毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 追い打ちをかけるように、次はゼンティがアレンの横に並んでレンティを見下す。その瞳は、やはり魔物の赤い瞳だった。

「ねぇ、レン。なんで僕が今日まで君を殺さずに生かしたか分かる?」
「え……?」

 復讐が目的ならすぐに殺せばいい。すぐに殺さない考えはレンティの企みと同じ。生かして『利用』するためだ。

 その時、激しい衝撃音と共に会場の壁が破壊された。そこから侵入してきたのは、黒い熊の姿をした巨大な魔物だった。

「うわぁぁ!! 魔物だ!!」
「みんな逃げろ!!」

 客人たちは一斉に席を立って駆け出すと、式場の出入り口から外へと逃げていく。
 式場内には兵も大勢いるが、なぜか彼らは戦いも逃げもせずに動こうとしない。

「何してますの!? はやくあの魔物を始末なさい!!」

 レンティが叫ぶが、それでも周りを取り囲む兵たちは全く動かない。よく見ると、その兵たちの瞳も赤く光っていた。

 今までゼンティとの戦いに破れて暗殺に失敗した兵たちは、森で獣魔に捕食された。獣魔の体となった兵たちは、そのままアディール城へと帰っていた。

 魔物に入れ替わっていたのはセンティとアレンだけではない。レンティの味方であったはずの兵団は、今では獣魔王ゼンティの下僕になっていた。

 魔物はゆっくり歩いてレンティに近付く。毒で痺れているレンティは床に座ったままで身動きが取れない。
 そんなレンティを見てゼンティは楽しそうに笑う。

「レン。丁寧にヒメの餌にも毒を盛ったよね。見てよ。おかげでヒメは成長したよ」
「え……ヒメ……? あの子犬……ですの?」

 目の前で牙を剝く獰猛な魔物はヒメだった。獣魔にとって毒はご馳走。ヒメは毒を盛られた餌を食べて急激に成長した。