毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 地下の階段を下るといくつもの扉を通り抜けるが、全ての施錠は以前にゼンティが全て破壊したので簡単に開いた。

 研究部屋の実験台の周りには誰もいない。レンティもいないが、なぜか人の視線や息遣いなどの気配がする。

「ゼンティ、ここも何かおかしい。誰かがいる気がする……」
「ここは元は地下牢だからね。……こっちきて」

 この部屋の奥はさらに暗く、牢屋がいくつも並んでいる。秘密の研究所として使われている今は、牢屋は使用されていないはず。

 しかし牢屋の中は全て人が収監されていた。しかも全員が顔馴染みのある城の従事者たちで、姿を見ないと思っていたメイドやコックたちだった。
 リィラは鉄格子を握りしめて牢屋の中の人たちに声をかける。

「みんな、どうしたの!? なんで、こんな事に……!?」

 牢の中の人々は、リィラの姿を見ると次々に声を上げ始めた。

「リィラ様、レンティは悪魔です! 結婚式の食事に毒を盛る指示を出されたのです」
「我々は口封じで殺されます、センティ様とリィラ様だけでもお逃げください!!」

 どうやら、この者たちは明日の結婚式の食事の下拵えをしたコックや、レンティの計画を知ったメイドたちだ。

「なんて……ひどい……」

 リィラが絶句していると、ゼンティは再びリィラの手を引いて研究室の方まで戻る。
 実験台の前に立つと、恐怖と悲しみに震えるリィラの両肩を掴んで言い聞かせる。

「明日で全てが終わるから、辛いけど最後まで聞いてね」
「…………」

 リィラは言葉を返せない。レンティの恐ろしさは、もう十分なほどに分かった。ゼンティはこれ以上の何を話そうとしているのだろうか。