天気……午前中は空がどんよりと曇っていて、とても蒸し暑かった。お昼を過ぎたころ、雷雨に見舞われて、からからに乾いていた大地に、うるおいがもたらされた。雷雨が通り過ぎたあと、天気は回復して、空にきれいな虹がかかっていた。
朝、目が覚めたとき、とても蒸し暑く感じた。ぼくは風に当たろうと思ってすぐにうちを出て、湖畔に沿ってしばらく歩いていた。空はどんよりと曇っていて、遠くから雷が鳴っている音がかすかに聞こえてきた。
(翠湖公園のなかにも雷雨が降ってくるに違いない)
空模様を眺めながら、ぼくはそう思った。ここ数日、暑い日が続いていて、大地が、からからに乾いていたから、公園のなかの草木に生気を与えるための恵みの雨になればいいなと思ったりもしていた。
湖畔に沿ってしばらく歩いていると、向こうから地包天がやってくるのが見えた。
「笑い猫のおにいさん、おはよう。今日は蒸し暑いね。雨が降るかもしれないわ」
地包天がそう言った。
「そうだね。空が曇っているし、雷も鳴っているから、ひと雨きそうだ」
ぼくは地包天にそう答えた。
「雨が降っても降らなくても、わたしは頑張るわ」
地包天がそう言った。最近、地包天と会うと、地包天の口から頑張るという言葉がよく出てくるようになった。逆立ちができるように頑張るという意味と、ダイエットを頑張るという意味が込められていることを、ぼくは知っていた。
「笑い猫のおにいさん、わたし、だいぶやせたでしょう?」
地包天がそう聞いた。ぼくはそれを聞いて、地包天の体を、頭の先から、しっぽの先まで、しげしげと眺めた。
「そうかなあ。以前とあまり変わっていないように見えるけどなあ」
ぼくは地包天にそう言った。すると地包天が
「そんなことはないはずよ。ご飯を最近、控えめに食べているから、骨と皮が透けて見えるほど、やせてきたわ」
と言った。
「そうかなあ。そこまでやせているようには見えないけどなあ」
ぼくはもう一度、地包天の体をじっと見ながら、そう言った。
「わたしはダイエットに成功したわ。でもご飯を残すようになったから、飼い主さんから叱られるようになった」
地包天がそう言った。それを聞いて、ぼくはびっくりした。地包天の飼い主さんのことを、ぼくは知っているが、地包天を𠮟るような人ではないからだ。
「あの人が本当に、おまえを叱ったのか」
ぼくは地包天に聞き返した。すると地包天がうなずいた。
「叱ると言ってもたたいたり、蹴ったりするようなことはしないけど、怖い顔をして何かぶつぶつ言っていた」
地包天がそう言った。
「そうか。今は暑い時季だから、たくさん食べて体重を維持することが健康によいと思って心配していたのかもしれないな」
ぼくはそう言った。
「分かるわ。でも逆立ちがうまくできるようになるためには体重を減らさなければならないから」
地包天がそう言った。地包天はどうしたらよいか分からないで、ジレンマに陥っているように見えた。
「おまえの気持ちも分からないことはないよ。でも体重が減り過ぎて健康を害したら、逆立ちどころではなくなるよ」
ぼくは地包天にそう言った。
「分かっているわ」
地包天がそう答えた。地包天がそのあと
「笑い猫のおにいさん、見てくれる。ほんの少しだけど逆立ちができるようになったわ」
地包天がそう言ったので
「本当か?」
ぼくはびっくりして聞き返した。すると地包天がうなずいた。
「ここで逆立ちをして見せるわ」
地包天はそう言ってから、前足を地面について逆立ちを始めた。五秒ほど逆さまに立っているだけだったが、これまでまったくできなかった逆立ちができるようになっていたことを知って、ぼくは感動していた。
「たいしたものではないか。ぼくは一秒も逆立ちができないのに、おまえは五秒も逆立ちができるようになった。不器用で力が弱いおまえが、こんなにはやく逆立ちができるようになるとは、ぼくは思ってもいなかったよ」
ぼくは地包天にそう言った。それを聞いて地包天は、はにかんだような顔をしていた。
「ありがとう。体重が減ったおかげで逆立ちができるようになったわ」
地包天がそう答えた。
「そうか。ダイエットの効果か」
ぼくがそう言うと地包天がうなずいた。
「もっと練習を重ねて、一分ぐらいは逆立ちができるようになりたいわ。そうすればショーにも出られるようになると思うから」
地包天がそう言った。
「逆立ちをするだけでは見ていてもあまり面白くないから、歩くこともできるようにならなければ、ショーに出られないよ。先はまだ長い」
ぼくは地包天にそう言って発破を掛けた。
「分かったわ。頑張るわ」
地包天がそう答えた。
そのとき、どこからか歌声が聞こえてきた。ぼくは耳を澄まして歌声がどこから聞こえてくるのかを確かめようとした。梅園のほうから聞こえていた。
♪我家住在黄土高坡
大风从坡上刮过
不管是西北风还是南风
都是我的歌我的歌
……
聞き覚えのある歌と声だった。
(あっ、あの声はオウムの声だ。オウムがよく歌っている『黄土高坡』だ)
ぼくはそう思った。ここ数日、ずっと会えなくて気にかかっていたオウムの歌声を久しぶりに聞くことができたので、ぼくの心は動いて、じっとしていられなくなった。オウムが元気でいることが分かったので、うれしく思った。しかし楠林ではなくて梅園のほうから聞こえてくることに、ぼくはけげんに思った。オウムが生活をともにしているスイカ―は楠林のなかにいるはずなのに、どうして歌声が梅園のほうから聞こえてくるのだろうと思ったからだ。オウムの歌声に地包天も気がついたので、ぼくはそれからまもなく地包天といっしょにオウムの歌声に誘われるようにして梅園のほうへ行った。
梅園の近くにあるサーカス小屋の横に梅の老木があって、その老木の枝に鳥かごがかけられていて、オウムがそのなかで歌っているのが見えた。
(ああ、やっぱり捕まっていたか)
ぼくはそう思って、とても悲しくなった。ぼくと地包天は鳥かごがかけられている木の枝のすぐ下まで行った。ぼくと地包天に気がついて、オウムはびっくりして歌うのをやめた。ぼくはオウムに鳥の言葉で話しかけた。
「こんなところにいましたか。ぼくはずっと心配していました」
それを聞いてオウムが
「捕らえられないように気をつけていたが、睡眠薬が入っているえさをうっかり食べて、気を失っている間に捕らえられてしまった」
と、悲しそうな声で答えていた。
「そうでしたか。それはお気の毒に。今すぐ助けてあげたいところですが、ぼくにはどうすることもできません」
ぼくはそう答えるしかなかった。
「いいよ、気にしなくて。こうやって『黄土高坡』を大きな声で歌っていたら、スイカ―が気がついて、ぼくを助けに来てくれるかもしれないから」
オウムがそう言った。
「そうですか。それで歌っていたのですか」
ぼくはオウムにそう言った。
オウムがうなずいた。
「きっと気がついて助けに来てくれるよ」
ぼくはオウムにそう言って、オウムを励ました。
それからまもなくサーカス小屋のなかから人が出てくる気配を感じたので、ぼくと地包天は急いで隣にある梅の木のかげに身を隠した。
サーカス小屋のなかから出てきたのは、副団長とオペラ歌手だった。オウムが閉じ込められている鳥かごがつりさげられている木の下までくると、副団長がオペラ歌手に
「オウムが歌っている『黄土高坡』は俗っぽい歌い方だから、美しさが少しも感じられない。おまえはオペラの歌い方を勉強しているから、品格にあふれた歌い方ができる。模範的な歌い方をオウムに教えてやりなさい」
と言っていた。それを聞いてオペラ歌手が
「ぼくはプロの歌い手だから、オウムなんかに教えたくはありません。ぼくにもプライドがありますから」
と言っていた。それを聞いて副団長が
「つべこべ言わないで、オウムに教えてやれよ。このサーカス団がいかに高尚なサーカス団であるかを多くの人に知らせたいと思っているから」
と言っていた。それを聞いてオペラ歌手は仕方なく、オペラの歌い方で『黄土高坡』を歌い始めた。しかしオウムは黙って聞いているだけで、真似をして歌おうとはしなかった。五分たっても十分たってもオウムは、うんともすんとも声を出さなかったので、副団長とオペラ歌手は、しびれを切らして再びサーカス小屋のなかに入っていった。
それからまもなく、ぼくと地包天はサーカス小屋の近くを離れて、楠林のほうへ向かった。オウムがサーカス小屋の近くにある木の枝につるされていることをスイカ―に知らせなければと思ったからだ。ぼくには人の言葉は話せないから、口で知らせることはできないが、オウムが『黄土高坡』を歌って、その声が楠林のなかまで届いたら、大きな声を出して、スイカ―の注意を喚起しようと思っていた。『黄土高坡』はスイカ―が教えた歌だから、声が届いたらスイカ―はきっと反応してすぐに声のあとを追っていくだろうと、ぼくは思っていた。ぼくと地包天が楠林の近くまで来たとき、オウムが歌う『黄土高坡』が風に乗って再び聞こえてきた。スイカ―の耳にも届いたらしくて、楠の木のうろのなかにいたスイカ―が、うろから出て、声がしているほうをじっと見ていた。スイカ―はそれからまもなく楠林を出て、オウムの声がしている梅園のほうへ向かっていた。ぼくと地包天もあとからついていった。サーカス小屋の近くにある梅の老木に鳥かごがかけられていて、そのなかにオウムがいるのを発見したスイカ―は、オウムがかわいそうに思って涙をぽろぽろと流していた。スイカ―はそのあと木に登って、鳥かごを開けてオウムを逃がそうとしていた。ところが、かごを開ける前に、サーカス小屋のなかから出てきた団員に見つかってしまい、逃がしそこなっていた。スイカ―は団員に怒られて木から下りてきて、後ろ髪を引かれるような思いで、楠林のなかへ、すごすごと帰っていった。
朝、目が覚めたとき、とても蒸し暑く感じた。ぼくは風に当たろうと思ってすぐにうちを出て、湖畔に沿ってしばらく歩いていた。空はどんよりと曇っていて、遠くから雷が鳴っている音がかすかに聞こえてきた。
(翠湖公園のなかにも雷雨が降ってくるに違いない)
空模様を眺めながら、ぼくはそう思った。ここ数日、暑い日が続いていて、大地が、からからに乾いていたから、公園のなかの草木に生気を与えるための恵みの雨になればいいなと思ったりもしていた。
湖畔に沿ってしばらく歩いていると、向こうから地包天がやってくるのが見えた。
「笑い猫のおにいさん、おはよう。今日は蒸し暑いね。雨が降るかもしれないわ」
地包天がそう言った。
「そうだね。空が曇っているし、雷も鳴っているから、ひと雨きそうだ」
ぼくは地包天にそう答えた。
「雨が降っても降らなくても、わたしは頑張るわ」
地包天がそう言った。最近、地包天と会うと、地包天の口から頑張るという言葉がよく出てくるようになった。逆立ちができるように頑張るという意味と、ダイエットを頑張るという意味が込められていることを、ぼくは知っていた。
「笑い猫のおにいさん、わたし、だいぶやせたでしょう?」
地包天がそう聞いた。ぼくはそれを聞いて、地包天の体を、頭の先から、しっぽの先まで、しげしげと眺めた。
「そうかなあ。以前とあまり変わっていないように見えるけどなあ」
ぼくは地包天にそう言った。すると地包天が
「そんなことはないはずよ。ご飯を最近、控えめに食べているから、骨と皮が透けて見えるほど、やせてきたわ」
と言った。
「そうかなあ。そこまでやせているようには見えないけどなあ」
ぼくはもう一度、地包天の体をじっと見ながら、そう言った。
「わたしはダイエットに成功したわ。でもご飯を残すようになったから、飼い主さんから叱られるようになった」
地包天がそう言った。それを聞いて、ぼくはびっくりした。地包天の飼い主さんのことを、ぼくは知っているが、地包天を𠮟るような人ではないからだ。
「あの人が本当に、おまえを叱ったのか」
ぼくは地包天に聞き返した。すると地包天がうなずいた。
「叱ると言ってもたたいたり、蹴ったりするようなことはしないけど、怖い顔をして何かぶつぶつ言っていた」
地包天がそう言った。
「そうか。今は暑い時季だから、たくさん食べて体重を維持することが健康によいと思って心配していたのかもしれないな」
ぼくはそう言った。
「分かるわ。でも逆立ちがうまくできるようになるためには体重を減らさなければならないから」
地包天がそう言った。地包天はどうしたらよいか分からないで、ジレンマに陥っているように見えた。
「おまえの気持ちも分からないことはないよ。でも体重が減り過ぎて健康を害したら、逆立ちどころではなくなるよ」
ぼくは地包天にそう言った。
「分かっているわ」
地包天がそう答えた。地包天がそのあと
「笑い猫のおにいさん、見てくれる。ほんの少しだけど逆立ちができるようになったわ」
地包天がそう言ったので
「本当か?」
ぼくはびっくりして聞き返した。すると地包天がうなずいた。
「ここで逆立ちをして見せるわ」
地包天はそう言ってから、前足を地面について逆立ちを始めた。五秒ほど逆さまに立っているだけだったが、これまでまったくできなかった逆立ちができるようになっていたことを知って、ぼくは感動していた。
「たいしたものではないか。ぼくは一秒も逆立ちができないのに、おまえは五秒も逆立ちができるようになった。不器用で力が弱いおまえが、こんなにはやく逆立ちができるようになるとは、ぼくは思ってもいなかったよ」
ぼくは地包天にそう言った。それを聞いて地包天は、はにかんだような顔をしていた。
「ありがとう。体重が減ったおかげで逆立ちができるようになったわ」
地包天がそう答えた。
「そうか。ダイエットの効果か」
ぼくがそう言うと地包天がうなずいた。
「もっと練習を重ねて、一分ぐらいは逆立ちができるようになりたいわ。そうすればショーにも出られるようになると思うから」
地包天がそう言った。
「逆立ちをするだけでは見ていてもあまり面白くないから、歩くこともできるようにならなければ、ショーに出られないよ。先はまだ長い」
ぼくは地包天にそう言って発破を掛けた。
「分かったわ。頑張るわ」
地包天がそう答えた。
そのとき、どこからか歌声が聞こえてきた。ぼくは耳を澄まして歌声がどこから聞こえてくるのかを確かめようとした。梅園のほうから聞こえていた。
♪我家住在黄土高坡
大风从坡上刮过
不管是西北风还是南风
都是我的歌我的歌
……
聞き覚えのある歌と声だった。
(あっ、あの声はオウムの声だ。オウムがよく歌っている『黄土高坡』だ)
ぼくはそう思った。ここ数日、ずっと会えなくて気にかかっていたオウムの歌声を久しぶりに聞くことができたので、ぼくの心は動いて、じっとしていられなくなった。オウムが元気でいることが分かったので、うれしく思った。しかし楠林ではなくて梅園のほうから聞こえてくることに、ぼくはけげんに思った。オウムが生活をともにしているスイカ―は楠林のなかにいるはずなのに、どうして歌声が梅園のほうから聞こえてくるのだろうと思ったからだ。オウムの歌声に地包天も気がついたので、ぼくはそれからまもなく地包天といっしょにオウムの歌声に誘われるようにして梅園のほうへ行った。
梅園の近くにあるサーカス小屋の横に梅の老木があって、その老木の枝に鳥かごがかけられていて、オウムがそのなかで歌っているのが見えた。
(ああ、やっぱり捕まっていたか)
ぼくはそう思って、とても悲しくなった。ぼくと地包天は鳥かごがかけられている木の枝のすぐ下まで行った。ぼくと地包天に気がついて、オウムはびっくりして歌うのをやめた。ぼくはオウムに鳥の言葉で話しかけた。
「こんなところにいましたか。ぼくはずっと心配していました」
それを聞いてオウムが
「捕らえられないように気をつけていたが、睡眠薬が入っているえさをうっかり食べて、気を失っている間に捕らえられてしまった」
と、悲しそうな声で答えていた。
「そうでしたか。それはお気の毒に。今すぐ助けてあげたいところですが、ぼくにはどうすることもできません」
ぼくはそう答えるしかなかった。
「いいよ、気にしなくて。こうやって『黄土高坡』を大きな声で歌っていたら、スイカ―が気がついて、ぼくを助けに来てくれるかもしれないから」
オウムがそう言った。
「そうですか。それで歌っていたのですか」
ぼくはオウムにそう言った。
オウムがうなずいた。
「きっと気がついて助けに来てくれるよ」
ぼくはオウムにそう言って、オウムを励ました。
それからまもなくサーカス小屋のなかから人が出てくる気配を感じたので、ぼくと地包天は急いで隣にある梅の木のかげに身を隠した。
サーカス小屋のなかから出てきたのは、副団長とオペラ歌手だった。オウムが閉じ込められている鳥かごがつりさげられている木の下までくると、副団長がオペラ歌手に
「オウムが歌っている『黄土高坡』は俗っぽい歌い方だから、美しさが少しも感じられない。おまえはオペラの歌い方を勉強しているから、品格にあふれた歌い方ができる。模範的な歌い方をオウムに教えてやりなさい」
と言っていた。それを聞いてオペラ歌手が
「ぼくはプロの歌い手だから、オウムなんかに教えたくはありません。ぼくにもプライドがありますから」
と言っていた。それを聞いて副団長が
「つべこべ言わないで、オウムに教えてやれよ。このサーカス団がいかに高尚なサーカス団であるかを多くの人に知らせたいと思っているから」
と言っていた。それを聞いてオペラ歌手は仕方なく、オペラの歌い方で『黄土高坡』を歌い始めた。しかしオウムは黙って聞いているだけで、真似をして歌おうとはしなかった。五分たっても十分たってもオウムは、うんともすんとも声を出さなかったので、副団長とオペラ歌手は、しびれを切らして再びサーカス小屋のなかに入っていった。
それからまもなく、ぼくと地包天はサーカス小屋の近くを離れて、楠林のほうへ向かった。オウムがサーカス小屋の近くにある木の枝につるされていることをスイカ―に知らせなければと思ったからだ。ぼくには人の言葉は話せないから、口で知らせることはできないが、オウムが『黄土高坡』を歌って、その声が楠林のなかまで届いたら、大きな声を出して、スイカ―の注意を喚起しようと思っていた。『黄土高坡』はスイカ―が教えた歌だから、声が届いたらスイカ―はきっと反応してすぐに声のあとを追っていくだろうと、ぼくは思っていた。ぼくと地包天が楠林の近くまで来たとき、オウムが歌う『黄土高坡』が風に乗って再び聞こえてきた。スイカ―の耳にも届いたらしくて、楠の木のうろのなかにいたスイカ―が、うろから出て、声がしているほうをじっと見ていた。スイカ―はそれからまもなく楠林を出て、オウムの声がしている梅園のほうへ向かっていた。ぼくと地包天もあとからついていった。サーカス小屋の近くにある梅の老木に鳥かごがかけられていて、そのなかにオウムがいるのを発見したスイカ―は、オウムがかわいそうに思って涙をぽろぽろと流していた。スイカ―はそのあと木に登って、鳥かごを開けてオウムを逃がそうとしていた。ところが、かごを開ける前に、サーカス小屋のなかから出てきた団員に見つかってしまい、逃がしそこなっていた。スイカ―は団員に怒られて木から下りてきて、後ろ髪を引かれるような思いで、楠林のなかへ、すごすごと帰っていった。

