はじまりは、
お天道様が本気を出す前の夏の朝。
「──それなら、旅行に行くか?」
日々の勉強に疲弊して限界寸前に達した私に
帰省を提案した父の声だった。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
「いなくなったら、喧嘩することも、
笑い合うことも、一緒にご飯を食べることも、
こうやって触れ合うこともできなくなるんだよ」
目を瞑ったまま
強く言い聞かせるように言葉を紡ぐ姿も
「……馬鹿で意地悪でチャラくて、ズルい男でごめんね」
いたずらっ子のように笑う顔も
指切りをした小指の温もりも
別れ際の不意打ちの口づけも
全部──一生忘れない。
「俺が恋しいからって、予定早めるなよ?」
そう言って頭を優しく撫でた君は
結局最後まで女心を理解できなかったけど、
誰よりも愛に溢れた最高の王子様だった。
。
。
。
。
。
。
これはわずか7日間の
儚く切ない、ひと夏の愛の物語。
2022/8/19 執筆開始
2023/1/31 完結公開
ケータイ小説 野いちご

作品番号
1670530
最終更新日
2023/2/5
砂浜に描いたうたかたの夢
茶葉月ゆら/著
ジャンル/恋愛(純愛)
322ページ 完
PV数/5,879・総文字数/149,596