──ミーンミンミンミンミーン……。



「んん……?」



夏を感じさせる鳴き声が耳に入り、眉間にシワを寄せながら目を開けた。


ここ、どこ……?


視線の先には、鉢に入った花と盆栽。

曾祖母の家の庭と構造が似てるけれど、飾ってある種類が少し違う。としたら、ここは誰かの家の庭……?



「あ、起きた?」



見慣れない場所に戸惑っていると、頭上から声が聞こえた。



「おはよう。よく眠れた?」



仰向けになり、まばたきを繰り返しながら、寝起き数秒の頭を起動させる。


前髪から覗く涼しげな目、派手さはないが全体的に整った品のある顔立ち。

そして、安心感溢れる柔和な笑顔……。



「……うえぇぇっっ⁉」



視界いっぱいに広がる顔が鮮明になり、慌てて起き上がった。



「おおっ。寝起きなのに元気いっぱいだなぁ。具合はどう? どこも痛くない?」

「う、うん。ピンピン、してます」

「なら良かった」



安堵の溜め息をついた凪くん。目だけを動かして辺りを確認する。

左側には障子、右側には庭。どうやらここは縁側らしい。