子どもたちのパラダイス

天気……今日は元宵節。一年で最初の満月の夜だ。今日でお正月の休みも終わり、明日からはいつもの生活に戻っていく。昼間はよく晴れていて、風も穏やかで、とても気持ちよく過ごすことができた。

今日の朝、杜真子が、元宵団子を持ってきてくれた。この国では元宵節のときは元宵団子を食べる習慣があるから、杜真子が気を遣って、ぼくたちにも、わざわざ持ってきてくれた。団子のなかにまだ、ぬくもりが残っていたから、できたばかりの団子のように思われた。杜真子が帰ったあと、ぼくはさっそく妻猫や子どもたちといっしょに元宵団子を食べ始めた。甘くてとてもおいしかった。ぼくは以前、杜真子のうちに住んでいたときに、お母さんが元宵団子を作っているのを見たことがある。もち米の粉をこねて作った皮のなかに、胡麻、クルミ、サンザシなどを入れて作っていた。今日、杜真子が持ってきてくれた元宵団子も、もしかしたら、杜真子のお母さんが、うちで作ったのかもしれないと思った。食べているときに、パントーが妻猫に
「お母さん、元宵節のときは、どうして元宵団子を食べるの?」
と聞いていた。すると妻猫はすぐには答えないで
「どうしてだか、まず自分で考えてごらん」
と優しく言っていた。妻猫はいつもこのようにすぐには理由を答えないで、子どもたちにまず考えさせようとする。そうすることで子どもたちの思考力を養成しようと思っていたからだ。子どもたちは考え始めたが、なかなか答が見いだせないでいた。それを見て妻猫がヒントを与えていた。
「元宵団子は、どんな形をしていますか。味はどんな味がしますか」
妻猫に誘導されるようにして、子どもたちから次々と答が返ってきた。
「丸い形をしている」
パントーはそう言った。
「甘い味がする」
アーヤーはそう答えていた。
「ほかほかして温かい」
サンパオはそう答えていた。
「そうです。そのとおりです。その三つから元宵節のときに元宵団子を食べる理由を想像することができませんか」
妻猫がそう言った。子どもたちは、しばらく考えを巡らしていた。
「あっ、分かった」
サンパオがそう言った。
「元宵節は一年のうちで一番初めの満月の日だから、この一年、家庭円満で、暖かくて甘くて幸せな生活が送れますようにという願いを込めて食べるのではないかな」
と言った。それを聞いて妻猫がうなずいていた。
「そうです。まさにその通りです」
妻猫はそう答えてから
「おまえは頭がいいわね」
と言って、サンパオの頭を手で、そっとなでていた。パントーとアーヤーもサンパオの頭のよさを知って感心したような顔をしていた。
元宵団子を食べ終えたあと、ぼくは子どもたちを連れて、うちの外に出て、公園のなかを散策していた。元宵節のときは、公園のなかで、灯篭祭りが開かれるので、公園のあちこちに灯篭や、ちょうちんや、リボンがたくさん飾られていた。見ているだけで楽しい気持ちになってきた。飾りつけのほかに竜灯踊りといって、この時季ならではの踊りもおこなわれていたので、それを見るのも楽しかった。ぼくの子どもたちは興味深そうに踊りを眺めたり、真似をしていっしょに踊ったりしていた。公園のなかには露店もたくさん出ていて、アーモンドが入ったカステラや、小豆が入った蒸しようかんや、クルミが入ったパイなどが売られていた。買った人のなかには優しい人もいて、ぼくや子どもたちに分けてくれる人もいた。
元宵節が過ぎたら春節の休暇が終わり、大人たちは仕事へ再び出かけていき、子どもたちは学校が再び始まる。したがって元宵節は休暇の最後の日でもあり、そのために今日は公園のなかにいつも以上に子ども連れの人が多かった。それらのお客さんをターゲットとして、サーカス団の団員たちはいつも以上に熱心に、公園の入口に立ってパンフレットを配布しながら盛んに呼び込みをおこなっていた。今日はサーカスの興行予定日ではなかったが、人出の多さを見込んで、特別に興行をおこなうようだった。パンフレットを受け取った大人たちはパンフレットをちらっと読んでから、連れてきた子どもたちにサーカスのことについて話していた。サーカスの興行は午後から始まるので、お昼を過ぎたころから、サーカス小屋がある梅園の近くへ向かう人の数が多くなってきた。時計台の針が一時を回ったころ、馬小跳が唐飛たちといっしょに眼鏡橋を渡って公園のなかに入ってくるのが見えた。ぼくが大好きな杜真子もいた。馬小跳のクラスメイトである夏林果や安琪儿もいた。そのほか、ぼくが知らない子どもも何人かいた。馬小跳が誘ってきたのではないかと、ぼくは思った。馬小跳たちは梅園のあるほうへは向かわないで、それと反対のほうへ向かっていた。それを見て、馬小跳たちは楠林に行くのではないかと思った。昨日、馬小跳たちがスイカ―と会ったときに、スイカ―が「明日の午後二時に楠林に来なさい。楽しいものを用意して待っているから」と言っていたのを思い出したからだ。ぼくは馬小跳たちのあとから、こっそりとついていった。するとやはり、ぼくが思っていたとおりだった。馬小跳たちが楠林の入口に着くと、楠林のなかからスイカ―が出てきた。
「いらっしゃい。待っていたよ」
スイカ―がにこやかな顔をしながら、そう言った。それを聞いて馬小跳が
「今日は、ぼくのいとこや、クラスメイトも連れてきました」
と答えていた。スイカ―はそれを聞いて
「今日はみんなのために楽しいものを、いろいろと用意したから、わいわい、がやがや騒いで大いに盛り上げよう」
と言って相好を崩していた。
「どんなものを見せていただけるのか、ぼくは楽しみにしています」
馬小跳はそう答えていた。スイカ―は、にっこり、うなずいた。スイカ―はそのあと、馬小跳たちを導きながら楠林のなかに入っていった。楠林のなかには、大きな楠の木が何本もうっそうと茂っていて、昼間でも薄暗いところだから、ぼくはこれまでほとんど来たことがなかった。少し不気味な感じがして怖かったが、楠林を抜けたところには広場があってステージもあった。スイカ―は馬小跳たちをその広場へ案内すると
「ここで、これから、いっしょに歌ったり、踊ったりして楽しく過ごそう」
と言っていた。スイカ―はそれからまもなく口笛を吹いた。するとその口笛に引き寄せられるようにして、楠の木の枝の上にとまっていたオウムが下におりてきてスイカ―がかぶっている赤いシルクハットの帽子の上に、ちょこんと、とまった。スイカ―はそのあと歌を歌い始めた。
戴花要戴大红花呀,
骑马要骑千里马
……
するとオウムがあとを継いで歌い出した。
唱歌要唱噢哦歌,
听话要听妈妈的话。

オウムの上手な歌を聞いて、子どもたちは、歓喜していた。スイカ―は子どもたちが、きゃあきゃあ言っているのを見て、幸福感に浸っているように見えた。子どもたちはそれからまもなくオウムといっしょに歌い始めた。この歌は誰でもよく知っている『噢哦歌』という歌なので、子どもたちは楽しそうに歌っていた。スイカ―は歌に合わせて踊り始めた。子どもたちはそれを見て、スイカ―の動作を真似して歌いながら踊っていた。この歌は心をリラックスさせる歌なので、子どもたちは歌いながら、広い草原を自由に駆け回っている仔馬のような気持ちになって、無心になって昼下がりのひとときを楽しく過ごしていた。子どもたちの無邪気で浮き浮きした雰囲気は、空気のなかにとけこんで、ふわふわと舞い上がって、たゆたうように楠林の上を漂っているように、ぼくには思えた。このような感慨に催されているときに、ぼくはふっと万年亀のことを思い出した。万年亀は子どもらしいにおいをかぐことが大好きな亀だから、子どもたちの無邪気なにおいであふれているこの楠林に、もしかしたらやってくるかもしれないと思ったからだ。どんなに遠くにいても子どもたちのにおいを敏感に感じ取ることができる亀だからだ。