ゲームセンターを出てからは、特に行きたい場所もなくフードコートで時間を潰していた。
志筑の向かいに座る蘭はここへ来てからというもの、おそろいのマスコットのキーホルダーを眺めてはニヤニヤと笑みを浮かべている。
机に項垂れてメロンソーダを行儀悪く飲んでいる姿はなんとも無防備である。
「そんなに嬉しいか? 別にこれ可愛くねぇだろ」
「いや可愛いでしょ。この不貞腐れた不細工さがいいんだよ。俗に言うブサカワって奴、知らない?」
「知らねぇし興味もねぇ。お前らってのはとことん悪趣味だな」
志筑に切って捨てられた蘭はマスコットを掲げ、犬の顔を同じ顔をしてみせた。人間がこのマスコットと同じ顔をするとただただ変顔にしか見えない。
完全に歪んしていた志筑は突然向けられた変顔に思わず吹き出す。
幸い何も口に含んでいなかったため吐き出すことはなかったが、笑いが溢れ出して止められない。
「えっ、何。そんな変な顔してた?」
「くっふふ。いや、はは。結構な変顔だぞ、それ。あー、写真に残して壁に貼りたい」
「さいっあく! 志筑の方がよっぽど悪趣味じゃんか!」
ぎゃんぎゃんと野犬のように吠える蘭はやはり警戒心がない。志筑がこの街に来てからずっと感じている不安を蘭は全くもって知らないのだ。
この無防備さが返って志筑の不安を解してくれるのも事実だが、いつ何処で誰が見ているのか分からないという緊張感は拭えない。
志筑は一刻も早くこの場を離れて人気の少ない場所に行きたかった。
それでも行動に移そうとしないのは、ようやく蘭が遠慮をせず心から楽しんでいたからである。この雰囲気を壊せるほど志筑は薄情ではなかった。
「分かった分かった。悪かったよ」
「それ本心じゃないでしょ」
「人に文句を言われて素直に謝るようなやつなんてこの世の半分もいねぇよ」
「何それ、本当にそうなの?」
「嘘に決まってんだろ。俺がこの世界の人間の考えていることが分かるかっての」
「やっぱり志筑って悪趣味だ」
「人殺しの時点で悪趣味の域を超えてる」
蘭は不貞腐れた表情を浮かべたまま、机の上に顔を伏せた。まだ半分も減っていないメロンソーダからは炭酸が抜けていっている。
もったいないと思う者はこの場に誰もいない。ただ無情に過ぎていく時間を無題に浪費するだけであった。
そんな中、ぼんやりと周囲に視線を巡らせていた志筑は妙なものを見つける。
「何だあの集団。スーツを着て白手袋って、まるで刑事みたいだ」
いや、あれは。
「おい蘭!」
「な、何!?」
「今すぐ立て。逃げるぞ!」
あれは刑事みたいではない。紛れもない本物の刑事である。
フードコートから見える位置にある雑貨店の店員に警察手帳を見せている場面を志筑ははっきりと捉えた。
恐らく、いや絶対、自分達を追ってきたのだ。こんなに人が多い場所にいれば、誰からが警察に通報ていてもおかしくはない。
呆けた様子の蘭の左手首を掴んで志筑は一目散にフードコートから走り出した。
今はまだ捕まっていられない。こんな場所で捕まってしまえば、今までの逃避行が全て無駄になってしまう。
志筑の向かいに座る蘭はここへ来てからというもの、おそろいのマスコットのキーホルダーを眺めてはニヤニヤと笑みを浮かべている。
机に項垂れてメロンソーダを行儀悪く飲んでいる姿はなんとも無防備である。
「そんなに嬉しいか? 別にこれ可愛くねぇだろ」
「いや可愛いでしょ。この不貞腐れた不細工さがいいんだよ。俗に言うブサカワって奴、知らない?」
「知らねぇし興味もねぇ。お前らってのはとことん悪趣味だな」
志筑に切って捨てられた蘭はマスコットを掲げ、犬の顔を同じ顔をしてみせた。人間がこのマスコットと同じ顔をするとただただ変顔にしか見えない。
完全に歪んしていた志筑は突然向けられた変顔に思わず吹き出す。
幸い何も口に含んでいなかったため吐き出すことはなかったが、笑いが溢れ出して止められない。
「えっ、何。そんな変な顔してた?」
「くっふふ。いや、はは。結構な変顔だぞ、それ。あー、写真に残して壁に貼りたい」
「さいっあく! 志筑の方がよっぽど悪趣味じゃんか!」
ぎゃんぎゃんと野犬のように吠える蘭はやはり警戒心がない。志筑がこの街に来てからずっと感じている不安を蘭は全くもって知らないのだ。
この無防備さが返って志筑の不安を解してくれるのも事実だが、いつ何処で誰が見ているのか分からないという緊張感は拭えない。
志筑は一刻も早くこの場を離れて人気の少ない場所に行きたかった。
それでも行動に移そうとしないのは、ようやく蘭が遠慮をせず心から楽しんでいたからである。この雰囲気を壊せるほど志筑は薄情ではなかった。
「分かった分かった。悪かったよ」
「それ本心じゃないでしょ」
「人に文句を言われて素直に謝るようなやつなんてこの世の半分もいねぇよ」
「何それ、本当にそうなの?」
「嘘に決まってんだろ。俺がこの世界の人間の考えていることが分かるかっての」
「やっぱり志筑って悪趣味だ」
「人殺しの時点で悪趣味の域を超えてる」
蘭は不貞腐れた表情を浮かべたまま、机の上に顔を伏せた。まだ半分も減っていないメロンソーダからは炭酸が抜けていっている。
もったいないと思う者はこの場に誰もいない。ただ無情に過ぎていく時間を無題に浪費するだけであった。
そんな中、ぼんやりと周囲に視線を巡らせていた志筑は妙なものを見つける。
「何だあの集団。スーツを着て白手袋って、まるで刑事みたいだ」
いや、あれは。
「おい蘭!」
「な、何!?」
「今すぐ立て。逃げるぞ!」
あれは刑事みたいではない。紛れもない本物の刑事である。
フードコートから見える位置にある雑貨店の店員に警察手帳を見せている場面を志筑ははっきりと捉えた。
恐らく、いや絶対、自分達を追ってきたのだ。こんなに人が多い場所にいれば、誰からが警察に通報ていてもおかしくはない。
呆けた様子の蘭の左手首を掴んで志筑は一目散にフードコートから走り出した。
今はまだ捕まっていられない。こんな場所で捕まってしまえば、今までの逃避行が全て無駄になってしまう。



