荒廃した世界で、君と非道を歩む

 黒曜石の如く闇に染まった大きな瞳。蘭の目を見ていると、まるで瞳の奥に吸い込まれそうだ。
 けれど、そんな瞳に自分が映っていようと、そんな瞳に見つめられようと不快ではない。むしろ安心している自分が確かにいる、そう志筑は蘭の瞳を見つめながら静かに感じた。

「それは、俺も同じだ。お前は危なっかしくて、目が離せなくて。ずっと後ろを付いて来ていると思えば忽然と姿を消す」

 嗚呼、そうか。
 怖いんだな、俺も。
 独りになるのが怖いんだ。また、この手を血に染めるのが怖いんだ。
 この少女を手に掛ける日が近づいていることが怖いんだ。この少女を失うことが怖いんだ。

 俺も、こいつも、もう独りだった頃には戻れないんだ。

「もう、寝よう。寝て明日を迎えて、それから次の行き先を決めよう。だから、今は寝ろ。俺はここにいるから」
「うん、うん。私もここにいるから、志筑の傍にいるから」

 少し肌寒いが、互いに身を寄せ合っていれば寒さなんて気にもならない。
 胸元で小さくなっていた蘭から寝息が聞こえ出し、彼女が寝たことを確認すると途端に睡魔が志筑を襲った。
 思えば蘭と出会い、住処であった廃墟ビルを出てから今までまともに寝ていなかった気がする。
 明日新たな行き先に向かうため、今はしっかりと休もう。また明日を迎えるために、蘭と逃避行を続けるために。

「おやすみ、また明日……」

 瞼を閉じれば、一瞬で意識が途切れる。
 離れないように、別れないようにその小さな身体を抱き締めて。痛いくらいに、骨が折れるくらいに抱き締めて。

 そうして、もう一度見せてほしい。君のその無邪気な笑顔を。