古城の姫君

 それは数日前のこと。

 クロークスの父親が、彼に言いました。

「身分を隠して、アプリコット城がどうなったか見に行ってきてくれないか。車は従者に運転させればいい」

 それはラティスフォリアの国王の命令でもありました。
 息子といえども逆らうことはできません。

 車輪から伝わってくる振動を背中に感じながら、クロークスは天井をぼんやりと見つめていました。

「王子、アプリコット城が見えてきましたよ」
 
 運転席からジンジャーが後ろに声をかけ、それを聞いたクロークスは上半身を起こしました。