『小っちゃくてわんこみたいに思ってただけだよ。女の子として好きなわけじゃないって』

 助けてくれたとき、そう言われた。


 《感情の球》を見て、優しいオレンジ色をされることがよくあった。

 親しみを表す色。

 その色がたまに愛情を示す薄いピンク色が混ざっていたから、もしかしてって思ってた。


 でも、勘違いだったんだ。

 そのあと街で見かけたカップルや夫婦の《感情の球》を見てみて、本当に違っていたって気づいたの。

 異性への愛情はもっとピンクの色が濃くて、それでいて優しい色合いだった。


 勝手に感情を読み取って、読み間違えて、ショックを受けて……。

 恥ずかしかった。

 あんな勘違いはもうしたくなかった。


 それからはむやみに《感情の球》を見るのはやめた。

 よくよく考えたら人の感情を勝手に読み取るのも失礼だよねって思い直したし。


 だから、どうしても対応に困ったときしか《感情の球》を見ないようにしている。


 風雅先輩の気持ちも、勘違いしたくないから初めて会ったとき以来見ていない。

 ……きっと、風雅先輩もわたしを小動物扱いしてるだけ。

 自分に言い聞かせるようにそう思うのに、握られた手の体温を思い出すとキュッと胸が苦しくなるのはどうしてだろう。

 その答えも出してはいけない気がして、疑問のまま終わらせた。