍色に染まった空にはちらほらと星が浮かんでいた。
星を見るのは一体いつぶりだろう。もうずっと落ち着いてみたことがなかった気がする。
独りになってようやく落ち着けるなど皮肉だった。
「貴方、こんな所で何をしているの?」
若い女の声がすぐ傍から聞こえた。鮮やかな着物を身に纏った華やかな見た目をした女性が紬の目の前にいた。
綺麗な人だ。この時代に似つかわしくない、美しい人。
当然だが、こんな綺麗な女性など知り合いにいるはずもない。年は近いように見えるがこの女性の方がよっぽど大人びて見える。
そして何より、地面に蹲って見窄らしい見た目をした紬に話し掛けてくる意味が分からなかった。
今の紬の姿と名前も知らないこの女性では天と地の差がある。正直、見ているだけで自分が惨めになっていくようで居た堪れなかった。
それでも、紬はこの女性を見て静かに思う。
嗚呼、女神が舞い降りてきた。



