天気…今日は二十四節気のなかの『夏至』。一年のなかで昼の時間が一番長い日だ。いよいよ本格的な夏がやってきた。今日は朝からよく晴れていて、日が暮れるまで太陽の光がまぶしいほどに大地に降りそそいでいた。公園に散策にやってくる人たちの多くは半そでやノースリーブの服を着たり、薄手のズボンやスカートをはいて、夏のよそおいをしていた。暑そうにハンカチで汗をぬぐったり、パラソルを差したり、帽子を深めにかぶったり、サングラスをかけて歩いている人もいた。
今日は土曜日だから、杜真子がきっと、食べ物を持ってきてくれるだろうと思って、ぼくは朝から、そわそわしながら、洞窟の前に立って、翠湖公園の入口付近にある眼鏡橋のほうを見ていた。すると朝の十時ごろ、思っていたとおりに、杜真子が眼鏡橋を渡って、こちらのほうへ近づいてくるのが見えた。馬小跳もいた。杜真子と馬小跳は別の学校に通っているので、普段はめったに会わないが、今日は土曜日だから杜真子が馬小跳を誘って、いっしょに来ているのだと、ぼくは思った。杜真子も馬小跳も手に袋をさげていたので、ぼくに食べ物を持ってきてくれているのだと思って、うれしくてたまらなくなった。すぐに駆け寄っていこうかと思ったが、おなかが空いているのを見透かされたくないと思ったから、ぼくはあえて出ていかないで、洞窟のなかに隠れながら、じっと待つことにした。するとそれからまもなくしてから、洞窟のすぐ外から杜真子の声が聞こえてきた。
「笑い猫は、この公園のなかのどこかにいるから、自分で探して」
杜真子が馬小跳に、つっけんどんな声でそう言っていた。それを聞いて、馬小跳が不機嫌そうな声で
「こんなに広い公園のなかをどうやって捜すのだ。まったくおまえってやつは、可愛げのない、いとこだ。じらさないで、さっさと教えないか」
と言っていた。杜真子と馬小跳は、いとこだが、仲はあまりよくないので、会うとよく、どちらからともなく意地悪を言ったり、それが原因で、けんかをすることがある。
「可愛げのない、いとこで悪かったわね。わたしはあなたを困らせようと思って、そう言っているのではないわ。苦労して捜し出したときの喜びをあなたに与えようと思って、そう言っているだけなのに」
杜真子が、しらっとしたような声で、そのように答えていた。
「ヒントぐらい教えないか。手がかりもないような状態では捜す気がしない」
馬小跳がそう言った。
「わかったわ。笑い猫は洞窟のなかにいる」
杜真子がそう答えていた。
「洞窟がこの公園のなかにあるのか。おれはこれまで一度も見たことがないぞ」
馬小跳がそう言っていた。
「あるわ。確かにあるわ」
杜真子がそう答えていた。
「わかった。おまえの言うことを信じて、おれはこれから捜しに行ってくる」
馬小跳はそう言ってから遠ざかっていった。ぼくが住んでいる洞窟の入口の前には、かずらが、すだれのようにびっしりと垂れ下がっているので、馬小跳はすぐ目の前にぼくがいるのに気がつかないで行ってしまった。馬小跳の後ろ姿を、かずら越しに、ぼくはむなしそうに見ていた。杜真子がそのあと
「笑い猫、いる?」
と言って、洞窟の外から声をかけた。それを聞いて、ぼくは一声鳴いた。すると杜真子が、かずらをかき分けて、洞窟のなかに入ってきた。
「笑い猫、おなかが減ったでしょう?」
杜真子がそう言ってから、キャットフードをぼくの前に置いた。ぼくは、にっこり、うなずいてから、さっそく食べ始めた。
「馬小跳は本当に鈍感ね。笑い猫は、こんなに近くにいるのに気がつかないで、遠くへ捜しにいったわ」
杜真子がそう言った。ぼくはそれを聞いて、杜真子にもてあそばれている馬小跳が気の毒に思えた。
「馬小跳をもう少し、からかおうと思うから、絶対に鳴いてはだめよ」
杜真子はそう言ってから、洞窟のなかから外に出ていった。
それからしばらくしてから馬小跳が杜真子の近くに戻ってきた。
「洞窟らしいものは、どこにもなかったぞ。おまえは口から出まかせを言って、おれをからかっているのではないのか」
馬小跳が不機嫌そうな声でそう言っていた。
「そんなことはないわ。わたしが持ってきたキャットフードを洞窟のなかに置いてきたわ。洞窟のなかに笑い猫がいて、おいしそうに食べていた」
杜真子がそう答えていた。
「洞窟はここから遠いのか」
馬小跳が聞いていた。
「遠くではないわ。案外近いところにあるわ」
杜真子がそう答えていた。
「そうか、それなら、もっと近くを捜してみる」
馬小跳はそう答えてから、あたりを、きょろきょろと見まわしていた。ぼくが住んでいる洞窟のほうにも目をやっていたが、入口を覆うように、かずらがびっしりと垂れ下がっていたので、馬小跳は洞窟があることに全然気がつかないでいた。ぼくが一声鳴いたら、気がつくと思うが、杜真子がさっき、洞窟のなかに入ってきたときに、絶対に鳴かないように言っていたから、ぼくは杜真子を裏切らないために声を出さないで、じっとしていた。かずら越しに洞窟の外を見ていると、馬小跳はまたどこかへ行ってしまった。
(こんな感じでは、いつになったら、馬小跳はぼくを見つけることができるだろうか)
ぼくはそう思って、心中、穏やかではなかった。しばらくしてから馬小跳がまた戻ってきた。
「一体、洞窟はどこにあるのだ。くまなく捜したが、どこにもなかった」
馬小跳が、仏頂面(ぶっちょうづら)をしながらそう言った。それを聞いて杜真子が
「洞窟はここから十メートル以内のところにあるわ。洞窟の入口はかずらで覆われているので、外からは見えないけど、かずらを払いのけたら見えるわ」
と言っていた。それを聞いて馬小跳が辺りをもう一度見まわしてから、かずらが生い茂っているところへ行って、当て推量で、かずらを手で払い始めた。そしてついに、ぼくが住んでいる洞窟の入口を発見した。ぼくはさっと馬小跳のところへ駆け寄っていった。
「笑い猫、こんなところにいたのか」
馬小跳がびっくりしたような顔をしながらそう言って、ぼくを抱き上げてくれた。馬小跳はそのあと杜真子に
「この洞窟は、おまえが見つけたのか?」
と聞いていた。
「違うわ。笑い猫が自分で見つけたわ」
杜真子がそう答えていた。馬小跳がそのあと杜真子に
「なかはどうなっているのか?」
と聞いていた。
「奥行は五メートルほどあって、太陽の光が奥まで届いているから、とても明るいわ。なかは天然のクーラーのようになっていて夏でも涼しい」
杜真子がそう答えていた。
「そうか。それなら快適で暮らせそうだな」
馬小跳も、ぼくの新しい住居を気に入ってくれたようだったから、ぼくはうれしくなった。
「唐飛たちにも、ここのことを知らせよう」
馬小跳がそう言った。するとそれを聞いて、杜真子が
「唐飛たちには教えないで」
と言って、異を唱えた。
「どうしてなのだ?」
馬小跳は合点がいかないような顔をしながら杜真子に聞き返していた。
「わたしとあなただけしか知らない秘密の場所にしておきたいから」
杜真子が真顔でそう言った。馬小跳はそれを聞いて
「おれと唐飛たちは隠し事を何もしない腹心の友だちだから秘密にするわけにはいかない」
と言った。すると杜真子が
「ほかの人には話していない秘密を、あなたと二人だけで共有することで、あなたと心理的な距離が縮まって、親密な関係が築かれたらいいなと思っているから」
杜真子がそう言った。それを聞いて馬小跳はどう答えてよいかわからないでいた。
杜真子がそのあと馬小跳に
「笑い猫がせっかく見つけたこの洞窟が多くの子どもたちに知られるようになったら、思わぬ事態が生じないとも限らないわ。たくさんの子どもたちが興味本位で見にきて、そのために笑い猫がおちおち暮らせない場所になったら、笑い猫はここにも住めなくなって、またどこかへ出ていかなければならなくなるわ。そうなったらいやだから、この洞窟はわたしとあなただけの秘密の場所にしておきたいの」
と言った。それを聞いて馬小跳が
「おまえの気持ちはよくわかったよ。なるべく話さないようにするよ」
と答えていた。それからまもなく杜真子と馬小跳は、ぼくに
「来週また食べ物を持ってくるわ」
「元気に暮らせよ」
と言って、洞窟から出ていった。
今日は土曜日だから、杜真子がきっと、食べ物を持ってきてくれるだろうと思って、ぼくは朝から、そわそわしながら、洞窟の前に立って、翠湖公園の入口付近にある眼鏡橋のほうを見ていた。すると朝の十時ごろ、思っていたとおりに、杜真子が眼鏡橋を渡って、こちらのほうへ近づいてくるのが見えた。馬小跳もいた。杜真子と馬小跳は別の学校に通っているので、普段はめったに会わないが、今日は土曜日だから杜真子が馬小跳を誘って、いっしょに来ているのだと、ぼくは思った。杜真子も馬小跳も手に袋をさげていたので、ぼくに食べ物を持ってきてくれているのだと思って、うれしくてたまらなくなった。すぐに駆け寄っていこうかと思ったが、おなかが空いているのを見透かされたくないと思ったから、ぼくはあえて出ていかないで、洞窟のなかに隠れながら、じっと待つことにした。するとそれからまもなくしてから、洞窟のすぐ外から杜真子の声が聞こえてきた。
「笑い猫は、この公園のなかのどこかにいるから、自分で探して」
杜真子が馬小跳に、つっけんどんな声でそう言っていた。それを聞いて、馬小跳が不機嫌そうな声で
「こんなに広い公園のなかをどうやって捜すのだ。まったくおまえってやつは、可愛げのない、いとこだ。じらさないで、さっさと教えないか」
と言っていた。杜真子と馬小跳は、いとこだが、仲はあまりよくないので、会うとよく、どちらからともなく意地悪を言ったり、それが原因で、けんかをすることがある。
「可愛げのない、いとこで悪かったわね。わたしはあなたを困らせようと思って、そう言っているのではないわ。苦労して捜し出したときの喜びをあなたに与えようと思って、そう言っているだけなのに」
杜真子が、しらっとしたような声で、そのように答えていた。
「ヒントぐらい教えないか。手がかりもないような状態では捜す気がしない」
馬小跳がそう言った。
「わかったわ。笑い猫は洞窟のなかにいる」
杜真子がそう答えていた。
「洞窟がこの公園のなかにあるのか。おれはこれまで一度も見たことがないぞ」
馬小跳がそう言っていた。
「あるわ。確かにあるわ」
杜真子がそう答えていた。
「わかった。おまえの言うことを信じて、おれはこれから捜しに行ってくる」
馬小跳はそう言ってから遠ざかっていった。ぼくが住んでいる洞窟の入口の前には、かずらが、すだれのようにびっしりと垂れ下がっているので、馬小跳はすぐ目の前にぼくがいるのに気がつかないで行ってしまった。馬小跳の後ろ姿を、かずら越しに、ぼくはむなしそうに見ていた。杜真子がそのあと
「笑い猫、いる?」
と言って、洞窟の外から声をかけた。それを聞いて、ぼくは一声鳴いた。すると杜真子が、かずらをかき分けて、洞窟のなかに入ってきた。
「笑い猫、おなかが減ったでしょう?」
杜真子がそう言ってから、キャットフードをぼくの前に置いた。ぼくは、にっこり、うなずいてから、さっそく食べ始めた。
「馬小跳は本当に鈍感ね。笑い猫は、こんなに近くにいるのに気がつかないで、遠くへ捜しにいったわ」
杜真子がそう言った。ぼくはそれを聞いて、杜真子にもてあそばれている馬小跳が気の毒に思えた。
「馬小跳をもう少し、からかおうと思うから、絶対に鳴いてはだめよ」
杜真子はそう言ってから、洞窟のなかから外に出ていった。
それからしばらくしてから馬小跳が杜真子の近くに戻ってきた。
「洞窟らしいものは、どこにもなかったぞ。おまえは口から出まかせを言って、おれをからかっているのではないのか」
馬小跳が不機嫌そうな声でそう言っていた。
「そんなことはないわ。わたしが持ってきたキャットフードを洞窟のなかに置いてきたわ。洞窟のなかに笑い猫がいて、おいしそうに食べていた」
杜真子がそう答えていた。
「洞窟はここから遠いのか」
馬小跳が聞いていた。
「遠くではないわ。案外近いところにあるわ」
杜真子がそう答えていた。
「そうか、それなら、もっと近くを捜してみる」
馬小跳はそう答えてから、あたりを、きょろきょろと見まわしていた。ぼくが住んでいる洞窟のほうにも目をやっていたが、入口を覆うように、かずらがびっしりと垂れ下がっていたので、馬小跳は洞窟があることに全然気がつかないでいた。ぼくが一声鳴いたら、気がつくと思うが、杜真子がさっき、洞窟のなかに入ってきたときに、絶対に鳴かないように言っていたから、ぼくは杜真子を裏切らないために声を出さないで、じっとしていた。かずら越しに洞窟の外を見ていると、馬小跳はまたどこかへ行ってしまった。
(こんな感じでは、いつになったら、馬小跳はぼくを見つけることができるだろうか)
ぼくはそう思って、心中、穏やかではなかった。しばらくしてから馬小跳がまた戻ってきた。
「一体、洞窟はどこにあるのだ。くまなく捜したが、どこにもなかった」
馬小跳が、仏頂面(ぶっちょうづら)をしながらそう言った。それを聞いて杜真子が
「洞窟はここから十メートル以内のところにあるわ。洞窟の入口はかずらで覆われているので、外からは見えないけど、かずらを払いのけたら見えるわ」
と言っていた。それを聞いて馬小跳が辺りをもう一度見まわしてから、かずらが生い茂っているところへ行って、当て推量で、かずらを手で払い始めた。そしてついに、ぼくが住んでいる洞窟の入口を発見した。ぼくはさっと馬小跳のところへ駆け寄っていった。
「笑い猫、こんなところにいたのか」
馬小跳がびっくりしたような顔をしながらそう言って、ぼくを抱き上げてくれた。馬小跳はそのあと杜真子に
「この洞窟は、おまえが見つけたのか?」
と聞いていた。
「違うわ。笑い猫が自分で見つけたわ」
杜真子がそう答えていた。馬小跳がそのあと杜真子に
「なかはどうなっているのか?」
と聞いていた。
「奥行は五メートルほどあって、太陽の光が奥まで届いているから、とても明るいわ。なかは天然のクーラーのようになっていて夏でも涼しい」
杜真子がそう答えていた。
「そうか。それなら快適で暮らせそうだな」
馬小跳も、ぼくの新しい住居を気に入ってくれたようだったから、ぼくはうれしくなった。
「唐飛たちにも、ここのことを知らせよう」
馬小跳がそう言った。するとそれを聞いて、杜真子が
「唐飛たちには教えないで」
と言って、異を唱えた。
「どうしてなのだ?」
馬小跳は合点がいかないような顔をしながら杜真子に聞き返していた。
「わたしとあなただけしか知らない秘密の場所にしておきたいから」
杜真子が真顔でそう言った。馬小跳はそれを聞いて
「おれと唐飛たちは隠し事を何もしない腹心の友だちだから秘密にするわけにはいかない」
と言った。すると杜真子が
「ほかの人には話していない秘密を、あなたと二人だけで共有することで、あなたと心理的な距離が縮まって、親密な関係が築かれたらいいなと思っているから」
杜真子がそう言った。それを聞いて馬小跳はどう答えてよいかわからないでいた。
杜真子がそのあと馬小跳に
「笑い猫がせっかく見つけたこの洞窟が多くの子どもたちに知られるようになったら、思わぬ事態が生じないとも限らないわ。たくさんの子どもたちが興味本位で見にきて、そのために笑い猫がおちおち暮らせない場所になったら、笑い猫はここにも住めなくなって、またどこかへ出ていかなければならなくなるわ。そうなったらいやだから、この洞窟はわたしとあなただけの秘密の場所にしておきたいの」
と言った。それを聞いて馬小跳が
「おまえの気持ちはよくわかったよ。なるべく話さないようにするよ」
と答えていた。それからまもなく杜真子と馬小跳は、ぼくに
「来週また食べ物を持ってくるわ」
「元気に暮らせよ」
と言って、洞窟から出ていった。

