天気……朝は晴れていたが、お昼ごろから雲行きが怪しくなり、三時過ぎにひと雨降った。その後、天気は回復して、雨はすっかりあがり、木々や草花の葉から、雨のしずくが、ぽたぽたと、こぼれ落ちていた。雨が上がったあとの公園は、ちりやほこりが洗われてきれいになり、空気がさわやかになった。
雨があがったあと、空を見上げると、きれいな虹が出ていたので、ぼくは妻猫や子どもたちといっしょに、うちの入口の前から虹を眺めていた。
「お父さん、虹はどうしてアーチ型をしているの」
パントーが聞いた。
「本当はアーチ型ではなくて円形なのだよ」
ぼくはそう答えた。それを聞いて、パントーがけげんそうな顔をしていた。
「でも半円しか見えないじゃない」
パントーがそう言った。
「地面の下に半分隠れているから半円にしか見えないのだ」
ぼくはそう言った。ぼくの説明を聞いてパントーは合点がいったような顔をしていた。
「お父さん、虹はどうして雨上がりにしか見えないの」
今度はアーヤーが聞いた。
「雨が降ったあとの空には、たくさんの水滴が浮かんでいて、その水滴の一つひとつがプリズムのような働きをして虹を作るのだ」
ぼくはそう答えた。するとアーヤーが
「プリズムって何?」
と聞き返してきた。
「プリズムというのは、光の屈折や分散などに使うガラスのようなものだ」
ぼくはアーヤーにそう説明した。アーヤーはぼくの説明を聞いても、よく分からなかったのか、小首をかしげていた。
「虹は雨が降ったあとにしかできないの?」
今度はサンパオが聞いた。
「そんなことはないよ。水しぶきが飛び散っている滝の前や、太陽を背中にしてホースで水をまいているときにもできる」
ぼくはそう答えた。
「お父さんは詳しいのですね」
サンパオがそう言って感心したような顔をしながら、ぼくを見ていた。
「虹の色は七色に見えるって、お父さんは以前、話していましたよね」
今度は妻猫が聞いた。
「そうだよ。そう言ったよ。どんな色か分かりますか、お母さん」
ぼくは妻猫にそう聞いた。妻猫は虹をじっと見ながら
「赤、橙色、黄色、緑、青、藍色、紫」
と言った。
「そうだよ。その通りだよ。お母さんは目がいいね。顔もいいけど」
ぼくがそう言うと、妻猫が照れたような顔をしていた。子どもたちもそのあと目を凝らしながら虹をじっと見ながら、妻猫が言った虹の色を確認していた。
「虹の見え方は、空に浮かんでいる水滴のサイズや、太陽の位置や、見る場所によっても変わるのだよ」
ぼくがそう言うと、妻猫も子どもたちも、うなずきながら聞いていた。
虹が消えたあと、ぼくたちは再び、うちの中に入って、夕ご飯までのひとときを、おしゃべりをしながら楽しく過ごしていた。
夕ご飯を食べたあと、ぼくは湖畔にそって、しばらく散歩をしていた。すると向こうから老いらくさんがやってきた。
「笑い猫、今、サーカス小屋のなかに、客人が来ていて、団長と何か話をしている。団員たちは小屋の外で警戒に当たっている。気になったので知らせにきた」
老いらくさんがそう言った。
「そうですか。何を話しているのでしょう」
ぼくも気になってしかたがなかったので、すぐに老いらくさんのあとからついて、サーカス小屋の近くまでいった。すると確かに小屋の前で団員たちが目を光らせていた。団員たちはぼくの姿にも気がついたが、ぼくは猫なので、見て見ぬふりをしてくれた。ぼくと老いらくさんは小屋のなかに入っていって、客人と団長の姿がよく見える位置までそっと近づいてから、観客席のいすの下に潜り込んで会話の内容に耳を澄ませていた。団長と客人は机の前で向かい合わせに座り、何かの交渉をしているように見えた。机の上には茶封筒が置かれていた。なかに何が入っているのか知らないが、とても膨らんでいた。団長が客人に
「これは、ほんの気持ちです。もし我々が勝つことができたら、さらに弾みます」
と言っていた。それを聞いて客人が
「そうですか。本当はこういうのを受け取ることには、あまり気が進まないのですが、どうしても受け取ってほしいと言われるのでしたら、ひとまず預かっておきましょう」
と答えていた。
客人はそのあと、これからの日程について団長に話していた。ぼくはそれを聞いて、この客人は弁護士ではないかと思った。団長はスイカ―を裁判に訴えることに決めたようなので、弁護士と会って、裁判に勝つために事前に画策しているように見えた。あの茶封筒のなかに入っているのは、もしかしたらお金ではないかと思った。ぼくの心は憤りでいっぱいになって、むらむらした気持ちを抑えきれなくなったので、いすの下から飛び出していって、不気味な冷笑を浮かべながら団長の顔を見て、そのあと団長の足にかみついた。団長が怒って、ぼくを手でたたいたので、ぼくはさっとサーカス小屋の外に逃げ出した。老いらくさんもすぐに、ぼくのあとからついてきた。
「笑い猫、あの二人は何を話していたのか」
老いらくさんが聞いた。
「裁判の話をしていました。団長が、あの人にお金を渡して裁判を有利にしようとしているように感じました」
ぼくは、腹の虫がおさまらないまま、老いらくさんにそう言った。それを聞いて、老いらくさんが
「そうか、やはり、そうだったか。それで、おまえは怒って、団長にかみついたのか」
と言った。ぼくはうなずいた。
「賄賂を渡した団長は悪いが、受け取るほうも悪い」
老いらくさんがそう言った。
「まったくその通りです」
ぼくはそう答えた。
「スイカ―も弁護士をつけるのだろうか」
老いらくさんが聞いた。
「さあ、どうでしょう。スイカ―はお金持ちのようには見えないから、弁護士をつけることができないのではないでしょうか」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「わしもそう思う」
老いらくさんがそう言った。
「そもそも弁護士というのは悪いことをした人が、自分の犯した罪を軽減するためにつけるものだと思います。スイカ―は何も悪いことをしていないのだから、わざわざお金を出して弁護士をつける必要はないと思います」
ぼくはそう言った。
「そうだよな。わざわざ弁護士をつけなくても裁判官は公平な立場から、原告と被告のどちらの言い分が正しいのか客観的に判断してくれるはずだ」
老いらくさんがそう言った。
「ぼくもそう思います」
ぼくはそう答えた。
「裁判官は絶対に賄賂を受け取ることはないと思うが、もし万が一、賄賂を受け取って、それによって勝訴や敗訴のどちらになるかが決まるとしたら、司法制度の信用性は根本から揺らぐことになる。絶対に、そんなことがあってはならない」
老いらくさんがそう言った。ぼくはうなずいた。
「いずれにせよ、これから裁判に向けて、いろいろな動きが出てくると思うから、一つも見逃さないようにしなければなりません」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「裁判が始まったら、わしらも裁判所に行って、傍聴席から裁判の様子を見ることにしないか」
老いらくさんがそう言った。
「猫やネズミが裁判所に行くことができるでしょうか」
ぼくは自信がなかった。
「裁判所のなかまでうまく入ることができるかどうか分からないが、すきを見て、入ろうではないか」
老いらくさんがそう言った。ぼくはうなずいた。それからまもなく、ぼくは老いらくさんと別れて、うちへ帰っていった。
雨があがったあと、空を見上げると、きれいな虹が出ていたので、ぼくは妻猫や子どもたちといっしょに、うちの入口の前から虹を眺めていた。
「お父さん、虹はどうしてアーチ型をしているの」
パントーが聞いた。
「本当はアーチ型ではなくて円形なのだよ」
ぼくはそう答えた。それを聞いて、パントーがけげんそうな顔をしていた。
「でも半円しか見えないじゃない」
パントーがそう言った。
「地面の下に半分隠れているから半円にしか見えないのだ」
ぼくはそう言った。ぼくの説明を聞いてパントーは合点がいったような顔をしていた。
「お父さん、虹はどうして雨上がりにしか見えないの」
今度はアーヤーが聞いた。
「雨が降ったあとの空には、たくさんの水滴が浮かんでいて、その水滴の一つひとつがプリズムのような働きをして虹を作るのだ」
ぼくはそう答えた。するとアーヤーが
「プリズムって何?」
と聞き返してきた。
「プリズムというのは、光の屈折や分散などに使うガラスのようなものだ」
ぼくはアーヤーにそう説明した。アーヤーはぼくの説明を聞いても、よく分からなかったのか、小首をかしげていた。
「虹は雨が降ったあとにしかできないの?」
今度はサンパオが聞いた。
「そんなことはないよ。水しぶきが飛び散っている滝の前や、太陽を背中にしてホースで水をまいているときにもできる」
ぼくはそう答えた。
「お父さんは詳しいのですね」
サンパオがそう言って感心したような顔をしながら、ぼくを見ていた。
「虹の色は七色に見えるって、お父さんは以前、話していましたよね」
今度は妻猫が聞いた。
「そうだよ。そう言ったよ。どんな色か分かりますか、お母さん」
ぼくは妻猫にそう聞いた。妻猫は虹をじっと見ながら
「赤、橙色、黄色、緑、青、藍色、紫」
と言った。
「そうだよ。その通りだよ。お母さんは目がいいね。顔もいいけど」
ぼくがそう言うと、妻猫が照れたような顔をしていた。子どもたちもそのあと目を凝らしながら虹をじっと見ながら、妻猫が言った虹の色を確認していた。
「虹の見え方は、空に浮かんでいる水滴のサイズや、太陽の位置や、見る場所によっても変わるのだよ」
ぼくがそう言うと、妻猫も子どもたちも、うなずきながら聞いていた。
虹が消えたあと、ぼくたちは再び、うちの中に入って、夕ご飯までのひとときを、おしゃべりをしながら楽しく過ごしていた。
夕ご飯を食べたあと、ぼくは湖畔にそって、しばらく散歩をしていた。すると向こうから老いらくさんがやってきた。
「笑い猫、今、サーカス小屋のなかに、客人が来ていて、団長と何か話をしている。団員たちは小屋の外で警戒に当たっている。気になったので知らせにきた」
老いらくさんがそう言った。
「そうですか。何を話しているのでしょう」
ぼくも気になってしかたがなかったので、すぐに老いらくさんのあとからついて、サーカス小屋の近くまでいった。すると確かに小屋の前で団員たちが目を光らせていた。団員たちはぼくの姿にも気がついたが、ぼくは猫なので、見て見ぬふりをしてくれた。ぼくと老いらくさんは小屋のなかに入っていって、客人と団長の姿がよく見える位置までそっと近づいてから、観客席のいすの下に潜り込んで会話の内容に耳を澄ませていた。団長と客人は机の前で向かい合わせに座り、何かの交渉をしているように見えた。机の上には茶封筒が置かれていた。なかに何が入っているのか知らないが、とても膨らんでいた。団長が客人に
「これは、ほんの気持ちです。もし我々が勝つことができたら、さらに弾みます」
と言っていた。それを聞いて客人が
「そうですか。本当はこういうのを受け取ることには、あまり気が進まないのですが、どうしても受け取ってほしいと言われるのでしたら、ひとまず預かっておきましょう」
と答えていた。
客人はそのあと、これからの日程について団長に話していた。ぼくはそれを聞いて、この客人は弁護士ではないかと思った。団長はスイカ―を裁判に訴えることに決めたようなので、弁護士と会って、裁判に勝つために事前に画策しているように見えた。あの茶封筒のなかに入っているのは、もしかしたらお金ではないかと思った。ぼくの心は憤りでいっぱいになって、むらむらした気持ちを抑えきれなくなったので、いすの下から飛び出していって、不気味な冷笑を浮かべながら団長の顔を見て、そのあと団長の足にかみついた。団長が怒って、ぼくを手でたたいたので、ぼくはさっとサーカス小屋の外に逃げ出した。老いらくさんもすぐに、ぼくのあとからついてきた。
「笑い猫、あの二人は何を話していたのか」
老いらくさんが聞いた。
「裁判の話をしていました。団長が、あの人にお金を渡して裁判を有利にしようとしているように感じました」
ぼくは、腹の虫がおさまらないまま、老いらくさんにそう言った。それを聞いて、老いらくさんが
「そうか、やはり、そうだったか。それで、おまえは怒って、団長にかみついたのか」
と言った。ぼくはうなずいた。
「賄賂を渡した団長は悪いが、受け取るほうも悪い」
老いらくさんがそう言った。
「まったくその通りです」
ぼくはそう答えた。
「スイカ―も弁護士をつけるのだろうか」
老いらくさんが聞いた。
「さあ、どうでしょう。スイカ―はお金持ちのようには見えないから、弁護士をつけることができないのではないでしょうか」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「わしもそう思う」
老いらくさんがそう言った。
「そもそも弁護士というのは悪いことをした人が、自分の犯した罪を軽減するためにつけるものだと思います。スイカ―は何も悪いことをしていないのだから、わざわざお金を出して弁護士をつける必要はないと思います」
ぼくはそう言った。
「そうだよな。わざわざ弁護士をつけなくても裁判官は公平な立場から、原告と被告のどちらの言い分が正しいのか客観的に判断してくれるはずだ」
老いらくさんがそう言った。
「ぼくもそう思います」
ぼくはそう答えた。
「裁判官は絶対に賄賂を受け取ることはないと思うが、もし万が一、賄賂を受け取って、それによって勝訴や敗訴のどちらになるかが決まるとしたら、司法制度の信用性は根本から揺らぐことになる。絶対に、そんなことがあってはならない」
老いらくさんがそう言った。ぼくはうなずいた。
「いずれにせよ、これから裁判に向けて、いろいろな動きが出てくると思うから、一つも見逃さないようにしなければなりません」
ぼくは老いらくさんにそう言った。
「裁判が始まったら、わしらも裁判所に行って、傍聴席から裁判の様子を見ることにしないか」
老いらくさんがそう言った。
「猫やネズミが裁判所に行くことができるでしょうか」
ぼくは自信がなかった。
「裁判所のなかまでうまく入ることができるかどうか分からないが、すきを見て、入ろうではないか」
老いらくさんがそう言った。ぼくはうなずいた。それからまもなく、ぼくは老いらくさんと別れて、うちへ帰っていった。

