子どもに愛されるピエロ

天気……昨夜は雷をともなった激しい雨が降り、うちのなかにいても稲光が差し込んできたり、落雷の大きな音が鳴り響いて、なかなか寝つけなかった。今朝は雨もやんで、穏やかな夜明けを迎えることができた。

昨日、ぼくはうちへ帰るとすぐに子どもたちにスイカ―がいるところが分かったことや、翠湖公園のなかにある島に地下道を通っていけることを話した。すると子どもたちが異口同音に
「えっ、本当?」
言って聞き返してきた。ぼくはうなずいた。パントーがそのあと
「スイカ―はどこにいるの」
と聞いたので、
「郊外にある空き家に一人で住んでいる」
と、ぼくは話した。
「どうやって調べたの」
パントーが興味深そうな顔をしながら、そう聞いた。
「父さんの親友が調べてくれた」
ぼくはパントーにそう答えた。老いらくさんのことを、子どもたちはボールだとしか思っていないので、そう答えてお茶を濁すよりほかはなかった。
「地下道はどこにあるの」
今度はアーヤーが聞いた。
「楠林のなかにある」
ぼくはそう答えた。するとアーヤーが
「楠林のなかに地下道があることがどうやって分かったの」
と聞いた。
「たまたま見つけた」
ぼくはアーヤーにそう答えた。ぼくは今度もそう答えてお茶を濁した。
「スイカ―は、その地下道のことを知っているの」
今度はサンパオが聞いた。
「知っているよ。スイカ―も、地下道を通って島へ渡ったから」
ぼくはサンパオにそう答えた。それを聞いてサンパオが
「ぼくも島へ行ってみたい」
と言った。
アーヤーも目を輝かせながら
「わたしも行ってみたい」
と答えていた。
「これから、ぼくたちを、その地下道へ案内してくれませんか」
パントーがそう言った。
子どもたちが地下道に興味を抱いていることを知って、ぼくはすぐにでも連れていきたいと思った。子どもたちだけでなくて、親友の地包天もいっしょに連れていきたいと思ったので、ぼくは地包天を探しにいった。でもなかなか地包天に会えなかったので、一夜、明けて、今日の朝、子どもたちを連れて楠林のほうへ向かっていた。すると向こうから地包天がやってくるのが見えた。ぼくは急いで地包天のほうに駆け寄っていった。
「地包天、昨日はどこへ行っていたのだ。ずっと探していたけど会えなかった」
ぼくは仏頂面をしながら、そう言った。
「ごめんなさい。飼い主さんが旅行に連れていってくれたから、うちを離れていた」
地包天が申し訳なさそうな声でそう言った。
「そうだったのか。旅行は楽しかったか」
ぼくは地包天に聞いた。
「楽しかったわ。今まで行ったことがないところへ行って、そこに住んでいる犬とも話すことができたから」
地包天がそう答えた。
「そうか。それはよかったな」
ぼくはそう答えた。
「わたしを探していたそうだけど、何かあったの」
地包天が聞いた。
「スイカ―に会えた」
ぼくは地包天にそう言った。すると地包天がびっくりしたような顔をしながら
「えっ、本当に?」
と聞き返してきた。ぼくはうなずいた。
「どこにいたの?」
地包天が聞いた。
「郊外にある空き家で、ひっそりと暮らしていた」
ぼくは地包天にそう答えた。
「そうだったの。それで今、子どもたちを連れて、スイカ―のうちへ行っているの」
地包天がそう聞いた。ぼくは首を横に振った。
「楠林のなかへ行っている」
ぼくはそう答えた。それを聞いて、地包天がけげんそうな顔をしていた。
「楠林のなかにスイカ―はいないから、行ってもつまらないだけではないの」
地包天がそう言った。
「ぼくも昨日までは、そう思っていた。でも今は違う」
ぼくはそう答えた。
「どう違うの?」
地包天が聞いた。
「楠林のなかに地下道があって、そこを通って翠湖のなかにある島へ行けることが分かったからだ」
ぼくは地包天にそう答えた。すると地包天が興味深そうな顔をしていた。
「そんな地下道があるなんて、わたしは思ってもいなかったわ」
地包天がそう言った。
「そうだろう。だから、ぼくはおまえもいっしょに連れていったら喜ぶだろうと思って、昨日、おまえをずっと探していたのだ」
ぼくはそう答えた。
「そうだったの。ではこれから連れていってくれない?」
地包天がそう言った。
「いいよ。ではこれからいっしょに楠林へ行こう」
ぼくはそう言って、子どもたちと地包天を連れて楠林のほうへ向かった。
楠林のなかに着くと、昨日、万年亀が出てきたところまで連れていってから
「ここだ」
と言って指で地面を指した。
地面の草を払いのけると、その下に直径七十センチほどのプラスチックの丸いふたがあって、そのふたを取ると、なかに穴が開いていて、地下におりるためのはしごがかかっているのが見えた。ぼくの子どもたちや地包天は初めのうちは恐々としながら、穴のなかを見ているだけで、なかに入ろうとしなかったので、ぼくが率先してなかに入って、はしごをつたいながら下におりていった。それを見て、勇気を感じた子どもたちや地包天が次々と、はしごをつたって穴のなかにおりていった。二メートルほどおりると、地下道があったので、暗いなかを、ぼくたちは二十分ほどまっすぐ進んでいった。すると前方に明るい光が見えてきて、それからまもなく、ぼくたちは外に出ることができた。子どもたちや地包天が、あたりをきょろきょろと見まわしていたので
「ここは翠湖のなかにある島の上だよ」
ぼくは子どもたちや地包天にそう言った。すると地包天が
「周りに松の木がたくさんあるから、湖岸はほとんど見えないわね」
と言った。
「そうだね。ぼくたちがここにいることは、向こうからは見えない」
ぼくは地包天にそう答えた。
「スイカ―もここに来たと言っていたよね」
サンパオがそう聞いた。
「そうだよ。興味深そうな顔をしながら島の周りを見ていた」
ぼくはサンパオにそう答えた。アーヤーがそれを聞いて
「スイカ―が今度はここでサーカスのショーを開いてくれたらいいなあ」
と言った。パントーがそれを聞いて
「ぼくもそう思う。でも、この島にくることができる地下道があることを人間の子どもたちに、どうやって知らせたらいいのだろう」
と言った。
「そうだね。父さんも、ここが子どもたちの新しいパラダイスになればよいと思っているが、どうやって子どもたちをこの島に連れてきたらよいか分からないでいる」
ぼくはパントーにそう答えた。
「馬小跳たちに知らせることができたら、ほかの友だちにも知らせてくれるのではないかしら」
アーヤーがそう提案した。
「そうだね。馬小跳たちはスイカ―がいなくなったあとも、時々、楠林のなかにやってきて遊んでいるから、馬小跳たちに地下道があることを知らせることができたら、口コミで伝えてくれるかもしれない。子どもたちは冒険好きだから、興味を感じて地下道に入ってくると思う」
ぼくはアーヤーにそう答えた。
ぼくは子どもたちや地包天といっしょに島のなかをしばらく散策してから、再び、子どもたちや地包天を先導しながら、地下道を通って、楠林のなかに戻っていった。