天気……昨日の大雨はすっかりあがって、今日はとてもよい天気になった。地面のところどころに水たまりがまだ残っていたが、雨に洗われた木の葉や草花は、柔らかな緑色に輝いていて、清新な朝の空気のなかで、とてもみずみずしく見えた。
馬小跳の部屋のなかに閉じ込められていたモンキーは、夜遅くまでずっと起きていた。夜の十時ごろ、馬小跳が寝たのを見て、ぼくはモンキーに
「もう、そろそろ、おまえも寝なさい」
と言った。しかしモンキーは、なかなか寝ようとはしなかった。
「せっかく縁があって、このうちに来たのだから、ぼくはこのうちのことを、いろいろと知りたい」
モンキーがそう言った。
「お父さんとお母さんに見つかったら大変だから、おまえはこの部屋から出るわけにはいかない」
ぼくはモンキーにそう言った。するとモンキーが
「二人が寝てから、こっそりと案内して」
と言った。それを聞いて、ぼくは仕方なく、馬小跳の部屋のかぎをそっとはずしてから、部屋の外の様子を見た。すると真っ暗だったから、お父さんもお母さんもすでに寝ていることがわかった。
深夜の一時ごろ、ぼくはモンキーを連れて、馬小跳の部屋から、そっと抜け出した。ぼくもモンキーも暗闇のなかでも目が見えるから、電気がついていなくても何も問題はなかった。ぼくはまず最初にモンキーを、お父さんとお母さんの寝室の前まで連れていった。
「馬小跳のお父さんとお母さんは、今、この部屋のなかで寝ている」
ぼくはモンキーにそう言った。するとモンキーが、けげんそうな顔をしながら
「ぼくたちサルはいつも、家族みんなが同じところで寝るのに、人はどうして、親と子どもは別々の部屋で寝るの?」
と聞いた。
「人とサルは違うよ」
ぼくは、そっけなく、そう答えた。ぼくはそのあとモンキーを書斎に連れていった。書斎のなかには本棚があって、本がたくさん並べられていた。
「ここは馬小跳のお父さんとお母さんが本を読んだり、執筆をしたり、調べものをする部屋だよ」
ぼくはモンキーにそう話した。するとモンキーが
「ぼくたちサルは本を読んだり、執筆をしたり、調べものはしないよ」
と答えた。ぼくはそれを聞いて
「人はサルよりも賢いから、そういうことをするのだ」
と答えた。するとサルが
「人はサルより進化した動物だと聞いているけど、ぼくが本を読んだり、執筆をしたり、調べものをしたら、人と同じように賢くなれるかなあ」
と真顔で言った。ぼくはそれを聞いて、思わず、おかしくなった。ぼくはそのあとモンキーを台所に連れていった。ガスコンロを見ながら、ぼくはモンキーに
「人は料理をするとき、これを使って煮たり炊いたりするのだよ。ここについている、このつまみを回したら、青い炎が出る」
と教えてやった。するとモンキーが興味深そうな目で見ていた。
「ぼくたちサルは、木の上から取ってきた果実をそのまま食べるので、料理はしない」
モンキーがそう言った。ぼくはそのあと冷蔵庫のことを教えてやった。
「このなかに肉や魚や野菜を入れておくと悪くならない」
ぼくはモンキーにそう言った。するとモンキーが、けげんそうな顔をしながら
「どうして悪くならないの?」
と聞いた。
「このなかは冷たいからだよ」
ぼくはそう答えた。するとモンキーはまだ合点がいかないような顔をしていた。
「外は暑いのに、どうして、このなかは冷たいの?」
と、また聞いた。
「電気で冷たくするのだ」
ぼくはそう答えた。
「電気を入れたら熱が出て、熱くなるのではないの?」
モンキーがそう言って不可解な顔をしていた。
モンキーの質問攻めにあって、ぼくは少々、閉口していた。口で説明するよりも実際に冷蔵庫のなかを見せたほうが理解が早まるのではないかと思ったので、ぼくはモンキーに手伝ってもらって冷蔵庫のとびらを力いっぱい押した。すると、とびらが開いて、その瞬間、冷蔵庫のなかから冷気がわっと吹き出してきた。それを見てモンキーが目を丸くしながら
「本当だ。たしかに、このなかは冷たくて気持ちがよさそうだ」
と答えた。モンキーがそのあと冷蔵庫のなかに入っていこうとしたので、ぼくはびっくりしてモンキーの体を外に押し出して冷蔵庫のとびらを、ぱたんと閉めた。ぼくは厳しい目でモンキーを見ながら
「冷蔵庫はものを入れるところであって動物が入るところではない」
と言って注意した。台所のなかにはガスコンロや冷蔵庫のほかにも、水道の蛇口や給湯器や電子レンジなどがあったので、ぼくは一つひとつ説明してやった。ぼくの説明を聞きながらモンキーは人が使っているものにだんだん興味を抱き始めているように、ぼくには思えた。台所にある道具や器具の説明を終えてから、ぼくはモンキーに
「部屋のなかの説明は、ひととおり終えたから、そろそろ馬小跳の部屋に帰って寝よう」
と誘い水をかけた。するとモンキーが
「まだ見ていない部屋が二つある」
と言って、首を横に振った。バスルームとトイレだった。ぼくはモンキーをまずバスルームに連れていった。
「ここは人が体を洗うところだ」
と、ぼくはモンキーに言った。するとモンキーが
「ぼくたちは川や池のなかで体を洗うよ」
と答えた。ぼくはそれを聞いて
「人は家のなかで体を洗う」
と言った。そのあとぼくはモンキーをトイレに連れていった。
「ここは人がおしっこやウンチをするところだ」
と、ぼくはモンキーに言った。するとモンキーが
「ぼくたちは山のなかでおしっこやウンチをするよ」
と言った。ぼくはそれを聞いて
「人は家のなかでおしっこやウンチをする」
と答えた。モンキーに付きあって、家のなかを、あちこちと案内しているうちに、ぼくは眠くてたまらなくなってきた。モンキーはまだ眠くなさそうだったが、ぼくはモンキーを無理やり馬小跳の部屋に連れ戻してから、部屋のかぎをかけて、部屋のなかで、しばらく、まどろんでいた。すると明け方近く、台所のほうから
「キャー」
という悲鳴が聞こえてきたので、ぼくはびっくりして目を覚ました。すると馬小跳の部屋の入口が開いていて、部屋のなかにサルがいないことがわかった。モンキーが、かぎの開け方を覚えて、部屋の外に出たのに違いないと、ぼくは思った。悲鳴をあげていたのは、馬小跳のお母さんだった。きっとモンキーがお母さんに見つかったのだと思った。馬小跳もお母さんの声にびっくりして飛び起きて、声がした台所のほうへかけていっていた。馬小跳のお父さんも、ぎっくりして、色を失いながら寝室を飛び出して台所のほうへ一目散に走り込んでいた。ぼくも馬小跳の部屋を出て台所へ走っていった。すると馬小跳のお母さんが冷蔵庫の前に立ちすくんでいて、わなわなと震えているのが見えた。冷蔵庫のとびらが開いていて、とびらのなかから、茶色いしっぽのようなものが見えた。
(モンキーだ!)
ぼくはそう思った。動物が入るところではないと、あれほど注意していたのに、聞き入れずに勝手に冷蔵庫のとぴらを開けて、なかに入ったのだ。ぼくはそう思うと、身勝手なモンキーのふるまいに強い憤りを覚えていた。
馬小跳の部屋のなかに閉じ込められていたモンキーは、夜遅くまでずっと起きていた。夜の十時ごろ、馬小跳が寝たのを見て、ぼくはモンキーに
「もう、そろそろ、おまえも寝なさい」
と言った。しかしモンキーは、なかなか寝ようとはしなかった。
「せっかく縁があって、このうちに来たのだから、ぼくはこのうちのことを、いろいろと知りたい」
モンキーがそう言った。
「お父さんとお母さんに見つかったら大変だから、おまえはこの部屋から出るわけにはいかない」
ぼくはモンキーにそう言った。するとモンキーが
「二人が寝てから、こっそりと案内して」
と言った。それを聞いて、ぼくは仕方なく、馬小跳の部屋のかぎをそっとはずしてから、部屋の外の様子を見た。すると真っ暗だったから、お父さんもお母さんもすでに寝ていることがわかった。
深夜の一時ごろ、ぼくはモンキーを連れて、馬小跳の部屋から、そっと抜け出した。ぼくもモンキーも暗闇のなかでも目が見えるから、電気がついていなくても何も問題はなかった。ぼくはまず最初にモンキーを、お父さんとお母さんの寝室の前まで連れていった。
「馬小跳のお父さんとお母さんは、今、この部屋のなかで寝ている」
ぼくはモンキーにそう言った。するとモンキーが、けげんそうな顔をしながら
「ぼくたちサルはいつも、家族みんなが同じところで寝るのに、人はどうして、親と子どもは別々の部屋で寝るの?」
と聞いた。
「人とサルは違うよ」
ぼくは、そっけなく、そう答えた。ぼくはそのあとモンキーを書斎に連れていった。書斎のなかには本棚があって、本がたくさん並べられていた。
「ここは馬小跳のお父さんとお母さんが本を読んだり、執筆をしたり、調べものをする部屋だよ」
ぼくはモンキーにそう話した。するとモンキーが
「ぼくたちサルは本を読んだり、執筆をしたり、調べものはしないよ」
と答えた。ぼくはそれを聞いて
「人はサルよりも賢いから、そういうことをするのだ」
と答えた。するとサルが
「人はサルより進化した動物だと聞いているけど、ぼくが本を読んだり、執筆をしたり、調べものをしたら、人と同じように賢くなれるかなあ」
と真顔で言った。ぼくはそれを聞いて、思わず、おかしくなった。ぼくはそのあとモンキーを台所に連れていった。ガスコンロを見ながら、ぼくはモンキーに
「人は料理をするとき、これを使って煮たり炊いたりするのだよ。ここについている、このつまみを回したら、青い炎が出る」
と教えてやった。するとモンキーが興味深そうな目で見ていた。
「ぼくたちサルは、木の上から取ってきた果実をそのまま食べるので、料理はしない」
モンキーがそう言った。ぼくはそのあと冷蔵庫のことを教えてやった。
「このなかに肉や魚や野菜を入れておくと悪くならない」
ぼくはモンキーにそう言った。するとモンキーが、けげんそうな顔をしながら
「どうして悪くならないの?」
と聞いた。
「このなかは冷たいからだよ」
ぼくはそう答えた。するとモンキーはまだ合点がいかないような顔をしていた。
「外は暑いのに、どうして、このなかは冷たいの?」
と、また聞いた。
「電気で冷たくするのだ」
ぼくはそう答えた。
「電気を入れたら熱が出て、熱くなるのではないの?」
モンキーがそう言って不可解な顔をしていた。
モンキーの質問攻めにあって、ぼくは少々、閉口していた。口で説明するよりも実際に冷蔵庫のなかを見せたほうが理解が早まるのではないかと思ったので、ぼくはモンキーに手伝ってもらって冷蔵庫のとびらを力いっぱい押した。すると、とびらが開いて、その瞬間、冷蔵庫のなかから冷気がわっと吹き出してきた。それを見てモンキーが目を丸くしながら
「本当だ。たしかに、このなかは冷たくて気持ちがよさそうだ」
と答えた。モンキーがそのあと冷蔵庫のなかに入っていこうとしたので、ぼくはびっくりしてモンキーの体を外に押し出して冷蔵庫のとびらを、ぱたんと閉めた。ぼくは厳しい目でモンキーを見ながら
「冷蔵庫はものを入れるところであって動物が入るところではない」
と言って注意した。台所のなかにはガスコンロや冷蔵庫のほかにも、水道の蛇口や給湯器や電子レンジなどがあったので、ぼくは一つひとつ説明してやった。ぼくの説明を聞きながらモンキーは人が使っているものにだんだん興味を抱き始めているように、ぼくには思えた。台所にある道具や器具の説明を終えてから、ぼくはモンキーに
「部屋のなかの説明は、ひととおり終えたから、そろそろ馬小跳の部屋に帰って寝よう」
と誘い水をかけた。するとモンキーが
「まだ見ていない部屋が二つある」
と言って、首を横に振った。バスルームとトイレだった。ぼくはモンキーをまずバスルームに連れていった。
「ここは人が体を洗うところだ」
と、ぼくはモンキーに言った。するとモンキーが
「ぼくたちは川や池のなかで体を洗うよ」
と答えた。ぼくはそれを聞いて
「人は家のなかで体を洗う」
と言った。そのあとぼくはモンキーをトイレに連れていった。
「ここは人がおしっこやウンチをするところだ」
と、ぼくはモンキーに言った。するとモンキーが
「ぼくたちは山のなかでおしっこやウンチをするよ」
と言った。ぼくはそれを聞いて
「人は家のなかでおしっこやウンチをする」
と答えた。モンキーに付きあって、家のなかを、あちこちと案内しているうちに、ぼくは眠くてたまらなくなってきた。モンキーはまだ眠くなさそうだったが、ぼくはモンキーを無理やり馬小跳の部屋に連れ戻してから、部屋のかぎをかけて、部屋のなかで、しばらく、まどろんでいた。すると明け方近く、台所のほうから
「キャー」
という悲鳴が聞こえてきたので、ぼくはびっくりして目を覚ました。すると馬小跳の部屋の入口が開いていて、部屋のなかにサルがいないことがわかった。モンキーが、かぎの開け方を覚えて、部屋の外に出たのに違いないと、ぼくは思った。悲鳴をあげていたのは、馬小跳のお母さんだった。きっとモンキーがお母さんに見つかったのだと思った。馬小跳もお母さんの声にびっくりして飛び起きて、声がした台所のほうへかけていっていた。馬小跳のお父さんも、ぎっくりして、色を失いながら寝室を飛び出して台所のほうへ一目散に走り込んでいた。ぼくも馬小跳の部屋を出て台所へ走っていった。すると馬小跳のお母さんが冷蔵庫の前に立ちすくんでいて、わなわなと震えているのが見えた。冷蔵庫のとびらが開いていて、とびらのなかから、茶色いしっぽのようなものが見えた。
(モンキーだ!)
ぼくはそう思った。動物が入るところではないと、あれほど注意していたのに、聞き入れずに勝手に冷蔵庫のとぴらを開けて、なかに入ったのだ。ぼくはそう思うと、身勝手なモンキーのふるまいに強い憤りを覚えていた。

