「一花、そろそろ行くよ」

「はーい、ちょっと待って」



洗面所の鏡の前で髪の毛をまとめながら、部屋の外にいる母に返事をした。

とりあえず後ろで1つに結んで、着いたらお団子にしよう。

最後に前髪をピンで留めて洗面所を後にした。


8月上旬。月曜日の午前7時。
今日は待ちに待った、曾祖母の家に行く日なのだ。



「お、来た来た」

「遅いぞ姉ちゃん」



玄関に向かうと、なぜかシャツ姿の父とパジャマ姿の楓がいた。

よく見たら、口がモゴモゴ動いているような。



「忘れ物はないか? 手土産は持ったか?」

「大丈夫。さっきリュックに入れた」

「お土産買ってくるのも忘れんなよ! てか覚えてる?」

「覚えてるって。お菓子でしょ?」



執拗に何度も確認する2人。

そこまで言わなくても……ちゃんと全部持ったし、お土産も写真つきでメモしてるって。

なんて呆れながらも、食事を中断してまで来てくれたことに、内心少し嬉しく思ってたりする。