毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 そんなリィラの疑問を察したゼンティは付け加えた。

「今の言い方は僕の解釈で、彼のニュアンスは少し違ったよ。レンを救ってくれ、みたいな感じ」

 それで納得した。センティは復讐に狂った妹を止めたかった。そして『救済』したかったのだと。それが結果的に獣魔に捕食されて生まれ変わる形であっても。

 獣魔の体となっても生きて幸せになるのなら、それでいい。それはまさに今、目の前にいるゼンティにも言える。

 きっとセンティは、魔物になって生きても幸せなのだと……そう信じたい。
 だからこそリィラは、センティとゼンティ。二人分の愛を注いで、二人を一生愛すると誓える。

「ゼンティ……幸せになろうね」
「僕はもう幸せだよ。まずは元気な子を産んでね」
「うん。私も幸せ」

 以前と違って、ゼンティはリィラの毒を吸わなくなった。妊娠中のリィラの体を気遣って禁煙ならぬ禁毒をしている。代わりに触れるだけの優しいキスをくれる。
 そういえば、晴れて婚約者となったヒメとアレンも今頃、一緒のベッドで甘い夜を過ごしているのだろうか。


 その頃のヒメとアレンは予想通り、同じベッドの上で抱き合っていた。

 元から城に住み込みのアレンは、ヒメが人の体となってからは同じ部屋で暮らすようになった。
 今までは子犬のヒメを抱きしめていたが、今は髪にも肌にも触れて唇を重ねる事ができる。そんな幸せに浸っていた。

「ねぇ、アレン。ずっと私のこと、愛してた?」

 言葉で言わなくても分かるのに、人の言葉が話せるようになったヒメは嬉しくてアレンにも言葉を求めてしまう。
 もう瞳の色を変えて偽る必要もない。二人は魔物の赤い瞳で視線を交わす。

「はい、ヒメ様。ずっと愛してました」
「ふふ、嬉しい。アレン、大好き。愛してる」
「これからも、ずっとオレがヒメ様を守ります。幸せにします」

 あんなに憎かったレンティの銀色の長い髪も、白く美しい素肌も、今は全てが愛しくて抱きしめたい。

 アレンが獣魔に捕食される前……人間だった頃の近衛兵・アレンは、レンティを愛していた。復讐に狂ったレンティを救いたいと思った。

 アレンもゼンティと同じように、二人分の願いを叶えて、二人分の幸せを得た。

 獣魔の心と、人間の体の共存。全ては幸せを得るための『復讐』であり『救済』であった。