毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 そこでリィラも席から立ち上がると、恐れる事なくヒメの側に寄って黒い毛並みに触れる。
 二本足で立つ大熊のようなヒメは、今ではリィラの身長よりも遥かに大きい。魔物の姿の時のゼンティとそっくりで、さすが兄妹だと思った。

「ヒメちゃん、18歳の誕生日おめでとう。大人になったね」 

 今日はレンティの18歳の誕生日であり、ヒメの18歳の誕生日でもあった。同じ誕生日の二人は同時に成人した。

 獣魔は成人すると、生きた人間を捕食して体を得る能力が備わる。レンティを今日まで生かした理由は、ヒメに捕食させるためだった。

 そんな魔物のヒメの背後から顔を出すように、二人の人物がレンティの前に現れた。ゼンティの両親、ベスティとスティアの夫婦だ。
 二人を見たレンティは、ヒメへの恐怖よりも強い衝撃を受けて叫ぶ。

「お父様っ!? お母様っ!?」

 ベスティとスティアは、元はアディール国の王と王妃であった。つまり、センティとレンティの両親である。

 だが二人は、魔物の大量毒殺の報復として獣魔に捕食され殺された。そうして二人の体を得たのが、ゼンティの両親。

 今のベスティとスティアは、レンティの知る両親ではない。両親の姿をした獣魔であり、ベスティア国の王と王妃であった。

「やぁ、レン。久しぶりだね、お父さんだよ。相変わらず悪い事してるね、まったく誰に似たのかなぁ」
「ふふ。はやくレンもベスティアにいらっしゃい。良い国よぉ~」

 ベスティとスティアは、レンティに向かってわざとらしく本当の両親のように接する。その赤い瞳にレンティに対する同情はない。

 この場にレンティの味方は誰もいない。誰もが公開処刑のように捕食される場面を見届けるためにいる。