二人が勤めている株式会社SK企画に、この4月に入社してきた女子社員、安藤真琴。

 大学を卒業したばかりだが、年はこの二人の一つ上だ。

 では、なぜこんなにも奈緒が怒っているのか。



「安藤真琴と申します。よろしくお願いします」

「毎熊奈緒です。よろしく」

 昨日、奈緒の元に挨拶をしてきた安藤は、とても好印象だった。

 昼休み、先輩社員の安里佐和子と三人でランチに出かけた時のことだ。

 奈緒は真琴の左手の薬指に指輪が光っていることに気付いた。

「真琴ちゃんって結婚してるの?」

 そう質問したのは先に指輪に気付いていた佐和子だった。

「あ、はい。子供もいます。今は保育所に預けてるんですけど」

 話によると、大学卒業が遅れたのは子供の出産や育児があったかららしい。

 つまり、先月までは学生ママだったのだ。

 なかなか逞しい新入社員だ。

「もう26ですし、全然フレッシュな新入社員じゃないですけどね」

 なんて謙遜する彼女は、確かに奈緒よりは少し老けて見えた。