カルミアに会ったあの日から、何度も頭をよぎるのは、婚約者のカンナではなく、カルミアの顔。

 急速に自分の中でカルミアの存在が大きくなっていることに気づいたのです。

 しかし、国王の息子で王子でもあるクロークスに、誰かを好きになる自由は許されていません。

 すでに決められたレールの上を歩かなければならない、その不自由さ、息苦しさが一生続くのです。

 クロークスは深いため息をつきました。

 そして、カルミアの笑顔を思いだし、あした会えることに思いをはせました。

   *

 そのころカルミアは、町の中にある宿屋にいました。

 白い作業着を着て、口にはマスクをし、モップと水の入ったバケツを持っています。