毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 リィラの毒を含んだ紫の瞳に悲観の色はない。

「ゼンティ。私、人間が……レンティが憎い」
「うん、そうだね。だから、これは僕たちの復讐だよ」

 ゼンティの瞳に映るリィラの瞳は、毒の紫から魔物の赤に変わっていた。
 それは憎しみの念によって、リィラの体内に含まれる毒よりも魔物の血が色濃くなって瞳に現れた、一時的な現象。

 リィラは18歳。成人となったこの時にリィラの獣魔の血が目覚めた。

「絶対に許さない……ゼンティお願い。レンティを殺して……必ず殺して」
「もちろんだよ。リィラちゃんの願いは必ず叶える」

 明日に誓いのキスを交わす二人は、今もここで誓いのキスを交わす。それは愛ではなく復讐の誓い。

 今、この瞬間にゼンティとリィラの願いは完全に一致した。

 ゼンティの温もりから離れると、リィラは再び牢屋の方へと向かい、捕らえられた人々に語りかける。

「みんな、もう少しだけ我慢して。明日、必ず助けるから」

 リィラの敵は人間そのものではない。人間と魔物を虐殺しようとする者。そこに種族は関係ない。
 リィラはもう決して一人ではない。愛するゼンティ、アレン、ヒメ、ベスティア国の民。

 ……それに、この身に宿した命も。

 愛する者を守り、共に生きる未来のために、ゼンティとリィラは復讐を果たす。


 そして運命の結婚式の日を迎える。