浮気女の嫁入り大作戦


 俺は花枝の手を強く握った。

 花枝は微笑み握り返す。

 この手はもう、離せそうにない。

「あんたね、ホテルであたしの話、ちゃんと聞いてたの?」

「結婚したいっていう話? 聞いてたよ」

「だったら、あたしがどうしてほしいかわかるでしょ。もっとちゃんとプロポーズして」

「ちゃんとって、毎熊さんの希望通りにってこと?」

「そうよ。上手にできたら、結婚してあげる」

 何とも高飛車な態度であるが、沢田は笑顔になった。

「わかったよ。景色のいいところ探すし、小さくてもダイヤの付いてる婚約指輪を準備する。だから……」

「だから?」

「もう浮気はしないでね」

 新しい作戦の開始合図のように、二人の遠い上空を飛行機が飛んでいく。

 奈緒はダイヤのない指輪を強く握って、早く薬指に付けたいと思った。

 沈下していた結婚願望は、またエベレスト並みである。






fin.