毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 結局はレンティもヒメもアレンを本気で愛していたので、中身が変わったとしても何も変わらない。
 これではレンティを殺したはずなのに、そのまま生き返ったような錯覚を起こしてしまう。
 文字通り、レンティから毒気を抜いたのが今のヒメだ。

「今後はヒメちゃんじゃなくて、レンちゃんって呼ばなきゃダメなの?」

 リィラの何気ない疑問を聞いて、ゼンティが珍しく青ざめている。絶対に嫌なのだろう。

「ヒメは今後もヒメだよ。僕の妹の名前はヒメだ!!」

 ヒメという名はリィラが名付けた仮の名前。獣魔は人の体と名前をそのまま得るが、今回は特例となる。

 ……しかし、幸せそうなヒメを見ていると、これは『復讐』ではなかったのかと思ってしまう。

 今では魔物となったアレンは、ヒメを愛している。レンティがアレンと結ばれる方法は、ヒメとなって生きるしかない。
 つまり、これはレンティにとっての幸せの形。『復讐』ではなく『救済』だったのではないかと。

 そんな幸せそうな娘の姿を、両親のベスティとスティアは微笑ましく思って見ていた。

「うむ。ヒメも立派になったな! 次はヒメとアレンの結婚式も兼ねて一緒にお祝いだな!」
「今日はおめでたい事ばかりで嬉しいわぁ。ゼンティもヒメも幸せになるのよ~!」

 王子センティ、王女レンティ、国王ベスティ、王妃スティア。
 これで、かつてのアディール国の王族全員が獣魔の体となって生まれ変わった。

 レンティの体をヒメに与えようと思ったのも、家族の絆を繋げたかったからだろう。