毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 運命の結婚式を数日後に控えた、ある日。
 リィラは最近、自分の体調がおかしい事に気付いた。朝の寝起きがいつも以上にだるい。
 それに少し吐き気がする時もある。体調だけではなく心も不安定で落ち着かない。

「僕が毒を吸いすぎたせいかな。少し控えるね。今日は寝てていいからね」

 そう言ってゼンティはリィラの体調を気遣って休ませようとする。だがリィラは、休めば治るものではないと分かっていた。

「……お腹の中にゼンティの子がいる」
「え?」

 ゼンティは青い瞳を丸くして驚いた。彼のこんな顔は珍しくてリィラは思わず吹き出してしまう。

 思えば、ベスティア王国にいた頃から毎晩のように抱かれていたので、当然の結果であった。
 それにベスティア王国では二人はすでに夫婦なので何の問題もない。アディール王国でも数日後に結婚する。

 ゼンティはパァっと花が咲いたような笑顔になってリィラを全力で抱きしめた。

「ありがとう、リィラちゃん! 最高に嬉しいよ! これで結婚式を挙げて、王位に就いて、レンを殺せば言う事なしだよ!!」

 最後の願望は物騒すぎるが、まさにその通りでもある。リィラはもうレンティを守る気なんてない。

 このタイミングでの懐妊も何かの運命な気がする。だがレンティは結婚式の日にゼンティとリィラの毒殺を企てている事はすでに承知。

 レンティに利用されないように、今はまだ懐妊の事はアレンとヒメ以外には告げない事にした。

(ゼンティと私の子……新しい命……嬉しい)

 リィラもまた懐妊の事実を喜んでいた。以前は魔物の子を孕む事が恐ろしかったのに、今は素直に嬉しいと思った。

 故郷も家族も失くしたリィラにとって家族が増える事、新しい家族の誕生は格別の幸福感をもたらしていた。