天気……今日はとても蒸し暑くて、じとじとする。空気のなかに、なま暖かい水滴がいっぱい溶け込んでいるのではないかと思えるほど、辺り一面がむんむんしている。樹木や草花の葉も湿気でじめじめしていて、雨は降っていないのに雨のしずくが、ぽたぽたとしたたり落ちているようにさえ思われた。
今日の朝、湖畔に沿って散歩していると、向こうから老いらくさんが、小走りで近づいてくるのが見えた。嬉々とした顔をしていたので、何かよいことがあったのかもしれないと思って、ぼくも急いで老いらくさんのほうに駆け寄っていった。
「笑い猫、いい知らせがある。スイカ―のいるところが分かった」
老いらくさんが開口一番そう言った。
「本当ですか。どこにいるのですか」
ぼくは間髪を入れずに聞き返した。
「町の郊外にある空き家のなかで、人目を忍ぶように、一人でひっそりと暮らしている」
老いらくさんがそう言った。
「どうやって、その場所を突き止めたのですか」
ぼくは老いらくさんに聞いた。
「わしの子孫のなかの、あるネズミが情報をもたらしてくれた」
老いらくさんがそう答えた。
「そうでしたか」
ぼくはうなずいた。
「わしは自分の目で確かめることにしたので、そのあと、すぐに、そのネズミについて、その家に行ってみた。すると確かにスイカ―に間違いなかった」
老いらくさんがそう答えた。
「何をしていましたか」
ぼくは老いらくさんに聞いた。
「何か書きものをしたり、ぼうっとした顔をしながら天井を見上げたりしていた」
老いらくさんがそう答えた。
「そうでしたか。スイカ―がいるところが分かったことを、はやく、みんなに知らせてあげましょう」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「そうだな。みんなきっと喜ぶと思うよ」
老いらくさんがそう言った。
「まず一番初めにオウムに知らせてやりましょう。オウムはこれまでずっとスイカ―とともに生活をしてきたから、誰よりも喜ぶと思います」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「そうだな。わしもそう思う」
老いらくさんがそう言った。
ぼくと老いらくさんは、それからまもなく楠林へ行った。オウムはいつも楠林のなかで鳴いていたからだ。ぼくと老いらくさんが楠林のなかに着くと、枝の上からオウムの寂しそうな鳴き声が聞こえてきたので、ぼくはオウムに
「スイカ―のいるところが分かったよ」
と言って教えてあげた。するとオウムが木の下におりてきた。老いらくさんがぼくに
「わしがこれからおまえとオウムをスイカ―がいるところまで案内する」
と言ったので、ぼくはその旨をオウムに伝えた。それを聞いてオウムがうなずいた。それからまもなく、ぼくたちはスイカ―がいるうちをめざして公園から出ていった。オウムはぼくと老いらくさんの走る速さに合わせながら、地上三メートルぐらいの空を飛んでついてきた。途中でひと休みしながら、ぼくたちは四十分ほど走って、ようやくスイカ―がいるうちの前までやってきた。オウムの姿を見て、スイカ―は目に涙を浮かべながら喜んでいた。スイカ―はぼくとも顔なじみだったから、ぼくにも近づいてきて、頭をそっとなでてくれた。老いらくさんも、ぼくのそばにいたが、老いらくさんはショーのときは、いつもボールのなかに入っていて姿が知られていないので、スイカ―は老いらくさんが誰だか気がつかないでいた。老いらくさんはそれでも、ぴょんぴょん飛び跳ねて、久しぶりに会えた喜びを体じゅうで表現していた。
それからしばらくしてからオウムはスイカ―の頭の上に乗って、スイカ―が以前教えてくれた『何日君再来』という歌を歌い始めた。歌を覚えていてくれたことに感動して、スイカ―もいっしょに歌っていた。『何日君再来』とは、「いつ、あなたは再び帰ってきますか」という意味だから、この歌にたくして、オウムがスイカ―にはやく翠湖公園に帰ってきてほしいという気持ちを伝えているのだと、ぼくは思った。
オウムは歌い終えると、スイカ―がかぶっていた帽子を口にくわえてから、スイカ―の頭の上から飛び上がった。それを見てスイカ―がびっくりして
「おい、どこへ行くのだ。わしの大切な帽子を返してくれ」
と言っていた。オウムはその声を無視するかのように、三メートルぐらいの高さまで上がると、ゆっくりと低空を飛びながら、来た方向へ引き返していった。スイカ―は息を切らしながらオウムのあとを追いかけていった。ぼくと老いらくさんもスイカ―のあとから追いかけていった。オウムはひたすら飛び続けて、とうとう翠湖公園まで飛んでいった。翠湖公園のなかにある楠林のなかまで、ぼくたちを誘導するように飛んでいくと、オウムはようやくスイカ―の帽子を下に落とした。帽子を拾って頭にかぶったスイカ―は、ほっとしたような顔をしていた。スイカ―はそのあと、久しぶりに戻ってきた楠林のなかを感慨深そうに、あちこち見回していた。
するとそのとき、楠林の地面に積もっていた葉が、かさかさと動いて、葉の下に隠れていたプラスチックの丸いふたを押し上げるようにして、万年亀の姿が不意に現れたので、ぼくはびっくりした。老いらくさんもスイカ―もびっくり仰天したような顔をしていた。オウムも、ぎょっとしたような顔をしながら、木の上から見ていた。
「大先生、どうしたのですか。まさか地面の下から出てこられるとは思ってもいませんでした」
ぼくは万年亀にそう言った。
「びっくりさせて悪かったな」
万年亀がそう言った。
「どうして地面の下から出てくることができたのですか」
ぼくは、けげんに思って万年亀に聞いた。すると万年亀が
「ここの下には地下道があって、それをたどっていったら、翠湖のなかに浮かんでいる島に行けることが分かった」
と言った。それを聞いて、ぼくはびっくりした。翠湖のなかに島があることは、ぼくはむろん知っていたが、そこへ行くための地下道が楠林のなかにあるとは思ってもいなかったからだ。戦争中に空爆を避けるために翠湖公園のなかに逃げ込んだ人たちが、防空壕を掘った跡があることは以前、杜真子から聞いたことがあった。万年亀が見つけた地下道はその防空壕の一部ではないかと、ぼくは思った。いずれにせよ、ぼくがこれまで知らなかった地下道が楠林のなかにあることを知って、ぼくは興奮していた。老いらくさんに話すと、老いらくさんも感情を高ぶらせていた。
「地下道を通って、翠湖のなかにある島へ渡ってみたいものだ」
老いらくさんがそう言った。
「ぼくもそう思います」
ぼくはそう答えた。スイカ―も万年亀が出てきた穴のなかをのぞきこんでいた。穴のなかには下へおりていくためのはしごがかけられていたので、穴のなかがどうなっているのか、ぼくは興味を覚えていた。ぼくは万年亀に
「ぼくたちをこれから、地下道のなかに案内していただけませんか」
とお願いした。すると万年亀がうなずいた。
それからまもなく、ぼくと老いらくさんは万年亀のあとに続いて地下へおりていった。スイカ―も、ぼくと老いらくさんのあとからはしごを慎重におりながら地下へおりていった。はしごを二メートルほどおりると地下道があった。地下道のなかは暗かったが、涼しくて、夏とは思えないほど快適だった。その地下道のなかを通って、ぼくたちは前のほうへ進んでいった。二十分ほど歩いていくと、前方から明るい光が差し込んでくるのが見えた。
(もうすぐ出口だ)
ぼくはそう思って、心を弾ませながら、光が差し込んでくる方向へ向かって、小走りで駆けていった。老いらくさんとスイカ―も、ぼくのあとから走ってついてきた。万年亀は一番あとから、ゆっくりとついてきた。それからまもなく目の前の視界がぱっと開けて、まばゆいばかりの光が、ぼくの体を包み込んだ。
(地下道から外に出たのだ)
ぼくはそう思った。辺りを見まわすと、松の木がうっそうと茂っているのが見えた。
「さあ、着いたよ。ここは湖のなかにある島だ」
万年亀がそう言った。
「そうですか。地下道を通って、この島にくることができるとは、思ってもいませんでした」
ぼくは万年亀にそう答えた。
「わしもそうだ」
老いらくさんがそう言った。スイカ―も感慨深そうな顔をしながら、島の周りを見まわしていた。
それからまもなくしてから、松の木の枝の上から歌声が聞こえてきた。歌っていたのはオウムだった。スイカ―が教えた『歓喜の歌』を高らかな声で歌っていた。スイカ―が島にいるのに気がついて、オウムは楠林のなかから、島へ移ってきて歌っていたのだった。スイカ―がオウムに手招きをすると、オウムはスイカ―の頭の上に降りてきてから、『歓喜の歌』をさらに高らかな声で歌い続けていた。スイカ―は、しあわせに満たされたような顔をしながら、にこにこと笑っていた。ほほえましい光景を見て
(これからは、この島が子どもたちを楽しませるための新しいパラダイスになったらいいなあ)
と、ぼくは、ふっと思った。
老いらくさんも、ぼくと同じように思っていたらしくて
「この島に地下道を通ってくることができることを、子どもたちは知らないと思うから、知らせるための何かよい方法がないだろうか」
と聞いた。
「そうですね。今はちょっと思い浮かびませんが、考えてみます」
ぼくは老いらくさんにそう答えた。
それからまもなく、ぼくと老いらくさんは島をあとにして、再び地下道を通って楠林のなかへ戻っていった。スイカ―とオウムも楠林のなかに戻ってきた。スイカ―は楠林のなかでしばらく休んでから、名残惜しそうな顔をしながら、町の郊外へ帰っていった。オウムはスイカ―が帰っていったあとも、しばらく楠林のなかに残って歌を歌っていたが、そのあと、スイカ―のあとを追って飛んでいった。ぼくと老いらくさんはオウムの姿が見えなくなったあと楠林を出て、うちへ帰っていった。
今日の朝、湖畔に沿って散歩していると、向こうから老いらくさんが、小走りで近づいてくるのが見えた。嬉々とした顔をしていたので、何かよいことがあったのかもしれないと思って、ぼくも急いで老いらくさんのほうに駆け寄っていった。
「笑い猫、いい知らせがある。スイカ―のいるところが分かった」
老いらくさんが開口一番そう言った。
「本当ですか。どこにいるのですか」
ぼくは間髪を入れずに聞き返した。
「町の郊外にある空き家のなかで、人目を忍ぶように、一人でひっそりと暮らしている」
老いらくさんがそう言った。
「どうやって、その場所を突き止めたのですか」
ぼくは老いらくさんに聞いた。
「わしの子孫のなかの、あるネズミが情報をもたらしてくれた」
老いらくさんがそう答えた。
「そうでしたか」
ぼくはうなずいた。
「わしは自分の目で確かめることにしたので、そのあと、すぐに、そのネズミについて、その家に行ってみた。すると確かにスイカ―に間違いなかった」
老いらくさんがそう答えた。
「何をしていましたか」
ぼくは老いらくさんに聞いた。
「何か書きものをしたり、ぼうっとした顔をしながら天井を見上げたりしていた」
老いらくさんがそう答えた。
「そうでしたか。スイカ―がいるところが分かったことを、はやく、みんなに知らせてあげましょう」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「そうだな。みんなきっと喜ぶと思うよ」
老いらくさんがそう言った。
「まず一番初めにオウムに知らせてやりましょう。オウムはこれまでずっとスイカ―とともに生活をしてきたから、誰よりも喜ぶと思います」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「そうだな。わしもそう思う」
老いらくさんがそう言った。
ぼくと老いらくさんは、それからまもなく楠林へ行った。オウムはいつも楠林のなかで鳴いていたからだ。ぼくと老いらくさんが楠林のなかに着くと、枝の上からオウムの寂しそうな鳴き声が聞こえてきたので、ぼくはオウムに
「スイカ―のいるところが分かったよ」
と言って教えてあげた。するとオウムが木の下におりてきた。老いらくさんがぼくに
「わしがこれからおまえとオウムをスイカ―がいるところまで案内する」
と言ったので、ぼくはその旨をオウムに伝えた。それを聞いてオウムがうなずいた。それからまもなく、ぼくたちはスイカ―がいるうちをめざして公園から出ていった。オウムはぼくと老いらくさんの走る速さに合わせながら、地上三メートルぐらいの空を飛んでついてきた。途中でひと休みしながら、ぼくたちは四十分ほど走って、ようやくスイカ―がいるうちの前までやってきた。オウムの姿を見て、スイカ―は目に涙を浮かべながら喜んでいた。スイカ―はぼくとも顔なじみだったから、ぼくにも近づいてきて、頭をそっとなでてくれた。老いらくさんも、ぼくのそばにいたが、老いらくさんはショーのときは、いつもボールのなかに入っていて姿が知られていないので、スイカ―は老いらくさんが誰だか気がつかないでいた。老いらくさんはそれでも、ぴょんぴょん飛び跳ねて、久しぶりに会えた喜びを体じゅうで表現していた。
それからしばらくしてからオウムはスイカ―の頭の上に乗って、スイカ―が以前教えてくれた『何日君再来』という歌を歌い始めた。歌を覚えていてくれたことに感動して、スイカ―もいっしょに歌っていた。『何日君再来』とは、「いつ、あなたは再び帰ってきますか」という意味だから、この歌にたくして、オウムがスイカ―にはやく翠湖公園に帰ってきてほしいという気持ちを伝えているのだと、ぼくは思った。
オウムは歌い終えると、スイカ―がかぶっていた帽子を口にくわえてから、スイカ―の頭の上から飛び上がった。それを見てスイカ―がびっくりして
「おい、どこへ行くのだ。わしの大切な帽子を返してくれ」
と言っていた。オウムはその声を無視するかのように、三メートルぐらいの高さまで上がると、ゆっくりと低空を飛びながら、来た方向へ引き返していった。スイカ―は息を切らしながらオウムのあとを追いかけていった。ぼくと老いらくさんもスイカ―のあとから追いかけていった。オウムはひたすら飛び続けて、とうとう翠湖公園まで飛んでいった。翠湖公園のなかにある楠林のなかまで、ぼくたちを誘導するように飛んでいくと、オウムはようやくスイカ―の帽子を下に落とした。帽子を拾って頭にかぶったスイカ―は、ほっとしたような顔をしていた。スイカ―はそのあと、久しぶりに戻ってきた楠林のなかを感慨深そうに、あちこち見回していた。
するとそのとき、楠林の地面に積もっていた葉が、かさかさと動いて、葉の下に隠れていたプラスチックの丸いふたを押し上げるようにして、万年亀の姿が不意に現れたので、ぼくはびっくりした。老いらくさんもスイカ―もびっくり仰天したような顔をしていた。オウムも、ぎょっとしたような顔をしながら、木の上から見ていた。
「大先生、どうしたのですか。まさか地面の下から出てこられるとは思ってもいませんでした」
ぼくは万年亀にそう言った。
「びっくりさせて悪かったな」
万年亀がそう言った。
「どうして地面の下から出てくることができたのですか」
ぼくは、けげんに思って万年亀に聞いた。すると万年亀が
「ここの下には地下道があって、それをたどっていったら、翠湖のなかに浮かんでいる島に行けることが分かった」
と言った。それを聞いて、ぼくはびっくりした。翠湖のなかに島があることは、ぼくはむろん知っていたが、そこへ行くための地下道が楠林のなかにあるとは思ってもいなかったからだ。戦争中に空爆を避けるために翠湖公園のなかに逃げ込んだ人たちが、防空壕を掘った跡があることは以前、杜真子から聞いたことがあった。万年亀が見つけた地下道はその防空壕の一部ではないかと、ぼくは思った。いずれにせよ、ぼくがこれまで知らなかった地下道が楠林のなかにあることを知って、ぼくは興奮していた。老いらくさんに話すと、老いらくさんも感情を高ぶらせていた。
「地下道を通って、翠湖のなかにある島へ渡ってみたいものだ」
老いらくさんがそう言った。
「ぼくもそう思います」
ぼくはそう答えた。スイカ―も万年亀が出てきた穴のなかをのぞきこんでいた。穴のなかには下へおりていくためのはしごがかけられていたので、穴のなかがどうなっているのか、ぼくは興味を覚えていた。ぼくは万年亀に
「ぼくたちをこれから、地下道のなかに案内していただけませんか」
とお願いした。すると万年亀がうなずいた。
それからまもなく、ぼくと老いらくさんは万年亀のあとに続いて地下へおりていった。スイカ―も、ぼくと老いらくさんのあとからはしごを慎重におりながら地下へおりていった。はしごを二メートルほどおりると地下道があった。地下道のなかは暗かったが、涼しくて、夏とは思えないほど快適だった。その地下道のなかを通って、ぼくたちは前のほうへ進んでいった。二十分ほど歩いていくと、前方から明るい光が差し込んでくるのが見えた。
(もうすぐ出口だ)
ぼくはそう思って、心を弾ませながら、光が差し込んでくる方向へ向かって、小走りで駆けていった。老いらくさんとスイカ―も、ぼくのあとから走ってついてきた。万年亀は一番あとから、ゆっくりとついてきた。それからまもなく目の前の視界がぱっと開けて、まばゆいばかりの光が、ぼくの体を包み込んだ。
(地下道から外に出たのだ)
ぼくはそう思った。辺りを見まわすと、松の木がうっそうと茂っているのが見えた。
「さあ、着いたよ。ここは湖のなかにある島だ」
万年亀がそう言った。
「そうですか。地下道を通って、この島にくることができるとは、思ってもいませんでした」
ぼくは万年亀にそう答えた。
「わしもそうだ」
老いらくさんがそう言った。スイカ―も感慨深そうな顔をしながら、島の周りを見まわしていた。
それからまもなくしてから、松の木の枝の上から歌声が聞こえてきた。歌っていたのはオウムだった。スイカ―が教えた『歓喜の歌』を高らかな声で歌っていた。スイカ―が島にいるのに気がついて、オウムは楠林のなかから、島へ移ってきて歌っていたのだった。スイカ―がオウムに手招きをすると、オウムはスイカ―の頭の上に降りてきてから、『歓喜の歌』をさらに高らかな声で歌い続けていた。スイカ―は、しあわせに満たされたような顔をしながら、にこにこと笑っていた。ほほえましい光景を見て
(これからは、この島が子どもたちを楽しませるための新しいパラダイスになったらいいなあ)
と、ぼくは、ふっと思った。
老いらくさんも、ぼくと同じように思っていたらしくて
「この島に地下道を通ってくることができることを、子どもたちは知らないと思うから、知らせるための何かよい方法がないだろうか」
と聞いた。
「そうですね。今はちょっと思い浮かびませんが、考えてみます」
ぼくは老いらくさんにそう答えた。
それからまもなく、ぼくと老いらくさんは島をあとにして、再び地下道を通って楠林のなかへ戻っていった。スイカ―とオウムも楠林のなかに戻ってきた。スイカ―は楠林のなかでしばらく休んでから、名残惜しそうな顔をしながら、町の郊外へ帰っていった。オウムはスイカ―が帰っていったあとも、しばらく楠林のなかに残って歌を歌っていたが、そのあと、スイカ―のあとを追って飛んでいった。ぼくと老いらくさんはオウムの姿が見えなくなったあと楠林を出て、うちへ帰っていった。

